‘25年における企業倒産件数は前年比3.6%増の1万261件。4年連続で前年を上回り、1万332件だった2013年以来、12年ぶりに年間1万件超となった(帝国データバンク調べ)。
多くの企業が生き残るための戦略を模索する中、新しい事業に活路を見出そうとする企業も存在する。

老舗IT企業が地方創生にチャレンジしたワケ

「将来は小さな街を作りたい」70年以上続く老舗IT企業が“地...の画像はこちら >>
 1954年に創立したティーコムもそうした企業の1つ。主な業務はロジスティクス、ICTソリューション、ソフトウェア開発、テクニカルサポートだったが、’24年から地方創生における地域活性化の事業に参画したという。

「弊社は70年以上続く老舗IT企業ですが、取引先の9割がグループ会社を含む某大手企業です。100年続く企業を目指す中で、新しい事業を展開して永続させていくことが必要だと強く感じています」とは、ティーコムで3代目の代表取締役社長を務める岡松美樹氏。だが、なぜ得意のIT分野ではなく、地方創生の地域活性化を新事業に選んだのか?

「新たな事業にチャレンジするなら、社会貢献をしていきたいという思いがありました。今は都市部でも人材を確保するのに苦労しますが、都市部に人材が流出している地方はもっと大変だと聞いています。地方に対して貢献したい、恩返しがしたいと考えていたところ、たまたまご縁をいただいた宮崎県高原町に社員を派遣することになりました」

派遣した社員が地域活性化起業人として活躍

 ティーコムは’24年7月から社員を1人、「地域活性化起業人」の制度を利用した宮崎県高原町に派遣している。「地域活性化起業人」は6か月以上3年以内の期間、企業から継続して自治体に派遣され、地域独自の魅力や価値の向上等の業務に従事するという。

「派遣した社員には、産業創生課の『地域産業創生官』として、既存事業者のサポートや新規創業の支援、政策立案などに取り組んでもらっています。もともと地域貢献に興味があった40代の社員に声をかけて出向してもらいましたが、縁もゆかりもない土地ですし、単身赴任だったこともあり、当初は不安も大きかったみたいです。

 でも今は『帰りたくない』と言っていますよ(笑)。向こうの仕事で大変なことはもちろんありますが、人が温かく、環境も良くて働きやすいと聞いています。PCのスキルが高いこともあり、作業の効率化やペーパーレス化にも貢献したそうです。
上司や町長さんにも気に入られていて、お礼を言われました」

バリで海外事業にもチャレンジ

「将来は小さな街を作りたい」70年以上続く老舗IT企業が“地方とアジア”に活路を見出した理由
インドネシアのバリに誕生したスクールの開校式
 岡松氏のチャレンジは、地方創生だけに終わらない。今年2月にはインドネシアのバリにティーコムが出資したスクールが開校。生徒たちは6か月の期間、卒業までに「N2」(日本語能力試験)を目指して、日本企業への就職へ向けて学習。ゆくゆくは、ITクラスも設けて、日本語ができるエンジニア育成もしていく予定とのこと。

「海外での日本語学校運営事情は、インドネシアやフィリピンにて、法人向けcaptiveや不動産関連事業、海外進出支援事業などを行っている知人に誘われて、’25年に入ってから動き出しました。インドネシアではIT関係の専門学校を卒業しても、就職先があまりないといいます。一方で、日本ではIT業界も人材が不足している。優秀なインドネシアの人材を日本のIT業界に紹介できれば、お互いにとって利益があると考えました」

 岡松氏は2025年4月にジャカルタやバリを視察。共同出資するパートナーが、この日本語学校事業の設立支援や運営サポートをする大元の企業にジョインしていることや、以前から海外事業に関心を持っていたこともあり、スクール運営に乗り出した。

「学校の準備自体はパートナーに任せることができたので苦労はなかったのですが、父の代から勤める役員関係者を説得するのが大変でした……。彼らが会社のためを思ってくれているのはよく理解しています。私が新しいことにチャレンジするのを不安に感じているようで、『うちにどのようなメリットがあるのか』と聞いてくるんですね。

 今回は、『人材不足の日本にインドネシアの優秀な人材を紹介できれば、相互に利益がある』という考えに共感してくれた取締役の方が味方になってくれたこともあって、渋っていたほかの役員関係者を説得できました。
味方をしてくれた取締役の方は、ふだんは保守的な考えをすることが多いので、賛同してくれたのはうれしかったですね」

地方に小さな街を作りたい

 岡松氏が父親から社長を継いで約6年。100年企業を目指しながら実現させたい夢があるそうだ。

「私は、地方に小さな街“ティーコムタウン”を作りたいんですよ。弊社事業のロジスティクスやテクニカルサポートの地方拠点を設置し、さらには介護や保育関連の事業などにも携わり、地方を活性化させたいと考えています。そうした事業のなかで若者や女性が安心して働ける街作りを、5年から10年の間に進めていきたいですね」

 夢の第一歩となりそうなのが、地方創生の取り組みだ。

「『地域活性化起業人』の任期は最大3年で、契約を更新することはできません。任期が終わった後、どういった事業で高原町に貢献できるかは今検討している段階ですが、空き家の視察などを行ってテクニカルサポートのオフィスを構えたり、新しい開発の拠点を作ったりできないかと考えています。

 既存の事業とは別に、新規事業も検討していて、若い世代の働き口を作りたい。高原町の方たちからは若手の採用を増やしたいとよく聞いているので。高原町にはまだまだ貢献できていないので、今後も活動を続けていきたいと思います」

【黒田知道】
 
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