2022年の10月期ドラマ『silent』(フジテレビ系)の大ヒットにより、ロケ地である世田谷代田駅やカフェが注目を集めており、作品のファンを公言する芸能人や視聴者がこぞって撮影エリアを訪れ、SNSに写真をアップしているようだ。ドラマの楽しみ方の1つでもある“ロケ地めぐり”だが、実は多くの人が訪れる意外な“あの場所”も人気ドラマの舞台になっていたことがある。

今回は、注目を集めた恋愛ドラマのロケ地に焦点を当てて掘り下げていきたい。

【写真】『この恋あたためますか』の撮影も 恋愛ドラマのロケ地を一気に見る

“プリン”の手話が話題に! 数々の名シーンやセリフが誕生したロケ地

■『silent』

 主人公の紬(川口春奈)は想(目黒蓮)と付き合っていたものの、高校卒業後に突然振られてしまう。だが8年後に偶然2人は再会。そのとき紬は、想の耳が聞こえなくなっていたことを知るのであった。

 本作では、東京で再会を果たした紬と想がよく利用していたカフェ「anea cafe matsumizaka(アネアカフェ松見坂)」や「世田谷代田駅」、紬のアルバイト先である「タワーレコード渋谷店」などがロケ地となった。通常のテレビドラマでは、それぞれのシーンを理想通り撮影するためにドラマの設定上の場所と実際の撮影場所の距離感は必ずしも一致しないことがほとんどで、東京のシーンに見せかけて千葉で撮影する、などといったこともしばしば。また、ロケ地が特定できるような駅名や店名はドラマ内で明かされないことも多い。

 しかし、『silent』ではそれを逆手に取り、紬や想が利用する駅が世田谷代田駅であることをはっきりわかるように映像で映し出した。また紬がタワーレコード渋谷店というアイコニックな場所でアルバイトをしている設定にし、キャラクターにより親近感を感じさせた。紬が働く渋谷から、カフェがある神泉駅までは京王井の頭線で1駅というリアルな距離感であることから、紬や想がこうして東京で暮らしているのかもしれないと想像をかき立てられる。

■『花より男子』&『花のち晴れ~花男 Next Season~』(ともにTBS系)

 裕福な家庭の子ばかりの名門高校・英徳学園に、庶民ながらも通う牧野つくし(井上真央)。だが、学園には学校を牛耳る御曹司軍団「F4」がおり、ある事件をきっかけにつくしを目の敵にするのだった。
そんな中、F4のリーダー・道明寺司(松本潤)は次第につくしにひかれていくように…。

 『花より男子』で象徴的なロケ地といえば、道明寺がつくしとのデートの待ち合わせ場所に選んだ「恵比寿ガーデンプレイス」の時計広場だろう。雨の中、ずぶぬれになりながら健気につくしを待つ道明寺の姿が印象的だった。同時に、道明寺がつくしを誘ったときの「恵比寿ガーデンプレイス時計広場13時!」という台詞も話題に。この台詞はのちに『花より男子』の新シリーズとしてドラマ化された『花のち晴れ~花男 Next Season~』の中でも、英徳学園で“庶民狩り”をする「C5」のリーダー・神楽木晴(平野紫耀)の台詞として再登場しファンを喜ばせた。

 国民的大ヒットドラマの名台詞にもなったことから、恵比寿ガーデンプレイスの時計広場は待ち合わせやデート場所に選ばれることも多く、SNSでも『花より男子』とかけた同スポットの投稿が多く見かけられた。

有名な観光スポットでも撮影!

■『有閑倶楽部』(日本テレビ系)&『アタシんちの男子』(フジテレビ系)&『ヤマトナデシコ七変化』(TBS系)

 超セレブ高校生が集まる「有閑倶楽部」のメンバー6人がそれぞれの才能を武器に事件解決に挑む『有閑倶楽部』、1億円の借金を抱えるホームレスの少女・千里(堀北真希)が突然6人の男性とお城で暮らすことになる『アタシんちの男子』、容姿にコンプレックスを抱き、孤独と暗闇の世界でしか生きられない体質になってしまったスナコ(大政絢)が下宿先で超美形の3人の男性と暮らす『ヤマトナデシコ七変化』。どの作品も漫画原作であり豪華絢爛(けんらん)な建物が登場することから、群馬・吾妻郡高山村の「ロックハート城」が撮影場所として選ばれた。

 ロックハート城は、スコットランドより移築・復元された歴史ある本物の城である。その美しい見た目から、映画・ドラマ・CMなどの撮影場所に度々登場。前述の『アタシんちの男子』や『ヤマトナデシコ七変化』では、イケメンたちとヒロインが住む家として使われ、「豪勢な家に美男子たちと暮らす」という物語が人気を博した。一方、『有閑倶楽部』ではセレブ高校生たちが通う聖プレジデント学園として使用され、城の華々しさがドラマを彩った。


 ロックハート城は一般にも解放されており、場内見学やプリンセスドレス体験(城の中でドレスを着て記念撮影をするフォトプラン)ができることから、SNSでも人気のフォトスポットとなっている。

■『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』&『この恋あたためますか』(ともにTBS系)

 『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』の主人公で、普通が1番と考える奈未(上白石萌音)は、ひょんなことからファッション誌の編集部で働くことに。そこでは、普通とかけ離れた華やかでハードな仕事が待っていた。そんな中、カメラマンの潤之介(玉森裕太)と徐々にいい雰囲気に。いつしか奈未は恋にも仕事にも一生懸命向き合うようになる。

 作品全体を通して目黒川沿いが登場した『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』。特に目黒川にかかる「なかめ公園橋」は奈未と潤之介の出会いの場でもあり、作品の鍵となるシーンの多くがここで撮影された。作中ではペンキが塗りたての白いベンチに奈未が腰かけてしまうシーンがあるが、これは撮影のために用意されたもの。実際のなかめ公園橋にはベンチがないので、訪れる際には念頭に置いておきたい。

 また、なかめ公園橋は『この恋あたためますか』の最終話で、主人公の樹木(森七菜)と拓実(中村倫也)が抱き合った場所でもあり、昨今のドラマでも人気のロケーションだ。洗練された雰囲気や、背景の川と木々がストーリーをドラマチックに盛り上げる。

 すでに多くの人々に愛されているスポットがロケ地になることもあれば、日常に溶け込む些細(ささい)な場所がドラマに登場することで“特別な場所”に変わることも。
現在放送中の『忍者に結婚は難しい』(フジテレビ系)では、蛍(菜々緒)と悟郎(鈴木伸之)が仲直りのために予約したレストランとして、筆者もなじみの代官山のフレンチレストラン「COTEAU.(コトー)」が登場した(※2023年2月末日で営業終了)。撮影地を調べ、作品を見るだけでなく実際に好きなドラマのロケ地を訪れて、物語の世界観にどっぷり浸かるのも楽しいだろう。(文:Nana Numoto)

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