ドラマ『銀と金』の実力派キャストが話題になっている。主人公の森田鉄雄扮する池松壮亮、フィクサー「銀王」を演じるリリー・フランキー、警視庁OB安田役のマキタスポーツ……。
そんな濃いメンバーのなか、切れ者の元東京地検特捜部検事として暗躍する船田を演じているのが村上淳だ。数々の作品で光る演技を見せる村上に、本作の魅力や自身の仕事へのスタンス、同じ道を選んだ息子・村上虹郎への思いなどを聞いた。

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 名前を見ただけでワクワクするようなキャストがそろったドラマ『銀と金』。原作ではあまり登場シーンが多くない船田という役に「僕は小説でも漫画でも、原作からヒントをもらうという作業は一切やらないのですが、自由度が高い役柄だなと思いました。(古厩智之)監督も初期の設定を急に変えてきたし、こっちも色々とアイデアを出せる現場でしたね。村上淳として船田を楽しんでいるという図式だったのですが、出来上がりを見て船田が生き生きとして見えたので、良かったなと思っています」と手ごたえを感じているようだ。

 “自由度が高い”演技を披露できるのは、現場の雰囲気にもよるという。「芝居は一人でやっているわけではないので、共演者が許容してくれなければできない。その意味で、池松くんやリリーさんは非常に良いムードを作ってくれましたね」と共演者に感謝する。村上の言葉通り、劇中、キャラクターたちが動くことにより物語が進んでいくので、非常に感情移入しやすい。「それって何かを生み出そうとする人たちが集まっているからなんですよ。映像なので、カメラに対して芝居するのは宿命なのですが、でも今回のメンバーは(人と人が向き合う)横の芝居で進めようとする人たちばかり。
すごく魅力的なメンバーでしたね」。

 質の高い作品に出演している印象が強い村上だが「全然作品は選んでないんです。基本的にはお話をいただいた順なんです。唯一自分で決めていたことは、20~30代前半までは縫わない(作品の撮影が重ならない)ことぐらい」と意外な発言。続けて「あとは、生意気な言い方に聞こえるかもしれませんが、自分が参加することによって、作品自体のパワーアップに繋がらなければ意味がないなという思いは常に持っています。そうじゃなければ、今後50歳、60歳の俳優人生が見えてきませんからね。引き受けた仕事に関しては『この役はちゃんと成立させましたよね』という以上のものを目指して臨んでいます」と仕事へのスタンスを語ってくれた。

 もう一つ村上が強く実感していることは「作品は一人でも多くの人に見てもらうこと」だという。規模の大小を問わず、村上が何度も舞台挨拶に足を運んでいる姿をよく見かける。「伝えるためには、なりふり構っていられないですよね」と笑う。いいものを作る、そして多くの人に見てもらうというシンプルな発想だが、ものづくりへの熱意が伝わる。 20年以上の俳優生活。
その姿を息子・村上虹郎が追っている。「他は大反対していましたが、僕自身は俳優になることを勧めたんです。俳優を特別だと思っている奴は大嫌いなのですが、特殊な職業だと思うんです。最初に彼に言ったのは、頭でっかちになってわかったふりをするなってことですね。俳優になって違う人格になり切ったとき、本当の自分が見えてくるんじゃないかなと思ったんです」。

 デビュー後、虹郎は第90回キネマ旬報ベスト・テン「新人俳優賞」など好評価を受けているが「彼が特別すごいとは思っていません」ときっぱり。「俳優をやっていれば、順番ってきっとめぐってくるんです。回ってきたときに準備をしたのでは遅いんです。大事なのは、来るべき時のために準備をすること。そのためには引き受けた仕事をしっかりまっとうすること。そうじゃないと、すぐに新しい人が出てきて順番はいってしまう。キネ旬3連覇ぐらいしたらすごいですけれどね」と愛のあるエールを贈っていた。


 さらに「息子に限ったことではないですが、若い世代に対して思うことは、彼らの希望でありたいし、彼らをねじ伏せたいんです」と心情を吐露する。真意を問うと「今回『バイプレイヤーズ』というドラマにも出演させていただいたのですが、出演者(遠藤憲一大杉漣田口トモロヲ寺島進松重豊光石研)がすごいじゃないですか。僕が若いころに出会ったとき、背中が遠かったのですが、いまさらに距離が広がっていると感じるんです。自分も早いペースで走っているつもりだったけれど、彼らの一歩はさらに広い。悔しいな、ねじ伏せられたなって感じたんです。だから若い世代に対して、僕らもそういう存在でいたいなって思うんです」と胸の内を明かしてくれた。(取材・文・写真:磯部正和)

 ドラマ『銀と金』は、テレビ東京系にて毎週土曜24時20分放送、ドラマ24『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』はテレビ東京系にて毎週金曜24時12分放送。
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