現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』で、松本潤演じる徳川家康を支え“徳川四天王”の一人と言われた井伊直政を演じている板垣李光人。これまで数々の作品で描かれてきた直政にはいろいろな逸話があるが、脚本を担当する古沢良太が描く直政像をどのように捉え演じているのだろうか――。
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■直政ならではの狂気を意識
板垣演じる直政(幼少期は虎松)は、一度は家康を暗殺しようとした人物。しかし、その後家康に取り立てられ、徳川家にはなくてはならない存在として“徳川四天王”と呼ばれ、家康には心強い存在となる。
「直政の登場は第15回『姉川でどうする!』なのですが、四天王のなかでは、40代前半で亡くなってしまうので、その生涯は非常に凝縮されています。その意味で、とてもスピード感がある人生なので、そのあたりは意識しています」。
脚本の古沢が描いた直政は、頭の回転が速く女性にモテる武将。プライドが高く、不遜な物言いのため、家臣団のなかでもトラブルを引き起こすという、ある意味で際立った存在だ。
「万千代と呼ばれる時代があって、その後直政という名に改名したとき、家臣団がそろうシーンでモニターを見ていたのですが、直政一人だけ異様に白かったんです。そのとき直政の特徴は『これだ!』と思いました。平八郎(山田裕貴)の炎のような熱さとは違う直政の狂気みたいなものを意識したら、キャラクターとして面白くなるんじゃないかなと思ったんです」。
個性的な家臣団のなかで板垣がつかんだ直政像。それは第32回「小牧長久手の激闘」で大きなインパクトを与えた。
「直政にとって、小牧長久手の戦いは出世の大きな一歩になった戦い。
■松本潤は「背中を追いかけていきたいなと思う存在」
徳川四天王と呼ばれた酒井忠次(大森南朋)、本多忠勝(山田裕貴)、榊原康政(杉野遥亮)、井伊直政。直政は昔から家康に仕えていた武将ではない。松本演じる家康ともある意味で、他の家臣たちとは違う距離感がある。
「命を奪おうとしたという過去があるからこそ、より殿への思いは強いのかなと思います。松本さんは、とにかくすごい。俳優として現場に立っているだけではなく、セット全体のステージングにまで意識しています。こういう動きをつけたら、映像としてどういう効果があるのか……みたいなところまで考えている。いろいろなステージを経験されているからこその視点だと思います」。
主演俳優として演技をするだけではなく、俯瞰で作品全体を見る目。板垣自身もそんな松本に大きな影響を受けているという。
「僕自身も自分の演じるキャラクターの色分けみたいな部分は意識していますが、作品全体として直政がどういう立ち位置にいて、どういう動きをすれば効果的なのかというところまで、なかなか意識は及ばない。
■歴史上の人物を演じるうえで大切にしていることとは
斬新な発想で歴史を解釈している古沢脚本。直政についても、感じることがあるという。
「万千代の時代から、かなり自由度は高いです。あの時代は身分の違いというのは絶対だと思うのですが、それを打ち破れるキャラクターとして描いていただいているので、結構自分で考えていろいろとチャレンジさせていただきました。余白をたくさん作ってくださっているので、自由に暴れることができました」。
赤鬼と恐れられた直政だが、劇中では、コミカルでハートフルな直政も描かれている。象徴的なのが、ムロツヨシ演じる豊臣秀吉の母・仲(高畑淳子)とのやり取り。仲は、イケメン直政を気に入るのだ。
「仲さんにお餅を『あーん』としてもらうシーンがあるのですが、そのお餅がとにかく硬くて(笑)。ずっとモグモグしているのですが、全然飲み込めなかったんです(笑)。
板垣にとって『花燃ゆ』(2015年)の吉田寅次郎の幼少期、『青天を衝け』(2021年)の徳川昭武以来、3度目の大河ドラマ出演となった。どの作品でも歴史的に著名な人物を演じた。
「役作りをする前に、お墓に行ってご挨拶させていただきました」と振り返る板垣は、大河ドラマのように、歴史に基づく作品を演じる楽しさについて「歴史という正解が1つあるなかで、脚本家さんが、どう解釈して描くのかというのが、とても興味がある」と話す。『どうする家康』について「時代劇ではありますが、現代的な要素を盛り込みつつ、共感しやすいように描かれている。その解釈をどう説得力を持たせて演じるか。そこが面白さの一つだと思います」と語っていた。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
大河ドラマ『どうする家康』はNHK総合にて毎週日曜20時放送。BSプレミアム、BS4Kにて18時放送。