新しい学校のリーダーズ、“オトナブルー”の「首振りダンス」で...の画像はこちら >>



Text by 笹谷淳介
Text by 岩見旦



新しい学校のリーダーズが、大晦日に行なわれる『第74回NHK紅白歌合戦』の舞台に立つ。初出場ながら紅組のトップバッターを務めること、そして曲目は“オトナブルー”をパフォーマンスすることがすでに発表されている。

2023年の年の瀬を、一世風靡した「首振りダンス」が彩るのをいまから楽しみにしている人も多いだろう。そこで、快進撃を遂げた彼女たちのこれまでの歩みを振り返りたい。



2023年は新しい学校のリーダーズの年だったと言っても差し支えはないだろう。その証拠に、“オトナブルー”で、『Billboard JAPAN』の2023年年間チャート『Heatseekers Songs』の首位を獲得し、ファッション雑誌『GQ MEN』が主催する『GQ MEN OF THE YEAR 2023』では『ブレイクスルー・アーティスト賞』を受賞。加えて『2023ユーキャン新語・流行語大賞』(『現代用語の基礎知識』選)では「新しい学校のリーダーズ/首振りダンス」がトップ10に選出されるなど、多くの賞を獲得した。8年という活動期間のなかで新しい学校のリーダーズがポピュラリティーにタッチした1年間だったと言える。



そんな活躍を後押ししたのは、やはり「首振りダンス」の存在が大きいだろう。2020年にリリースした昭和のノスタルジーを感じさせる代表曲“オトナブルー”の振りつけにある、首を横にスライドさせるパフォーマンスだ。「首アイソレーション」と呼ばれる難易度が高い動きとして知られているようだが、このダンスをSNSで踊る若者が多数現れた。なかでもTikTokでは、関連動画再生数33億回(2023年12月現在)を叩き出し、一躍彼女たちの名が世間へ轟くことになった。



以前、彼女たちにインタビューした際、「このタイミングでなぜ“オトナブルー”がバズったのか?」と聞いたことがあるのだが、彼女たちの的確な分析に驚いたことがある。



彼女たちの分析はこういったものだった。

「TikTokの存在は大きい。TikTokができてから日本にもダンスの文化が根づき、ユーザーは面白いダンスを日常的に探している」「TikTokを観て、踊りたいと思うユーザーのダンスのスキルアップも影響している。きっと数年前なら『首振りダンス』に挑戦はしていない。ユーザーのダンス欲とスキルの上昇がきっかけ」と。



確かにその通りだと思う。TikTokが日本に上陸して来て約6年、2022年~2023年という期間は過渡期だったようにも思える。

簡単に踊れるライトなダンスからかっこよく、可愛く、面白く踊れるスキルフルなダンスが流行していくなかで、“オトナブルー”の「首振りダンス」はユーザーたちにとって恰好のお題だったのだろう。



それを彼女たちは、冷静に分析し、データとして自分たちのなかに落とし込んで活動を続けている。新しい学校のリーダーズは自己プロデュース能力と自分たちで何か生み出す術と直感力に長けているのだ。それは結成当初から何も変わっていない。



いまから8年前の2015年、MIZYU、SUZUKA、RIN、KANONの4人で結成された新しい学校のリーダーズ。ほかのZ世代のアーティストとは一線を画す存在として奇抜な装飾と日本の女学生の象徴であるセーラー服を身に纏い、活動をスタートさせた。



タイアップとしてロッテのチューイングガム「Fit's」のCM動画に出演すると独特なダンスで話題を集め、2016年にはあいみょん作詞作曲の“学校行けやあ゛”をLINE MUSICで配信を開始。このミュージックビデオはあどけない4人の姿を垣間見られるとともに、すでにこの時期からコミカルかつスキルフルなダンスと力強いSUZUKAの歌唱力が際立っていることが分かる。



そこから2017年、ついにビクターエンタテインメントからH ZETT Mのプロデュースで1stシングル“毒花”を発売。ちなみにこの曲はテレビ朝日系列で放送されたテレビドラマ『女囚セブン』の主題歌に採用され、最終回にはドラマの劇中にも出演した。2018年にはラーメンチェーン幸楽苑のCMに出演し“ピロティ”がCMソングに使用されるなど、デビュー当初からタイアップも多いのも特徴のひとつだろう。そこから1stアルバム『マエナラワナイ』(2018年)、2ndアルバム『若気ガイタル』(2019年)とリリースし、着実に成長を続け邁進していく。



そんななか、世界を恐怖のどん底へ落としたパンデミックが訪れる。ライフワーク的にライブにも力を入れていた新しい学校のリーダーズにとっても、影響は大きかっただろう。しかし彼女たちは、そんなネガティブな状況に臆することなく歩み続けていた。コロナ禍にインタビューした際には「いまは、良い方向へ向かうための途中経過。めっちゃいい方向へ向かっていると思います」とまで発言しており、そんな彼女たちの柔軟さは世界にも評価されることになるのだ。



世界進出が決まったのは2020年11月。

アメリカを拠点とする音楽レーベル・88risingとの契約が発表され、「ATARASHII GAKKO!」として世界デビューするが決定した。このとき4人全員が「ここでいいパフォーマンスをすれば、必ず実る」という確信があったらしい。その直感がすぐかたちになるのだから、彼女たちの感覚の鋭さには脱帽するしかない。



新しい学校のリーダーズのこれまでの活躍を見ると、この世界進出も決まっていたことのように思えてならない。ダンスの振りつけも、ライブの構成も、決めるのは4人。楽曲や周囲の環境との掛け算で生まれてきたその唯一無二の表現は、掛ける相手が大きければ大きいほど力を発揮する。それが、このタイミングで「新しい学校のリーダーズ×世界」となる機会を得たのだから、伸び代は無限だろう。



2021年には、88risingから、デジタルシングル“NAINAINAI”をリリースし正式に世界デビュー。その後、アルバムでは初めて『SNACKTIME』(2021年)を世界で発売し、彼女たちは着実に海外のリスナーを虜にしていった。



これを機に海外でのライブも多数経験し始め、2022年には、サンフランシスコ及びロサンゼルスにてアメリカ初のワンマンライブを開催。88rising主催の音楽フェス『Head In The Clouds Los Angels』、インドネシアで開催された『Head In The Clouds Jakarta』、フィリピンで開催された『Head In The Clouds Manila』に出演するなどグループとしての進化と深化を続けていく。



長ランを身に纏った彼女たちが、海外で熱狂を生んでいる“Pineapple Kryptonite (Yohji Igarashi Remix)”の映像は、新しい学校のリーダーズが世界的なグループとして確固たる地位に上り詰めることを予期させる、最高のパフォーマンスだ。



そこから2023年に突入し、前述した通り大活躍するわけだが、この社会現象的な流行は彼女たちが特別なアクションを起こして生まれたものでもない。世間が新しい学校のリーダーズがつくり出す世界観にようやく追いついたというのが正しい。彼女たちは2015年の結成からいままで当初のコンセプトから逸脱したことは一度もないし、自分たちで自己プロデュースするスタイルを変えてもいない。ただ、自分たちの可能性を信じ、自らの足で先へ先へと進んできた軌跡が結果的に2023年の活躍につながったのだ。



「青春」と高らかに声を上げ、唯一無二なパフォーマンスを魅せる。その姿にZ世代は自身の青春を重ね、大人たちは自分たちが経験した華やかな時代を思い出す。世界の誰よりも青春を体現する4人が口を揃えて言う「青春に年齢は関係ない」という熱い思い。そして新しい学校のリーダーズの一挙手一投足から垣間見られる底知れぬ可能性。彼女たちが結成当初から思い描いていたものが、いま世間とフィールした。



先ほど、掛け算という言葉を使ったが、彼女たちは相手が大きければ大きいほど魅力と能力を発揮する。まずは2023年の年の瀬、「新しい学校のリーダーズ×紅白歌合戦」という新たな掛け算を楽しみつつ、2024年、どんな掛け算を生むのかを期待し、彼女たちの新たな活躍を待ちたい。