自動車の安全性に大きく関わるのがライトだ。さまざまな新技術の開発が進んでおり、今後はクルマのライティングが変わっていくかもしれない。
「人とくるまのテクノロジー展 2024」で最新のライト事情を調査してきた。

ハイビームでもまぶしくない?

自動車用ランプの専門メーカーである市光工業のブースには、クルマの安全性向上に関わる2つの技術が展示されていた。

ひとつは「HDライティング技術」と呼ばれるフロントライティング技術だ。通常は数チップのLEDで光を制御しているハイビームを、数千から数万個のLEDアレイを使って高解像度にするものだという。

「HDライティング技術」のポイントは2つある。まずは、車両のカメラ情報を使って、先行車や対向車がいる部分だけを照らさないように制御ができること。
これにより、他のドライバーにまぶしい思いをさせることなく、自車は常にハイビームの明るい環境での走行が可能になる。進行方向の横断者や障害物などの早期発見につながるため、交通事故の発生低減が期待される。

もうひとつのポイントは、光を細かく分割できること。これにより、道路に速度標識などの法規記号の描写が可能になる。カーナビやヘッドアップディスプレイの場合、情報を確認するためにドライバーは道路から視線を外さなくてはいけない。「HDライティング技術」であれば、ドライバーは視線を動かすことなく、道路状況が把握できるのだ。

巻き込み事故を減らす技術に自動車メーカーも興味津々?

もうひとつの技術は、ターンランプと連動した「プロジェクションランプ技術」だ。ドライバーがウインカーを操作すると、道路に曲がる方向の合図を投影するという技術である。

この技術のメリットは、クルマがブラインド交差点や駐車場などの死角から接近している際に、歩行者や自転車、バイクといった相手方にクルマの接近を知らせられるところ。クルマがどこからきてどう動くかを、外部から確認しやすくする技術だ。自動車側が安全に配慮するのは当然のことだが、相手方がいち早くクルマに気づくことができれば、巻き込み事故は減るはず。モジュール自体は小さな球体をしているため、フロントデザインを損なうことがないのも特徴といえる。


この技術はUN規則が明るい光源ユニットが使用できるよう改定される2025年から導入が可能になる見込み。最も事故が多いと言われている薄暮時の時間帯から路面描画が視認できるそうだ。自動車メーカーも興味を示しているということなので、意外と早く市場に投入されるかもしれない。

安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。
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