私が実施しているマネジメントセミナーでは、企業の人事の方より以下のようなご相談が来ることがあります。
「部下一人ひとりを大切にしながら育てるマネジメントが求められていますが、部下と仲良くなりすぎて、"なあなあ"な関係になってしまう上司がいます」
「セクハラやパワハラといったハラスメントを気にしすぎる為、部下に気を使いすぎて、何も言えない上司がいます」
ともに組織の業績向上に結び付かないパターンとして相談をされます。
■「冷酷な上司タイプ」に「ことなかれ上司タイプ」、4つのタイプのうちあなたはどれ?
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まずは今のあなたの管理職としての"あり方"がどんなものなのか考えてみましょう。以下の2軸で4つのタイプに分類したうち、どれに当てはまるでしょうか。
X軸:思いのベクトルが"部下"にむいているのか"自分"にむいているのか。
Y軸:部下に対して"愛"があるのか無いのか。
部下に愛が無く、ベクトルが自分に向いているタイプは「冷酷な上司タイプ」です。
「ことなかれ上司タイプ」はベクトルが部下に向いていますが、愛が無いため、とおり一辺倒な対応しかしない傾向にあります。気を使いすぎ上司の典型例です。「本物の上司タイプ」は、部下の成長のために愛を持っているタイプです。
ピーター・ドラッガーは、マネジャーとは「組織の成果に責任を持つ者」であると言っています。つまり、管理職は、部下を育成しながら組織のパフォーマンスを最大化する使命を持っているのです。そのような使命を持っている中で、皆様は何を大切にし、どのような能力を発揮し、現在の組織の状態を作っているのでしょうか。
「自分たちの仕事が生み出すものが世の中にどのように役立っているのか?」
「それに対し自分たちの組織の目的や目標は何なのか?」
について、しっかり自分の思いを常に振り返りながら持っておく必要があります。
■過度な優しさは部下の成長を鈍らせる
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多様な価値観を持った部下一人ひとりを大切に育てていくといった"ダイバーシティマネジメント"が求められる中で、
「部下の目線になれ!傾聴が大切だ!」
「部下に共感を示しなさい!」
「部下とのコミュニケーションを密に取りなさい!」
と言われ、つい部下にやさしく寄り添いすぎて友達感覚になってしまう方が多いようです。
ダイバーシティマネジメントでは、一人ひとりに責任ある仕事を任せ、評価を厳格にしていく必要があります。なぜなら人は仕事を任せられ、それをやり遂げ、結果を振り返りながら成長していくからです。"なあなあ"になってしまっては、部下の成長は期待できません。仕事の目的と目標のもと、部下の成長への厳しい愛を持ちながら組織成果を出していくことが求められているのです。
以上、本物の上司タイプになるために持っていただきたい"厳しい愛のあり方"についてお伝えさせていただきました。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。