2022年12月開催のライブ「ひなくり2022」で、約5年半在籍した日向坂46の活動を終了した宮田愛萌。活動中「ぶりっ子」「あざとい」キャラで愛された彼女は今、卒業後の生活を謳歌(おうか)している。

2月28日には初の著書となる小説集『きらきらし』(新潮社)を出版。この先「本」に関わる仕事に携わりたいと強い意欲を示す彼女の表情は明るく、希望に満ちていた。

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■書きたい思いと小説集のオファーが重なり「運命」を感じた

 宮田の著書『きらきらし』は、自身が高校時代に魅力を感じ、大学でも熱心に研究したという日本最古の歌集『万葉集』をモチーフとした連作短編小説集で、担当編集者が「作品づくりのため、本文には書かれていない登場人物の名前の由来、年表などの裏設定もつくり込んでいた」と明かすほどの力作に。万葉集の都・奈良で撮影した自然体の撮り下ろしカットも収録。無邪気な笑顔から大人びた表情まで、アイドルとしての最後の姿を切り取っている。

――過去に、恋愛小説アンソロジー『最低な出会い、最高の恋』へ短編を寄稿した経験もある宮田さん。今回は小説集として全5篇収録の1冊を手掛けましたが、そもそも執筆へ至ったいきさつは?

宮田:ずっと「書きたい」という思いがあったからです。文章を書くのが好きでしたし、ファンの方からも「愛萌ちゃんの書いた作品を読んでみたい」という声があったので、意欲はあったんです。その思いから、スタッフさんに「小説を書きたいです」と自分から伝えた時期に、偶然、小説集のオファーを頂いて。タイミングが重なったのは運命を感じました。

――奇跡的だったんですね。全編にわたり『万葉集』の句をモチーフにした理由は?

宮田:元々、『万葉集』は高校時代に参加した出身大学のオープンキャンパスで出合って、大学時代にも研究したテーマだったので、モチーフにしたら面白いかなと思ったんです。
『万葉集』の和歌から空想の物語を考えていたこともあったし、内容が決まっていない段階の打ち合わせで「和歌をもとにするのはどうですか?」と提案して、そこから『万葉集』に発想を広げていきました。

――実際、執筆したのはいつ頃でしたか?

宮田:執筆したのは、2022年の9月~11月頃でした。書くだけではなく手直しもあり、何回も書いては直して…と繰り返して。「このページ数や行数で収めたいけど収まらない」という大変さはあったんですけど、パズルみたいで面白かったし、「この言葉でダメなら、こっちの言葉を使ってみよう」と考えるのも楽しかったです。

■これからも「いつでも文章を書いている」と思う

――生みの苦しみもありそうですが、楽しんでいたとは意外です。

宮田:ずっと楽しかったです。自分だけで文章を書いているときは「これはどういうことですか?」と聞かれることもないし、打ち合わせでダメ出しされても「こんなに私の作品を読んでくれている人がいるんだ」と感動して(笑)。打ち合わせの日が待ち遠しくて「それまでに作ろう」という気持ちで取り組んでいましたし、執筆前にはプロットを何本も書いて「これだ」と思うものを編集者の方に送っていました。

――宮田さんにとって、小説家は天職なのかもしれませんね。

宮田:そうかもしれません。でも、苦しさで言えば…。集中するために、自宅ではなくシェアラウンジで書いていたんですけど、ドリンクが飲み放題、お菓子が食べ放題だったのでめっちゃ太りました(笑)。
執筆期間は昼から夜にかけて、飲んだり食べたりしながら書き続ける毎日でした。

――努力の証しです(笑)。読んでみると描写がリアルで、特に、登場人物の大学生活を描いた「紅梅色」から感じられました。実際に大学へ通っていた宮田さん自身の経験が反映されていたのかなと。

宮田:実体験に基づく作品でした。執筆にあたり、出身大学で行われた卒業生がキャンパスへ足を運べるイベント「ホームカミングデー」に参加したんです。実際に構内を撮影したり、「主人公はここに座っていて」と想像しながら教室で座ったりしました。細かな設定を考えるのが好きで、参考のために過去の自分の時間割を引っ張り出して、作品では描かれない主人公たちの時間割も考えました。

――こだわりがすごい。収録された5篇は恋愛やノスタルジーなど、ジャンルはさまざまですが、全編を通して伝えたかったテーマは?

宮田:古典は「意外と面白い」と伝えたかったし、小説集を通してもっと興味を持ってもらえればと思いました。物語の中で、名著や文豪の名前、図書館で本を選ぶ場面も出てきますけど、『万葉集』の魅力はもちろん、ところどころに「本」のエッセンスも盛り込んだので「本は面白い」と思ってもらえたらうれしいです。

――そうした思いを込めた1冊で作家デビューとなりましたが、今後も「書き続けたい」という意欲は?

宮田:書けるのであれば、書きたいです。
でも、小説に限らずいつでも私は文章を書いていると思いますし、「書くこと」自体をやめずにずっと継続していきたいと思っています。

■「ひなくり2022」の翌週に司書採用試験を受験するも…

――ファン“おひさま”の前で卒業あいさつをした日向坂46のクリスマス公演「ひなくり2022」の最終日(2022年12月18日)から約3ヵ月。卒業後の生活は?

宮田:舞台をたくさん見ています。グループ時代は急にお仕事が入り、お休みがなくなってしまうときもあったんですけど、スケジュールが立てやすくなったので、プライベートの予定もたくさん入れています。ネイルにもこだわるようになり、爪をキラキラにして楽しんでいます。自由な時間では、読書の時間も増えました。

――時間の使い方が変わった一方、変わっていないこととして、グループ時代の「ぶりっ子」「あざとい」キャラは健在ですか?

宮田:そもそも「ぶりっ子」「あざとい」と言われはじめたのは、中学時代からなので変わらずです。当時、友達から「愛萌って、すごいぶりっ子だしあざといよね」と言われてから、「私って、そうなんだ」と思うまま生きてきたので。だから、アイドル時代もみんなから言われるたびに「その通り」と思っていました(笑)。

――いさぎよいです(笑)。かたや、大所帯のグループから独り立ちして、日常生活での変化は?

宮田:ペンケースに入れる筆記用具が、1本ずつになりました。グループ時代は、番組のアンケートやメモが必要なときに、忘れたメンバーへ貸すためにシャーペンやボールペン、消しゴムを2個ずつ持っていたんです。
でも、貸す人がいなくなったので本数を整理しました。

――変化がよく分かります。さて、今後の活動も気になりますが、現時点ではどのような将来を思い描いていますか?

宮田:「本」を軸にして、私にできることがあればいろいろと挑戦していきたいです。どのように「本」へ関わるかは分からないんですけど、小説のように書けるのであれば作品を書きたいと思っています。それだけではなく、例えば出版社への就職も選択肢の1つです。実は、大学で取得した司書の資格を生かしたいと思い、学校図書館の採用試験も受けたんです。まあ、落ちてしまったんですけど…(苦笑)。

――驚きです(笑)。具体的にいつ採用試験を受けたんですか?

宮田:「ひなくり2022」の翌週に面接を受けました。面接官の方は、事前に知り合いの方から私がアイドルだと聞いていたみたいで「すみません。よく知らないんですけど、アイドルなんですか?」と質問をいただき、「実は…」と返しました(笑)。

――(笑)。
でも、落ちてしまったのは残念ですね。


宮田:後日、いろいろなミスが発覚したので、結果は仕方なかったなって。これから自分にできることを探していこうと思います。

――先ほど「出版社への就職」も、選択肢にあげていました。

宮田:出版社だけではなく、本屋さんにも興味があります。大学時代に司書の資格を取得するため、出版の流通や雑誌の編集について学んだこともありますし、いろんな人に本を届けていきながら、本に関わって生きていきたいです。

――夢は広がるばかりですね。ファンの皆さんには、この先の宮田さんをどのように見守っていてほしいですか?

宮田:本を読む準備をしておいてほしいです。私が薦める本をためらいなく読めるように、文章に慣れてもらえるならと思います。でも、こう言っていますけど、そんなに気負わなくても大丈夫ですし、それぞれの人生もあるので「一生応援していこう」とは思わず、私自身を数ある「娯楽」の1つとして楽しんでいただければと思います。

(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:山田健史)

 宮田愛萌の小説集『きらきらし』は新潮社から発売中。価格は1980円(税込)。

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