2016年の映画界は、新海誠監督最新作『君の名は。
』の大ヒットに沸いた1年だった。さらには『聲の形』『この世界の片隅に』など質の良いアニメーション映画が続々と登場。しっかりとヒットに繋がるなど、アニメが日本映画界になくてはならない存在として、多大なる影響を与えた。そこで“アニメ大豊作”の1年を振り返ってみよう。

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 8月26日に封切られた『君の名は。
』。12月時点で興行収入は200億円を突破し、邦画の歴代興収ランキングでは『千と千尋の神隠し』に次ぐ第2位となった。街へ出かければ誰かが『君の名は。』の話をしているほどの社会現象を巻き起こした。

 新海監督は、『秒速5センチメートル』(07)で熱烈なファンを生み出し、アニメ好きには知られた存在であった。美しい風景描写には監督のもの作りに対する真摯な姿勢がひしひしと現れているし、作品に共通して流れる「距離や隔たりがありながらも、なんとかして届きたいと手を伸ばす」登場人物の姿も人々を惹きつけた。


 『君の名は。』ではそのような“新海ワールド”を持ち続けながらも、感動と希望に満ちたラストなど、これまで以上にエンタテイメント性を突出させていたのが印象的だ。作品世界とマッチしたRADWIMPSの楽曲、声優陣の好演などヒットの要因と考えられるものも多いが、誰もがこれほどまでに膨れ上がるとは予想していなかったはず。まさに化け物級のヒットを成し遂げた今、次に新海監督が生み出すものに、大いに注目が集まる。 そして『君の名は。』の大ヒットにより、9月17日公開の『聲の形』、11月12日公開の『この世界の片隅に』には、公開前から良い風が吹いていたように思う。
「普段、ジブリ以外はアニメをあまり観ない人」にとっても、「アニメを映画館に観に行く」ということが自然な流れとして受け入れられたのではないだろうか。

 『聲の形』は、大今良時によるベストセラーコミックを『けいおん!』で知られる京都アニメーションの山田尚子監督がアニメーション映画化したもの。原作からばっさりとカットしたエピソードもありながら、若者たちの葛藤、ひたむきな姿が突き刺さるなど山田監督の手腕が炸裂。興収は22億円を突破した。

 『この世界の片隅に』は、こうの史代の原作を片渕須直監督が6年以上を費やして映画化した渾身作。主人公すずを演じたのんの柔らかで温かな演技も素晴らしく、戦時下の人々が同じように笑い、泣き、日々を生きていたことに胸が熱くなる傑作だ。
口コミも広がり、公開週を重ねるごとに動員ランキングの順位を上げるなど異例の大ヒットとなった。また、漫画原作のアニメ化という意味では、中村明日美子の原作を劇場アニメ化し、男子高校生同士のピュアな恋愛を描いた『同級生』が人気を博したことも忘れがたい。

 声援やコスプレOKの「応援上映」という形態が盛り上がったのも今年の特徴的な動きだ。とりわけ『KING OF PRISM by PrettyRhythm』略して『キンプリ』の応援上映は、異様な盛り上がりを見せた。驚きの統率力で歓声を上げ、サイリウムを振り、映画と観客が一体に!そこでしか体験できない、スペシャルな時間を生み出すことに成功した。

 『キンプリ』の大成功を受け、ますます「応援上映」も広がりを見せるはず。
『ガールズ&パンツァー 劇場版』や『劇場版 艦これ』を爆音で上映する「爆音上映」も話題となった。アニメファンにとっては、より深く「映画館でアニメを観る意義」を追求した1年だったと言えそうだ。2017年も、趣向を凝らした企画上映が増えることに期待したい。