【写真】『母と惑星について、および自転する女たちの記録』田畑智子インタビューフォト
「私自身が昨年結婚(夫は俳優の岡田義徳)して子どもを産みましたので、稽古をやっていても前回とは違う気持ち。舞台上での在り方や女性としての厚みが、さまざまな人生の経験を経てちょっと変わったのではないかなとは思います」と、2度目の長女・美咲役に手応えを感じている様子の田畑。今回は芳根京子が姉妹の三女・辻シオ役で舞台初主演、母親の峰子役はキムラ緑子で、芳根ともども初めて同作に出演する。次女・優役には初演時に第24回読売演劇大賞の最優秀女優賞に輝いた鈴木杏がキャスティングされ、田畑と共に続投となる。
「台本も舞台のセットも初演と同じですが、家族が新しくなったので、いったんリセットして新たな気持ちで演じなきゃと思います。娘たちが日本を離れてイスタンブールに旅をする、そのなかで自分と向き合ったり、母親の過去と対峙したり、今後の人生について語り合ったり。劇場に入ったら、スケッチブックや絵本を開いて物語を読んでいるような感覚になるんじゃないかな、と思います」。
結婚と出産を経て人としての厚みが増したと語る田畑だが、演じる美咲は結婚をしない。
「結婚もしないし子どももつくらない、という美咲の気持ちは分かるんです。私も結婚前にそう思っていた時期があって。
「威厳とか伝統を受け継ぐということを幼い頃から言われて育って、長女である姉が悩んでいる姿も見てきました。私は次女なので姉と比べて楽な面はありましたが、それでも『こうしなければいけない』という教育だったので、家も祇園という町も嫌いでした。なんで私、こんなところに生まれたんだろうって」。
しかし、京都を離れて東京で一人暮らしを始めてからは、親への感謝の気持ちが芽生えてきたそうだ。
「NHKの朝ドラでシングルマザーの役をやらせてもらって、役の上とはいえ仕事をしながら子どもを育てる苦労やしんどさが感じられるようになったんです。演技でもこんなに大変なのに、実際お母さんってどれだけ大変だったんだろうと。
いずれは、本作の母親役もやってみたいと意欲を見せる。
「本当は全員の役をやりたいのですが、三女役は年齢的に無理ですし(笑)。次は、何十年か後に母親役を一度やってみたいなと思っています」。
今を生きて、さまざまなことにぶち当たりながらも、一生懸命、前向きに人生を生きようとしている女性が4人。その強さや儚さを感じることのできる好舞台となりそうだ。(取材・文・写真:志和浩司)
『母と惑星について、および自転する女たちの記録』は、3月5日~26日まで東京・紀伊國屋ホールにて上演。その後4月に高知、北九州、京都、豊橋、長崎にて上演。