「やっとここに来たか、という感じ」。そう現状を分析するのは、女優の吉岡里帆だ。
昨年はNHK連続テレビ小説『あさが来た』に出演、今年の1月期のドラマ『カルテット』の悪女役は大いに話題を呼び、テレビCMにも多数出演中。放送中の新ドラマ『ごめん、愛してる』ではヒロインを務めている。言葉通り八面六臂の活躍を見せる彼女に、芝居への想いや、抱き続けている夢について話を聞いた。

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 『ごめん、愛してる』で吉岡が演じるのは、自分を捨てた母親の愛を探し求める主人公・岡崎律(長瀬智也)に惹かれる純粋なスタイリスト・三田凜華だ。怪演が好評を博した『カルテット』を振り返りつつ、「嫌われ者をやっていた時とは全然違うメッセージをもらうんです。どっちもうれしいんですけど、やっぱり、素直にキャラクターを応援してもらえるっていうのはうれしいことだなと思っています」と反響を明かす吉岡。また、「すごく空回りする不器用な子なんですけど、その感じはすごくわかるし、一生懸命がむしゃらにやればやるほど、自分の首を絞める(笑)。わかるな~って思いながら台本を読んでます」と凜華への共感を語る。

 共演する長瀬の演技については「すごく丁寧で繊細」と評し、「自分の役をやり切るだけでも大変なはずなのに、自分の役だけを見ずに、周りのキャラクターたちを理解しようと話されてるなって、現場で思うんです。私のこともそうですが、もちろん坂口健太郎君のサトルも、大竹しのぶさんの麗子さんも、みんなのことを考えてらっしゃるということに、すごく惹かれますね」とその人柄も絶賛。

 親子の関係が軸をなす物語に絡め、幼少期の思い出を聞くと、「父が自営業をしているのもあって、ほかの子供たちみたいに週末に一緒に遊んだりとかはできなくて。その分、すごくたくさんの映画を一緒に見ました」と回想する。
また「あらゆる芸術を父と母は見せてくれて、夢見ることを教えてくれたのかなと思っています。“いつでも、現実に起こらないはずのことが、自分次第で動き出すよ”っていうことを教えてくれた。だから今、私はこの仕事に挑戦できているような気がするんです」と感謝の気持ちを語る。 いまや多くの作品に引っ張りだこな吉岡だが、街中では全く気付かれないとのこと。「本当にオーラがないんだなと思うんです(笑)」と自嘲する彼女に、“のぶちゃん”役で好評を博した朝ドラ出演後からの約1年を振り返ってもらうと、「大きく拍手してあげられることはないです」と辛口に自己評価。「やっとここに来たかっていう感じというか。ものすごく速いんだろうけど、気持ちとしてはまだ遅くて、もっともっと速く、もっともっと能力を上げてかないとって、毎日思ってますね」と直向きな向上心をのぞかせる。

 映画・ドラマ・CMへの出演、そして写真集の発売など、着実に成長してきた彼女の原動力になっているのは、初めて芝居に挑んだ舞台『吸血姫』(作・唐十郎)での経験だそう。「『吸血姫』を東京で公演する。しかも、その主演を務めるっていうのが、ずっと抱いている夢かもしれないです。あの時の感動が今も私の原動力になっていて、あの瞬間を味わえるなら、ずっとできると思うので」と語る表情は、キラキラとした輝きに満ちていた。魅力的な柔らかい雰囲気を持つ一方で、内に秘める芝居への思いは揺るぎない。
果たして彼女は、女優としてどんな進化を遂げていくのか? 吉岡里帆の今後に注目だ。(取材・文・写真:岸豊)

 日曜劇場『ごめん、愛してる』は、TBS系にて毎週日曜21時放送。
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