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「ヴァイブレータ」「やわらかい生活」の鬼才・廣木隆一がメガホンを執り、荒井晴彦が実娘・荒井美早と共同脚本を務めた本作。寺島は同2作でも主演しており、勝手知ったる仲。「今回、引き受けたのも荒井さんと廣木さんだったから。知らない監督さんだったら、できる自信はなかったと思う」と率直に語る寺島。それはやはり本作の厳しい内容ゆえと思いきや、理由は違うところにあった。
「内容に関しては、このメンバーだったらなんとかなるだろうと思っていたんです。ただ産後すぐだったのでこの分量をやるわけだし、この状態を分かってくれる組じゃないと無理だと思ったんです。体力的にも精神的にも自信がなかった。だから廣木さんには、できないかもってメールしたんです」。
廣木監督作はもちろん、「赤目四十八瀧心中未遂」や「キャタピラー」など肝が据わっていなければできない役柄に果敢に挑戦してきた寺島。廣木監督はそうした寺島の性格を知った上で、「辞めてもいいんじゃん」と軽く返してきたのではないだろうか。そのほうが、寺島が乗ってくると踏んで。「そうかもしれない(笑)。それくらい私を知ってるからね。でも、そもそも俺たちの頼みを断るわけがないって思ってたんだと思いますよ(笑)」。
「でも本当にあの時期は、これだけの分量をやるとどういう状態になるのか、自分で分からなかった。
恵を演じていて「楽しかった」という寺島。「自分の中でも何がホントで嘘なのか分からなくなってきちゃって。
とはいえ、そのお金とは、騙した男たちから巻き上げたお金だ。「でも彼女にとっては、お金もあるしねっていう感覚なんですよ。殺しているところはすっとばしちゃっているのかも」。そうかもしれない。だが恵はただの壊れた女性ではなく、抱えている過去がある。「そこが大変だったんですよ。そこがなければね。バックに宗教という壮大なテーマがあるからそこは無視できない。お父さんとの関係が根っこだから」。
恵の部屋には、常に禁断の果実が象徴的に飾られている。「恵は、あるときにから死んじゃってるんですよ。今ある自分はまったく新しい自分だと思っている。それをいつも傷口に塩を塗るじゃないけど、その果実を置いておくことで意識しているんではないかと思っています」。
やるなら全力でやりたいと語った寺島。その姿勢は台本への取り組みにも表れている。「監督と話し合いを重ねながら、かなり変えました。それを荒井さんも納得してくださって、恵の感情的にも落ち着くところに着地しました」。
なぜ男たちは恵に騙され、自らお金を差し出したのか。なぜ恵は自分を愛した男たちを殺さなければならなかったのか。「廣木さんの編集にかかってるから」と冗談交じりに笑う寺島。だが、次のような言葉も残してくれた。
そして視聴者に次のようなメッセージを送った。「全4話ですが、1話目で捕まっちゃいますからね。構成はかなり斬新ですよね。ぜひ食いついて観続けてください」。(取材・文・写真:望月ふみ)
「ソドムの林檎~ロトを殺した娘たち」は、3月23日(土)よりWOWOWにて全4話、毎週土曜22時放送。<第1話無料再放送は30日(土)11時>