人は「動かす」のではなく「動いてもらう」

 現代のビジネスはチーム戦ですから、どうしても「人を上手く使う」とか、「人を上手に動かす」という発想になりがちですが、ひとりの人間を「将棋の駒」のように扱うマネジメントでは、誰もついて来ないだけでなく、仕事の成果が上がることも期待できません。

 「自分の背中を見せる」というと、古臭い思考パターンと思うかもしれませんが、何かと真剣に向き合っている人に対しては、自然と人が協力したくなるものだと考えています。

 人は「動かす」ものではなく、人には「動いてもらう」という意識を持つことが大事です。

こちらが自分の都合だけで勝手に人を動かそうとしても、なかなか動いてくれるものではありません。

 会社経営者や管理職の立場にある人にもいろいろなタイプがありますが、蘊蓄を語るだけだったり、一方的に命令を下すだけだったり、そういうリーダーには、意外と人はついてこないものです。

 自分がチャレンジしなければ、人に「チャレンジしろよ」と言っても、「あなたはチャレンジしてないよね」と突っ込まれて終わるだけです。

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人に動いてほしければ自分が先に動く

 また、人を動かすより前に自分が動くということも有用です。仕事で困ったときに助けてもらうと、相手が困っているときには、何とかして助けてあげたいと思うものです。これは義理や人情の話ではなく、心理学で「返報性の法則」と呼ばれる人間本来の性質によるものです。

 返報性の法則とは、相手に何かしてもらったら、こちらも同じようにお返しをしないと気が済まなくなる……という人間の心理的な効果を指します。

 この法則を理解しておくと、仕事を短くやることに役立ちます。

 人に対して、「早く動いてほしい」と思うならば、その人に頼まれたことを早くやるように心がけておけばいいのです。いつも早くやってもらっているから、こちらも早くやらなければ申し訳ない……という心理が相手に働きます。

 相手が自分のチカラになってくれる人であれば、常にこちらが先に動いて、相手の感情を温めておくことが大切です。

 相手よりも先に動くということを、必要以上に難しく考える必要はありません。

毎日の生活の中で、誰もが経験していることを普通に実践するだけのことです。

 例えば、あなたのところに熱心に通ってくる保険のセールスマンがいたとします。最初は契約するつもりがなくても、何度も懇切丁寧な説明を受けているうちに、「ここまで親身になって自分のことを考えてくれているのだから、保険に入ろうかな」という気持ちになったことはないでしょうか?

 この感情の動きも、返報性の法則によるものです。自分のために何かしてもらったら、お礼をしたくなる気持ちが人間にはあります。相手のためを思って行動していれば、結果として自分のためにもなるのです。

 ここで注意しておく必要があるのは、返報性の法則には、プラス面だけでなく、マイナスに作用することもあるという点です。返報性の法則は、次のような3種類にまとめることができます。

 ①好意の返報性:こちらが好意を見せれば、相手も好意を示してくれる
 ②譲歩の返報性:こちらが譲歩すれば、相手も譲歩してくれる
 ③敵意の返報性:こちらが敵意を見せれば、相手も敵意を示す

 こちらが相手のために動けば、相手も自分のために動いてくれます。相手を陥しいれようとすると、同じような報復が返ってきます。すべての行動はブーメランのように自分に戻ってくると考えることが大切です。

仕事を「短くやる」習慣(著:山本大平)より

相手に動いてもらいたかったら、まず自分が動くべし
『仕事を「短くやる」習慣』 (クロスメディア・パブリッシング)

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