7月26日より、令和版『パパとムスメの7日間』(TBS/毎週火曜24時58分)が放送を開始した。サラリーマンのパパ・川原恭一郎を眞島秀和が、高校生のムスメ・小梅を飯沼愛が演じ、小梅が憧れる先輩・大杉健太役には、なにわ男子の長尾謙杜が抜てきされている。

本作は、2007年に放送された五十嵐貴久の同名小説を原作にしたドラマのリメイク版であり、当時は舘ひろしと新垣結衣が父娘を演じたことで、“入れ替わりドラマ”として大きな話題に。リメイク版解禁時には、“ガッキー”がトレンド入りを果たすなど大きな盛り上がりを見せた。そして今回、令和版の放送を記念して、動画配信サービスで2007年版『パパとムスメの7日間』の全話期間限定配信が決定(「Paravi」「U‐NEXT」ほかで配信中)。本稿では、今なお色褪せない、当時19歳の新垣結衣の“オッサン演技”とダンディな舘ひろしの“乙女演技”の見どころを振り返っていきたい。

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■舘ひろしと新垣結衣、“入れ替わり”への初リアクション&ギャップ演技が心をつかむ

 第1話から視聴者の心を掴んだ小梅と恭一郎の入れ替わりシーン。2人は祖母の家を訪ねた帰りに電車の事故に巻き込まれてしまい、気づくと病院のベッドの上に。互いの中身が入れ替わっていることを鏡の前で知り、同時に叫び声をあげるのだった。「きゃーーー!!!/わーーー!!!」とそれぞれがキャラクターを活かした叫び声で“入れ替わり”を表現したこのシーンだが、小梅になってしまった舘は手で口元を押さえて“女子高生”らしい驚き方を、一方で恭一郎になってしまった新垣は口を大きく開けて叫ぶ。それぞれの表現の違いから、入れ替わったことが顕著に示されるとともに、キャストが見せるギャップも視聴者を惹きつけた所以だろう。

■舘ひろしの女子高生演技が会社で炸裂! さりげない仕草で“オッサン”を感じさせるガッキー

 入れ替わりが起きても日常は続く。小梅も恭一郎も学校と会社に行かなければならない。会社に行った恭一郎(中身:小梅)は、ホワイトボードに書かれた「直帰(ちょっき=出先から勤め先に戻らず、そのまま帰宅すること)」を「なおき」と読み間違えてしまい、さらに部下から直帰の意味を説明されると、「ってことは全然、会社に来ない。
いいのぉ~!?」と女子高生らしく語尾を上げたイントネーションで盛大に驚いてみせる。会話の端々からこぼれだすリアクションの素直さや派手さは、はつらつとした女子高生の魅力にあふれているものの…、それを演じるのが舘ひろしというギャップが強烈だ。

 一方の小梅(中身:恭一郎)は友だちに昼食を買ってきてもらい「すまんね」と片手を顔の前に持ってきて拝むようなリアクション。普段の女子高生が見せないような姿には友達からも「なにそれ、チョー受ける、時代劇?」と大笑いされてしまう。ここでは新垣が入れ替わった恭一郎を表現するため、年齢を感じさせる仕草をさりげなく見せた姿が印象的だ。

■初めてのギュ!にこだわる舘ひろしという衝撃 可愛さが光るガッキーのおじさん演技

 小梅が思いを寄せるのはサッカー部の大杉健太(加藤シゲアキ※当時:加藤成亮)先輩だ。誠実で真面目でスポーツマンという理想的な恋の相手に、ついつい恭一郎も好感を持ってしまう。第3話では、そんな健太先輩にまつわるエピソードが描かれた。ある日、定期テストの勉強で切羽詰まっていた小梅(中身:恭一郎)の元に健太が去年の自分のテストを届けにきてくれる。小梅(中身:恭一郎)は、これを参考にすれば良い点が取れると大喜び。感動のあまり「健太先輩大好き!」と抱きついてしまった。だがこの現場を恭一郎(中身:小梅)が双眼鏡で監視していたのだ。
恭一郎は「なんで抱き合ってんのぉ! 」と2人に向かって突進。中身は女子高生だが、姿は中年男の恭一郎が「ダメェ~! ダメェ~!」と走ってくる姿には健太も動揺。実は、恭一郎の姿をした小梅には「初めて健太と抱き合うのはパパじゃなくて自分がいい」という繊細な乙女心があったのだ。舘ひろしはこの10代の繊細な感情を、うるうるとした瞳で熱演した。

 一方の新垣は、豪快なハグやストレートな笑顔により“素直でかわいらしいおじさん”を演じる。おじさんらしい口調の方がむしろ嫌味もなく、一周まわってかわいいのではとさえ思えてしまう新垣の芝居、恐るべし。

■ガッキーの鬼気迫る芝居に注目! ガラケー片手に1人芝居

 第4話で、新作の香水を出すための御前会議に出席した恭一郎(中身:小梅)は、釈然としない思いを抱えていた。3000円もする香水を高校生向けに発売するという企画に納得がいかなかったのだ。常務取締役の森山礼次郎(大和田伸也)からプロジェクトリーダーとしての抱負を要求されると「がんばりたいと思います…が、なかなか難しいかも」と本音を漏らしてしまう。さらに「やっぱり一言だけいいですか。多分きっと…いえ絶対に売れないと思います」と現役女子高生ならではの持論を展開。これには学校から携帯で会議の内容を聞いていた小梅(中身:恭一郎)もヒヤヒヤしてしまう。
携帯片手に祈るように、恭一郎(中身:小梅)の暴走を止めようとするガッキーの瞳は、真剣なサラリーマンそのものだ。

 だが恭一郎(中身:小梅)の本音は止まらない。かわいらしい上目遣いにラフな話しぶりで女子高生のリアルな懐事情をぶちまけるのだった。実はこのシーンは、ドラマにとっての非常に重要なエピソードにもなっている。入れ替わりで起こる「化学反応」が2人の運命をどう変えるのかは、ぜひともドラマ本編で確かめていただきたい。

■ガッキーのおじさん演技がついにここまで! かわいすぎる女子高生おじさんの誕生

 努力の甲斐も虚しく赤点連発の小梅(中身:恭一郎)。入れ替わる前は優秀な学生だったことから、担任の両角(田口浩正)も困惑を隠せない様子だ。テストの最終日には、とうとう三者面談が開かれ、親が呼び出されることになってしまった。すると赤点のことを知らない恭一郎(中身:小梅)が自分も行くと言いだし、学校に乗り込んでくることに。この一連のシーンには、小梅(中身:恭一郎)が教室で足を組み、体をかきむしる姿も。新垣の堂々とした親父っぷりに驚きつつも、真面目な顔つきで意外な仕草を見せる、その飾らなさも魅力的にうつる。全7話で制作された本作。
恭一郎(中身:小梅)と小梅(中身:恭一郎)の入れ替わりで起きた「化学反応」の結果が見える第5話のラストでは、それぞれの目標のためお互いに早く戻りたいと気持ちを確かめ合う。そして“入れ替わり”の原因が判明した時、恭一郎(中身:小梅)と小梅(中身:恭一郎)は元の身体に戻ることができるのか注目だ。

 本作においては、新垣演じる小梅の「おじさんと女子高生のハイブリッド感」こそがヒットの大きな要因になったのではないか。加えて舘ひろしのうるうる目の乙女演技のギャップが想像以上に顕著だったことも人気に拍車をかけただろう。

 “入れ替わり”を題材にした作品と言えば真っ先に思い浮かぶのが大林宣彦監督の映画『転校生』(1982年)だ(本作においても2人がこの映画を真似て階段から転げ落ちることで元に戻ろうとするシーンが描かれている)。その後も“入れ替わり”作品は人気ジャンルとして度々登場しており、綾瀬はるかと高橋一生が入れ替わりの芝居を披露した『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系)も記憶に新しい。

 リメイクされた『パパとムスメの7日間』でも、入れ替わりの芝居により普段見ることのできない俳優の表情が引き出されることに期待が高まるとともに、2007年版でのガラケー多用や当時の若者言葉が意識的に盛り込まれる演出が、令和ではどう描かれるのかといった点も興味深いところだ。(文/Nana Numoto)

 『パパとムスメの7日間(2007)』は動画配信サービス「Paravi」「U‐NEXT」、民放公式テレビポータル「TVer」「GYAO!」「TBS FREE」にて10月12日まで限定配信中。
 ドラマストリーム『パパとムスメの7日間』は、TBSにて毎週火曜24時58分放送。また、「Paravi」「U‐NEXT」にて1週間先行配信中。

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