WOWOWとHBO Maxが共同制作するドラマ『TOKYO VICE』が、4月7日からWOWOWオンデマンドにて日米同時配信され、4月24日よりWOWOWで独占放送がスタートしている。本作は1990年代の東京を舞台に、警察担当の新米記者として赴任したジェイク(アンセル・エルゴート)が、特ダネを執拗(しつよう)に求めて危険な裏社会へと踏み込んでいくさまを描いたストーリー。
【写真】「いつかまた違う形で、共演したい」 スーツをビシッと着こなす山下智久&笠松将
ハリウッド作品へのオファーは「すごく鮮明」「決まったよ、と言われなかった」
ーーまずは『TOKYO VICE』への出演が決まった時の気持ちを教えてください。
山下:すごく鮮明に覚えてますね。キャスティング担当の方から「おめでとう」とお電話をいただきました。僕自身、ちょうど10年ほど前から「海外の作品に出てみたいなあ」と思うようになり、オーディションを受け続けていたのですが、なかなか決まらなくて。「もうそろそろ諦めた方がいいかな」って思っていたタイミングで、役をいただけたので、夢がかなった瞬間を体感したというか。振り返ってみると、自分の中ではすごく価値のある役だったなと思います。
笠松:僕はオーディションに行き、その後もマイケル・マン監督と10回ぐらいお会いしました。「一応、台本を覚えておいて」とは言われたのですが、「僕は佐藤を演じると、決まっているのですか」と質問しても「答えられない」と言われ続けて、衣装合わせまでしたんです。監督とは、佐藤という役について何時間も話し合うこともあれば、僕の今までの人生や考え方、これからどうしたいのかということまでを話したこともあります。それなのに撮影当日まで出演決定とは言われないまま、撮影の「よーい、スタート!」がかかっても「(出演するか)わからない」と言われました(笑)。
ーー本作は90年代の東京が舞台とのことで、実際に東京でロケをしたと伺っております。撮影中、印象的だったことはありますか?
山下:まずは本当のホストクラブで撮影をして、衣装や細かいところまで再現したスタッフさんに対してすごいなと思いました。僕個人としては、1990年代に当時はやっていたアクセサリーを先輩からもらったことがあって、そのアイテムを身に着けて出演したのが思い出深いです。
笠松:実際の歌舞伎町での撮影は印象的でしたね。本当にアンダーグラウンドな空気感が見え隠れするときもありました。あとは、「山下さんがいる!」という情報が漏れて、歌舞伎町に、新宿区にいる全員ぐらいの人が集まったんです。
山下:いやいや!(笑)
笠松:すごかったですって! 人が集まりすぎて、一度撮影が止まりましたからね。
山下への愛が止まらない笠松 二人が次に共演するなら
ーー回を重ねていくうちに二人の共演シーンがあるとお伺いしています。お互いの印象を教えてください。
山下:笠松くんは僕よりもずっと現場にいる時間が長かったので、雰囲気を和やかにしてくれるような癒やしの面があったり、話しかけてくれたりしました。撮影期間中、一緒に食事に行ったこともありましたね。
ーーどんなお話をしたのでしょう?
山下:僕がどんな感じで仕事を始めて、どんな経験をしてきて今があるのかという内容ですかね。かなり腹を割って話しました。僕、割と人見知りなのですが、笠松くんがどんどん聞いてくれることもあり、ほぐれていって、すごく楽しかったです。
笠松:ご飯の時だけでなく、現場でもたくさんお話させてもらいました。特に印象的だったのは、僕自身カリスマ性がないなと思っていて、それは後天的に手にすることができるのかなと考えていたことがあったんですね。そのときに山下さんに「カリスマって何ですか? 僕にできることはなんですか?」と電話をさせていただいたのですが、山下さんが真摯(しんし)に答えてくださって、それが今すごくヒントになっているんです。本当にありがたかったです。
ーー笠松さんから見た山下さんの印象も教えてください。
笠松:僕、過去に取材を受けた時にもお話ししたことがあるのですが、昔から山下さんのことがすごく好きなんです。それで、今回台本を読んだときに、まず「このアキラっていう役が山下さんなの?」という驚きがあり、さらにお芝居を始めると、すごく真摯(しんし)に悪い役を演じる山下さんと、間近でご一緒できて、とてもうれしかったです。また、お芝居以外のところでも、とても優しく接していただき、『TOKYO VICE』の情報解禁があるたびに連絡もいただきました。本当に人としても俳優としても、こういうふうになりたいなと思いました。
山下:いやいや。これはもう1000回ぐらいご飯をおごらないといけないですね(笑)。今回、僕は笠松くんが演じる佐藤を怒らせてしまう役だったので、お芝居上はバチバチしていたのですが、いつかまた違う形で、笠松くんと共演したいなと思っています。
笠松:うれしいです~! 1000回ごちそうしてくださるご飯、なしにしようとしてません?
ーー(笑)。共演するなら、どんな役が良いでしょう?
笠松:僕は、一緒に悪いことをする役をしたいですね。二人が仲間で、それぞれ役割が違うようなタッグを組んでみたいです。
山下:良いですね! 僕は、腹違いの兄弟が良いですかね。最初は近くない関係性なんだけど、どこかでつながっているような。
日本と海外の制作を経験して感じた違いや「心を開く」大切さ
ーーハリウッドと日本の共同制作ということで、今回新たに学んだことや違いがあれば教えてください。
山下:役を事前に作っていくことも大切なのですが、監督と話し合って、そのキャラクターを作り上げることと、役との向き合い方のヒントを学びました。
笠松:僕は違いを感じることは意外となくて、日本の作品も全く負けていないなというのを改めて確信しました。もちろんこれからも海外の作品に挑戦したいとは思いますけど、日本の作品をもっと海外に届けられたらいいなという新しい価値観が生まれましたね。個人的には英語がまったく話せなかったので、これをきっかけに英語を勉強し、海外の人たちともコミュニケーションを取れるようになりたいと思うようになりました。
ーー昨今はインターネットでの動画配信もあり、海外の作品と日本の作品の距離がより近くなったと感じています。今回の作品に出て、これからどんなことをしたいと感じましたか?
山下:もちろん海外に挑戦したいなという気持ちはありますけど、何度か仕事をさせていただく機会をもらって感じたのは、海外を外国だと思わなくなったということです。結局、どこの国だろうと、同じ人間だし、国の違いによるボーダーラインが薄くなってきたなと感じています。だから、日本か海外かを問わず、おもしろい役があれば、どんどんやっていきたいですし、そういう作品に呼ばれる努力を続けていきたいです。
笠松:山下さんと近いのですが、僕は元々“海外か日本か”、“ドラマか映画か”ということに縛られず、おもしろい作品があって、そこに出演するチャンスがあるなら挑戦したいと思っているんです。だから、つい数年前までバイトしてたような僕が、マン監督のもとで作品に参加するなんて思ってもいなかったし、そういう目標もなかったのですが、こういう機会をいただけて、視野が一気に広がったなと思います。純粋に見てくださる方々にも楽しんでいただきたいです。
ーーそのために、役者として意識したいことがあれば教えてください。
山下:僕はずっと日本で育ってきたので、いくら海外に進出しようと思っても、その国のカルチャーを全部吸収できるわけではないと思うんですね。だからこそ、日本や自分が育った街の素晴らしさを忘れずに、いろんなカルチャーを受け入れる心の窓口を広げて、自分の意見を交換していくこと、そうすることで良いものを作っていくことが、正解に近いんじゃないかなと感じています。相手へのリスペクトを持ちながら、自分自身をちゃんとリスペクトして、流されすぎず同じ立場で意見を交換することと、柔軟に受け入れて良いものを作ることを大切にしたいです。
笠松:今回マン監督に選んでいただいて、褒めていただいたくこともあったのですが、そのほとんどが、僕のコンプレックスだったんですよね。コンプレックスだったことを「それがいいんだ」と言ってくださったので、これからはコンプレックスとどう向き合うかということ、自分だけの価値観にとらわれないことを意識したいなと思いました。自分がコンプレックスだと感じていることが、武器になるかもしれないし、逆に長所が弱点になる可能性もあるわけですから。山下さんがおっしゃったように、心を開いて、人と人として関わることが、俳優として、人として、良い作品作りへの一番の近道なのかなと思っています。(取材・文:於ありさ 写真:池村隆司)
ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』は、WOWOWにて毎週日曜22時より独占放送中、WOWOWオンデマンドにて配信中。