●『マンガ家、堀マモル』出演の経緯は?
小学生のときにスカウトされ、ファッション誌『ニコ☆プチ』(新潮社)専属モデルとして活躍し、近年は俳優としての評価を高めている桃果。昨年公開された映画『唄う六人の女』での「見つめる女」の好演も記憶に新しい。


その桃果の最新出演映画『マンガ家、堀マモル』が8月30日より公開されている。新人賞受賞後、スランプに陥っている漫画家・堀マモル(山下幸輝)が、3人の幽霊と遭遇し、自分自身を見つめていく本作。桃果は、物語のキーパーソンとなる、マモルの幼なじみで大切な存在の春を演じている。

実は桃果は、本作が具体的に動き出す以前より、武桜子監督や、原作・主題歌のsetaと、「一緒になにか作ろう」と話をしていたそう。フリーランスになってから、「作る側」の話もよく聞くようになったという彼女に、子どもの頃から長く続けてきた芸能活動への向き合い方の変化や、今も心に残る先輩からの言葉などを聞いた。

○長編映画としての劇場公開に驚き

――マモルの大切な人、春を演じましたが、どのような形で参加されたのでしょうか。

『マンガ家、堀マモル』として成立する前から、武監督とsetaさんと一緒に、「自分たちで何か作れたらいいね」と話していたんです。はじめは「幽霊が出る話にしよう」とか、それくらいでした。結果として、想像以上に温かいお話になりました。私はこうした心温まるような映画をやるのが初めてだったので(笑)、すごくワクワクしました。

――企画が決まったあとのオファーだったのではなく、作品が出来上がっていく過程から仲間だったんですね。

長編映画として映画館で公開されるまでになって「ええ!」と驚いています(笑)。


――そうだったんですね。もともと作る側にも興味があるのでしょうか。

最初は全然なかったです。よくしていただいているプロデューサーさんやチームから、作っている側の気持ちを聞くことが多くて、興味を持つようになりました。今はまだ具体的に何もありませんけれど、この先、自分でも企画を考えて作れたらいいなとは思っています。

○作り手としての山田孝之の話も聞いていた

――近年の作品では『唄う六人の女』への出演も非常に評判を呼びましたが、そこで共演した山田孝之さんも俳優が軸でありながら、作る側の活動をされています。現場でそうしたお話は。

はい。それこそ山田さんやプロデューサーさんがお話しているのを、いつも近くで聞いていて、「こういう風に作っているんだな」と思っていました。

――山田さんは、普段からこれからの映画界についてのお話をされているんですね。

常に何かを変えたいというか、意味があることをしていきたいとお話されています。『マンガ家、堀マモル』も、『唄う六人の女』と同じ伊藤主税プロデューサーが関わっていて、よく知っている方々との現場だったので、安心して撮影に臨めました。


○常に自分と向き合い、ポジティブに「変えていくこと」を考える

――演じた春ちゃんへはどんな印象を持ちましたか?

共感できる部分が多かったです。春ちゃんはもともと明るくて、ちょっとうじうじしているマモルを引っ張っていくようなキャラクターです。一見、強いし、しっかりしていますが、いろんな思いもあって、強がっている部分もあって、本音を言えないところもある。そういった一つひとつ、お母さんに本音を言うところなど、春ちゃんの気持ちがよく分かりました。

――お母さんとのシーンは、観ているこちらもつらかったです。

あのシーンは一番きつかったです。お母さんだからこそというか、お母さんの前でだけは、子どもになってポロっと出ちゃう。そこまでつらくはないくらいの顔をしなくちゃと思いながらも。心配させて相手が悲しくなってしまうなら、自分が悲しさを抱えたままのほうがいいと思ってるんですよね。相手が悲しむのは一番イヤだから。でも人間だから、お母さんの前では少し出ちゃう。あそこが一番共感できました。


――本作ではマモルが自分と向き合っていきます。桃果さんは本音を隠しがちとのことですが、何かうまくいかないことがあって、自分自身とじっくり向き合うといったことは。

常にそうです。向き合わなきゃいけない状況になることも多いですが、それを周りのせいにするのではなく、自分をどう変えていったらいいのか。自分を責めるのではなくて、ただ自分の中になにかしらうまくいかない原因もあると思うから、ポジティブに「変えていくこと」を考えたりします。人間関係も、仕事も、常に自分と向き合うように心掛けています。

桃果の芝居を見た斎藤工が涙「絶対に天職だから…」

○16歳のときに斎藤工からかけてもらった言葉

――マモルには、担当編集者さんをはじめとする周囲の支えもあります。仕事で頑張っているときにかけてもらった言葉で、心に残っていることなどはありますか?

私は本当に周りの方に恵まれていて、常に周りの人に助けてもらっているので、たくさんあります。そこからひとつ挙げるなら。16歳のときに、『最上の命医2017』(テレビ東京系)というドラマで、14歳で妊娠してしまう役を演じました。そのとき、主演だった斎藤工さんが、私のお芝居を見て泣いてくださったんです。「絶対に天職だから、この先も続けていってほしい。
絶対、桃果は大丈夫だから」と言ってくださったんです。

――うれしいですね。

すごくうれしくて、忘れないようにメモしました。ほかにも、斎藤さんはオーディションでは審査側になるときもあるので、オーディションを受けるときのアドバイスをもらいました。「会場には、受ける側と審査員ではなくて、この人たちと一緒に何かを作るんだという気持ちで、仲間なんだというくらいのラフな気持ちで入ったほうがいいよ」と。そこから本当にオーディションに受かるようになりました。

――最初に話が出た山田さんもですが、斎藤さんも俳優でありながら、ご自身で作られる方ですね。

そうなんです。これまでに本当にたくさんの方たちに助けていただいています。

○本作のプロデューサーは、11歳のときの自分の頑張りも知っている

――今のお話は16歳のときの出来事とのことでした。本編で、マモルと春の河原での会話に「続けること」の大切さを感じた箇所がありました。桃果さんは、続けてきたことを実感することはありますか?

本作のプロデューサーさんは、私が子どもの頃から知ってるんです。
そのときにそちらの会社でお芝居のレッスンを受けさせてもらっていて、私は1日も休まずに参加させていただいてました。

――何歳くらいのときですか?

11歳か12歳くらいだったと思います。そこで頑張っていたのを、そのプロデューサーさんは見てくださっていて。なかなか一緒にお仕事できずにいたのですが、『唄う六人の女』のとき、二十歳でご一緒できた。小さな頃から覚えていてくださっていて、「やっと一緒にできたね」と。今、一緒にお仕事できている方たちと出会えているのも、続けているからこそだと思います。

○仕事も私生活もちゃんと両立していきたい

――今はフリーランスで活動されていますね。

はい。とても勉強になっていて、いろんな方に助けていただいていることも、フリーになってより感じられるようになりました。大変なことも多いですが、フリーになったからこそ、これまではマネージャーさんに言われるからやっていたことも、「なぜこれをやる必要があるのか」と一つひとつの理由が分かるようになりました。仕事への向き合い方が、変わったと思います。フリーになって自分でいろいろやるようになって、いい経験をしているなと思います。
「作る側」に興味を持てたのも、フリーになっていろんなお話を聞くようになったからです。

――子ども時代から活躍されていますが、今もどんどんいろんなことを吸収しているんですね。最後に、今後の野望を教えてください。

これは前から常に言っていることなのですが、俳優としては、観ている方たちの感情を、いろんな意味で動かしたい。幅広くいろんな役を演じられる俳優になるために、普段から、いろんな経験をして、小さなことでも、その経験や受けた感情を大事にしていきたいと思います。個人としては、将来結婚して子どもを作りたい。幼いころから、仕事も私生活もちゃんと両立したいんです。だから幸せに結婚して子どもを作って、俳優としても活躍して、ゆくゆくは映画を作って、海外に行って(笑)。

――おお、すごい! 期待しています。

■プロフィール
桃果
2000年8月25日生まれ、神奈川県出身。小学生の時より『ニコ☆プチ』専属モデルを務め、『Rの法則』(NHK)等に出演。その後、俳優としても活動。23年に公開された『唄う六人の女』で演じた「見つめる女」が評判を集めた。主な出演作にGReeeeNのMV「ゆらゆら」「おまじない」「相思相愛」3連作、ドラマ『美しい彼』シリーズ(MBS)、映画『人狼ゲーム デスゲームの運営人』(20)、『消せない記憶』(23)など。最新作として映画『マンガ家、堀マモル』が公開。
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