乃木坂46の3期生・久保史緒里は、自身の周囲にある変化を「プラスに捉えています」とほほ笑む。2月には、グループ名を冠するラジオ番組『乃木坂46のオールナイトニッポン』(ニッポン放送/毎週水曜25時)で2代目パーソナリティに就任。

9月~10月上演の舞台『桜文』では、初挑戦のあでやかな花魁役で「まったく違う一面を見せたい」と意気込む彼女の表情は、自信に満ちあふれている。

【写真】笑顔を封印! 妖艶な花魁役に挑戦する久保史緒里

思い入れの強い演技の仕事で「新たな自分を出したいと思っていた」

 久保が主演する舞台『桜文(さくらふみ)』は、明治後期から昭和初期の“花の吉原”を舞台にした美しく、哀(かな)しく、不思議な愛の物語。久保が演じるのは、“たいそう美しいが決して笑わない女”として客の興味を引きつけ人気を博した花魁・桜雅(おうが)と、若かりし頃の彼女である笹沖雅沙子。共演は、ゆうたろう、榎木孝明、石倉三郎などが顔をそろえ、秋之桜子が脚本を務め、寺十吾が演出を手掛ける。

――久保さんが演じる桜雅の“たいそう美しいが決して笑わない女”という役柄は、グループでは笑顔が目立つ久保さんのイメージとは真逆の印象があります。今回の役には、どんな思い入れがありますか?

久保:不安もありましたが、お話を頂いたときはうれしかったです。グループでの活動の中で、これまで見せてきた自分とはまったく違う一面を見せたい気持ちがあったんです。加入当初には「か弱そう」といった印象を持たれることもありましたけど、2月にラジオ(『乃木坂46のオールナイトニッポン』)のレギュラーパーソナリティに抜てきしていただいてからは、オンエアで堕落した生活ぶりもさらけ出せるようになって(笑)。加入後からずっと「お芝居がしたい」と言い続けてきたんですけど、演技のお仕事でも新たな自分を出したいと思っていたので、今回の作品に懸ける思いは強いです。

――新たにつかんだ役柄は、成長につながりそうですね。そして、榎木さんや石倉さんといったベテラン俳優の方々に囲まれ、グループメンバーの皆さんから離れた現場も成長のきっかけになりそうです。

久保:緊張しいなので、新しい現場へ入るのは苦手なんですよ。
舞台で長期間、共演者の方々と一緒にお仕事させていただくときは、自分を出せるようになるまでものすごく時間がかかるんです。そんな自分が嫌でどうにかならないかと思っていましたけど、今回の作品で少しでも変われたらなって。これまでは共演者の方々に甘えてきた部分も多く、支えられてきましたけど、昨年7月に20歳になってから初めての舞台なんです。大先輩の方々が多いので、皆さんのお力をお借りしながら、大人になった自分自身のやるべきことをしっかりやっていきたいです。

――昨年6月上演の舞台『夜は短し恋せよ乙女』ではヒロイン役で出演するなど、“思い入れの強い”という演技の世界では、舞台経験が豊富な印象もあります。そんな久保さんから「緊張しい」という発言が出たのは意外でしたが、例えば、本番で緊張をほぐすためのルーティンはありますか?

久保:ライブや舞台の本番前は、心臓の音を聴いています。心臓に手を当てて、鼓動を覚えておくと安心するんです。「大丈夫だ」と自分に言い聞かせながら、プレッシャーを乗り越えています。習慣になったのは、メンバーと共演した舞台「乃木坂46版ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』2019」からです。アクションシーンや早着替えが多く、自分を落ち着かせないとミスが発生しそうだったので、「全員で無事に乗り越えられますように」と念じながらやってみたのがきっかけでした。

――周囲のことも思いやりながら始めたルーティンだったんですね。いくつものステージを共に味わってきたメンバーの皆さんは、今回の作品についてどんな反応を示していましたか?

久保:みんな「見に行くね」と言ってくれました。
これまでと全然違う自分を演じるので、みんながどう受け止めてくれるかも楽しみです。同期からは「本当に色気がないね」といじられることもあるので(笑)、花魁役の私を見て「久保がほんとに演じてるの?」と驚いてもらえたらいいなと思います。

――久保さんのギャップも楽しみな作品ですが、桜雅と彼女を慕う男性・仙太(ゆうたろう)の切ない恋模様が核にあります。グループでは「気づいたら片想い」など、切なさや恋心を表現する楽曲が数多くありますが、ステージで表現してきた経験も今回の作品へ生かせそうですか?

久保:ライブで歌うときの表現を手に入れられたのは、グループ外でのお芝居の経験だと思っているんです。グループへ帰ってきたときに、切なさや恋心を表現できるようになったと実感できたこともあって。今回の作品で、これまでのお芝居の経験が生きてくる部分もあると思いますし、グループで味わった悔しさや、つらさも生かせるかなと思っています。

ソロとして、グループとして感じている変化は「プラスに捉えられています」

――舞台のお話でも話題に上がった「ラジオ」についても伺います。2月に『乃木坂46のオールナイトニッポン』の2代目パーソナリティに就任以降、番組内では出身地・宮城県を中心とした東北地方に関するトークをきっかけに、活躍の幅を広げていますよね。同じ出身地のお笑いコンビサンドウィッチマンさんの番組出演、プロ野球中継『ニッポン放送ショウアップナイター』の公式応援団「チームショウアップ」への加入など、ラジオを通した広がりには何を思いますか?

久保:番組の影響力があるのも知っていたので、2代目パーソナリティを受け継ぐのはすごく怖かったです。でも、自分にしかないものを届けようと思う中で、出身地の話を増やしてから変わってきたんです。地元の方はもちろん、全国の方からも反響を頂けるようになって。東北楽天ゴールデンイーグルスの話をきっかけに野球ファンの方も聴いてくださるようになってきましたし、いろんなジャンルのリスナーさんが増えたのはうれしいです。


――レギュラーパーソナリティに就任してからの初回放送で、お母さまと一緒にタイトルコールを発していたのも印象的でした。ご家族からは、どんな反応がありましたか?

久保:番組では家族の話もするんですけど、事前の許可を取っていないんですよ。母と姉とプロ野球の交流戦を見に行った話をした回もありましたけど、そのときはオンエア後に連絡して謝りました(笑)。姉が「面白かったからいいよ」と言ってくれたので、よかったです。

――怒られなくてよかったです(笑)。毎週水曜25時からの生放送では、出身地への愛もあふれる軽快なフリートークを展開していますが、ネタ探しなど番組を守る上での苦労もあるのかなと思います。

久保:毎週、月曜日になると「フリートークのネタがない!」と焦っています(笑)。レギュラーパーソナリティになってからは、日常で起きた出来事をメモする習慣が付きましたし、普段は見過ごしているけど文字にしてみたら「面白いじゃん」と思うことを書き留めるようになりました。

――日常生活にも変化が生まれたんですね。さて、舞台やラジオだけではなく、グループでは2月に5期生の皆さんが加入するなど、久保さんの周りではさまざまな変化が目立ちます。新たに何か挑戦するべき場面もあると思いますが、変化や挑戦に対して、久保さん自身はどのように捉えていますか?

久保:グループの今の変化は、いいものだと捉えています。5期生のみんなが加入してくれたことが、自分の行動を見直すきっかけになったんですよ。
5期生のみんなに活動する上で大事なことを「教えたい」と思うなら、自分自身できていないとダメだと思っていて。本当は、新たな場所へ飛び込むのは苦手だし、1人で動き出すのができない人間なんですけど、舞台やラジオとか、グループ外のお仕事へ挑めるのも周りのみんながいてくれるからですし、新たな変化はプラスに捉えて、いろいろと挑戦できたらいいなと思っています。

(取材・文:カネコシュウヘイ)

 パルコ・プロデュース2022 舞台『桜文』は、9月5日~25日東京・PARCO劇場にて上演。10月1日・2日大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて、10月5日愛知・名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)にて、10月8日長野・サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホールにて上演。

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