横浜を舞台に広瀬すず、櫻井翔、江口洋介が探偵に扮して、難事件・珍事件を解決するミステリーコメディドラマ「ネメシス」。

一話完結型でありながら、全体を通して見え隠れする大きな謎が見え隠れするストーリー(菅研究所の正体や20年前の事件の謎などなど)には目が離せません。


さらに、仲村トオルや橋本環奈、真木よう子、山崎紘菜などの共演陣、そして個性的な“チームネメシス”の面々(=大島優子、上田竜也、奥平大兼、加藤諒)に加えて、エピソードゲストも豪華すぎるキャストが毎回登場し話題を呼んでいます。

また、総監督の入江悠監督(『22年目の告白-私が殺人犯です-』『AI崩壊』)と共に映画監督としても知られる片岡翔が担当した脚本には映画『屍人荘の殺人』の原作者の今村昌弘や藤石波矢など5人のミステリー作家がトリック監修に加わっているので、コメディテイストでありながら、本格ミステリーでもあり、映像ならではの演出もあって、複合的に楽しめるドラマになっています。

 
そんな「ネメシス」に込められている横“濱”ネタオマージュにお気づきでしょうか?

この辺り、総監督を務める映画監督の入江悠監督のジャンル映画・ジャンルドラマ好きを感じることができる部分です。

放映前からネタばらし、ストレートすぎるオマージュ

これはドラマ放映前からネタばらしがあったので、もうご存知の方が多いと思いますが、ドラマに登場する、勝地涼、中村蒼の二人が演じる過剰にキザな刑事と富田望生が演じるお目付け役の神奈川県警の刑事たちの名前が、それぞれ“タカ”、“ユージ”、“カオル”になっています。

これは往年の人気刑事ドラマ「あぶない刑事」で舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子が演じた役の呼び名そのままです。

また、呼び名だけでなく二人が乗る車が警察車両とは思えないスポーティーなシルエットだったり、二人の衣装がワンサイズ大きいバブル感覚あふれるスーツ&ロングコートにサングラスだったりと細かいところまで「あぶない刑事」オマージュに溢れています。

劇中でも平気で発砲してそれを見た櫻井翔に「あぶない!?」というセリフを言わせてしまうストレート過ぎるオマージュを見て取れます。

これに後輩刑事してトオルが登場すれば最高なのですが、ネタ元の「あぶない刑事」でトオルを演じた仲村トオルがヒロインのアンナ(=広瀬すず)の父親で、探偵事務所ネメシスの社長(=江口洋介)の旧友であり、突如失踪した美神始役で出演してるという、変化球的なリンクがあって、これもある程度狙っているのではないかと思います。

ピンと来た人はワクワクするオマージュ

一方、ちょっと変化球的なオマージュが「ネメシス」第2話から登場したのが上田竜也演じる超職人気質の道具屋の星憲章の設定とエピソード。

彼のアジトがあるのは横濱・伊勢佐木町にあるミニシアターのジャック&ベティ。星が籠っている地下室こそ架空の存在ですが、ジャック&ベティは実際に営業している映画館であり、ドラマ内に登場する館内や支配人は実際のジャック&ベティそのままです。

ここで思いつく人は思いつくのが、映画館の立地と探偵ということです。

ジャック&ベティのはす向かいは今はマンションになってますが、かつてここには横浜日劇という映画館がありました。


そしてそこを舞台に1990年代から2000年代前半に映画とドラマが作られたのが「私立探偵 濱マイク」です。劇中で永瀬正敏が演じた探偵濱マイクはこの横浜日劇に事務所を構えていたのです。

林海象監督による映画三部作では劇場内、林監督が原作に回り行定勲や岩松了、青山真治、アレックス・コックス、中島哲也といった錚々たる監督たちが各話を担当したテレビシリーズでは日劇の屋上に事務所を構えていました。

横濱日劇の屋上(&劇場内)に探偵が事務所を構えていた「濱マイク」とそのはす向かいのミニシアター・ジャック&ベティの地下室に協力者のアジトがある「ネメシス」。

「あぶない刑事」オマージュをやっていて、こっちを狙ってないと言ったら噓でしょう。

(文:村松健太郎)
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