元SKE48で、一時は乃木坂46にも参加してアイドル界で一世を風靡(ふうび)し、現在は女優でタレントの松井玲奈が好調だ。10月から始まったNHK朝ドラ『まんぷく』では、安藤サクラ演じるヒロイン・福子ら仲良し3人組の1人、鹿野敏子役を務める。
育ちの良いお嬢様で、福子を包み込むような心の広さを持ちながら、はっきりと物を言う敏子を好演。さらに小説家デビューも果たし、アイドル界のみならず一気に全国に知られる存在になりつつある。まさしく、これから旬が来るのではないだろうか。松井の好調の理由を探る。

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 松井は2008年に名古屋に新設されたSKE48のオープニングメンバーオーディションに合格し、アイドルとして芸能界デビューを飾った。まもなくSKEでは松井珠理奈と並び“W松井”として人気を博し、プッシュされた。同じ松井でも、少年っぽい珠理奈とお嬢様っぽい玲奈は、ルックスのほかにもさまざまな面で対象的だった。珠理奈が最年少でAKB48の10thシングル『大声ダイヤモンド』に11歳で選抜入り、PVでもメインキャストで、音楽番組出演時もセンターポジション、さらに単独ジャケット写真も飾り、派手な売り出し方をされる中、6歳上の玲奈は、そんなふうにトップスピードで走り続ける珠理奈を隣で見守りつつも、好対照なライバルとして地道に人気を積み上げていった感がある。

 「48グループといえば握手会ですが、よくファンの間で言われたのは、とにかく対応の良さですね。しっかり目を見つめて話すのはもちろん、10秒程度というわずかの時間で、ファンが期待しているコメントを読み取って会話してくれるというのです。頭の回転が良い証でもあるでしょう。緊張してガチガチに固まってしまったファンのことも、やさしく励ますように手を握って、言葉を待ってくれるそうです。
彼女と握手するために半日待つファンも多かったと聞きます」と話すのは、アイドル誌の40代男性編集者だ。それだけ対応が良ければ、確かに今後もこの子を推そう! と思うだろう。本人は、なかなかの努力の人だったということでもある。

 「アイドル時代、もともとアニメや漫画のオタクだとカミングアウトしていましたが、仕事を通して鉄道オタクとなったことも有名です。知識面での勉強をはじめ、その“没入”ぶりは、ガチの鉄オタたちも認めざるを得ないほどでした。中途半端なことはせず、やるときは徹底的にやるという姿勢が見て取れます」と、地上波放送局の40代男性プロデューサーは話す。 「売れる売れないには運がつきものですが、そうは言ってもやはり、売れるべくして売れる子、またはその逆、というのはあります。売れる子には、それなりの売れる理由があるんです。松井玲奈は練習などでも先生からの指示などきめ細かくメモを取って、家できちんと復習してくる。努力に嘘のないメンバーだったと思います」と話すのは、元48グループのスタッフの、芸能プロダクション関係者だ。

 前述のファンに対する対応の良さと相まって、業界内でもその真面目な姿勢ゆえに好感を持たれているようだ。順調に芸能界を歩んでいる要因と言えそうだ。


 そして最近では冒頭の『まんぷく』で全国区に名前と顔が知られつつあるように、その存在感を増しているわけだが、これまで常に新しいことに果敢に挑戦してきたことが経験の豊富さにつながり、実を結んできているのだろう。

 今月17日発売の小説誌「小説すばる」(集英社)では、短編小説『拭っても、拭っても』で小説家デビューを飾った松井。過去の恋愛でトラウマを抱えたアラサー女性が主人公。小さくても確かな希望を持って、前を向くまでの物語となっている。小説を書くことは、日々いろいろなことにアンテナを張って生活することでもあり、これもまた、芝居にもフィードバックされてくるかもしれない。

 なんにでも挑戦する方針が今、実を結びつつあるようだ。(文:志和浩司)
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