主演がジェラルド・バトラーともなれば、その腕っぷしで窮地を脱していくディザスタームービーなのだろうと予想しがちだが、本作の場合は少し違う。ディザスタームービーであることには違いないのだが、ジェラルド・バトラーはごく普通の一般人で、独力で不可能を可能にしてしまうだけの力は持ち合わせていない。家族を守ろうと奮闘するごく普通のお父さんでしかない。そう、描こうとしているのはヒーローの姿ではないのである。だからこそ、よくありがちなB級ディザスター映画の装いをしていながらも、グイッと引き込まれてしまうだけのものが本作には宿っている。

今を生きる僕たちにとって、隕石が地球に飛来し、大惨事となるリアリティを抱くのは難しいかもしれない。が、緊急時や未曾有の危機において、心の余裕がなくなってしまうこと、秩序に欠けた行動に走ってしまうこと、そういった人間の在り方や心の弱さを僕たちは知っている。身に覚えだってあると思う。

只のディザスター映画では終わらない『グリーンランド ー地球最後の2日間ー』


劇中において暴徒と化す人々。それは、近年における台風時の食料買い占めや、コロナ禍初期におけるマスクの買い占め・転売などの行為と大差ない。それらの行為の延長線上にあるものを見せつけられているのだと思えば、妙に納得ができてしまう。そして、もしも自分が同じ状況に陥ったのなら、どのような選択をするのだろうと考えずにはいられない。

何事においても犠牲は付き物であるし、非情に徹してこそ活路を見出せることが時にはある。しかし、人間としての尊厳を欠いた行動が、後々になってその身と心を苦しめることもある。今を生き抜くことと、人間としての誇りを守ること、そんな天秤が常に揺れ動き続ける本作だからこそ、ディザスター的な要素とは別に終始ハラハラさせられてしまう。これこそ(A級の皮をかぶった)上物B級映画!オススメです。

(文:ミヤザキタケル)

『グリーンランド ー地球最後の2日間ー』作品情報

ストーリー
突如現れた彗星の破片が隕石となり地球に衝突した。各国の大都市は破壊され、更なる巨大隕石による世界崩壊まで残り48時間。そんななか、政府に選ばれた人々の避難が始まり、建築技師の能力を見込まれたジョン・ギャリティ(ジェラルド・バトラー)とその妻・アリソン(モリーナ・バッカリン)、息子・ネイサン(ロジャー・デイル・フロイド)も避難所を目指して輸送機に駆けつける。だが、離陸直前にネイサンの持病によって受け入れを拒否され、家族は離れ離れになってしまう。ジョンが必死で妻子を探すなか、アリソンは誘拐されて医療処置を必要としているネイサンの救出に奔走する。人々がパニックに陥り、無法地帯と化していく状況と闘いながら、生き残る道を模索するギャリティ一家は、やがて人間の善と悪を目の当たりにする……。

予告編


基本情報
出演:ジェラルド・バトラー/モリーナ・バッカリン/ロジャー・デイル・フロイド/スコット・グレン

監督:リック・ローマン・ウォー

公開日:2021年6月4日(金)

製作国:アメリカ