今年も『NHK白歌合戦』の放送日が近づいている。

 70回目を迎える令和初の『紅白歌合戦』には、今年ブレイクを果たしたバンドのKing Gnu(キングヌー)や、Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)らが初出場。

米津玄師が作詞作曲しとコラボする新曲『カイト』も初披露予定だが、まだまだサプライズは残っているかもしれない。

 ところで昨年の紅白では、シンガーソングライターの星野源が気になる発言をしていた。

 NHKの人気番組『おげんさんといっしょ』の特別コーナーでサザエさん風のコスプレをした星野に番組のキャラクターから「おげんさんって白組と紅組どっちなの?」と素朴な質問が飛び、星野はこう返したのだ。

<おげんさんは、男でも女でもないから、どうしていこうかしら。だから思ったのは、紅白もこれからね、紅組も白組も性別関係なく混合チームで行けばいいと思うの>

 星野の発言は、既存のジェンダー意識に違和感を持つ視聴者の共感を呼んで話題となった。

 それから約1年。今年の紅白放送日を控えて、「女性自身」(光文社)のウェブ版は「紅白歌合戦は男女対抗で続けるべきだと思いますか?」というアンケート調査を実施した。

 結果は「(男女対抗を続けるべきと)思わない」と答えたのが57.2%、「思う」と答えたのが42.8%とのことだ。

形骸化している紅白の“男女対抗”

 性別によってチームに分かれて戦う『紅白』のコンセプトを疑問視する意見は増えている。下記はTwitterで見られる声だ。

「わざわざ男女で分けて勝ち負けを決めるのってどうなんだろう」
「このご時世に未だに男女でチーム分けしてるのは、正直『化石か?』と思う」
「男女のユニットだってあるし、ソロでも性別を決めていない人もいる」
「男女別にするのは、シスジェンダー(身体的性別と自分の性自認が一致している)以外の人をいないことにする設計になってる」
「そもそも、紅白で性別を表すこと自体にジェンダーバイアスがかかってる」

 また、若い世代からは、「紅白って男女対抗だったの?」「勝ち負けを競ってるって初めて知った」という声も少なくない。

 紅白が年に一度のお祭りイベントであることに異論はないが、もはや形骸化した“男女対抗”という構図は刷新してもいいのではないだろうか。

氷川きよしに「紅組で出場してほしい」?

 今年の紅白出場歌手のなかでもとくに注目されているのが、演歌歌手の氷川きよしだ。

 氷川は2000年のデビュー後、約20年間「演歌界のプリンス」として不動の人気を誇ってきたが、今年11月に開設したInstagramで、これまでの氷川きよし像を覆した。

 インスタではメイクやネイルをバッチリ決めて、純白のウエディングドレスをまとうなど中性的な魅力が炸裂。ファン層を拡大している。

 12月12日発売の「週刊新潮」(新潮社)インタビューで、氷川は<世間が求める「氷川きよし」の姿とは違う。あくまで「演歌の王道」を歩んでほしい、男らしく生きて欲しいって言われると、自殺したくなっちゃうから、つらくて……>とも打ち明けていた。

 そうした経緯から、今年の紅白に氷川はどんな衣装で登場するのか、はたまた紅と白のどちらのステージに立つのかと、にわかに注目を集めている。

 だが氷川に対して「紅組で出場してほしい」と求める意見もおかしい。それは男女対抗という枠組みを維持したものだからだ。

NHKは「変える必要はない」

 さて、NHKはどう考えているのか。

 今年1月の定例会見で、エンターテインメント番組部の責任者は「紅白と歌合戦、というベースがある限り紅白歌合戦であるということ。時代の流れに取り残されないよう、男女を超えた企画という形で最善の策を取っている。

(男女対抗のスタイルを)変える必要はない」と発言していた。

 しかし、時代は目まぐるしく動いている。この一年を通しても視聴者の意識は確実に変わりつつあるのではないか。時代とともに、マスメディアの番組づくりも変化していいはずだ。

(文=WEZZY編集部)

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