【写真】諏訪敦彦監督&モトーラ世理奈&渡辺真起子が登壇、『風の電話』第70回ベルリン国際映画祭の様子
プレミア上映では、800席を超える会場が満席の大盛況となり、ジェネレーション部門らしく10代を含めた幅広い年代の観客が集まった。
ティーチインでストーリーをどのように作り上げたのか聞かれた諏訪は、「ハルいう一人の少女の旅を通して、現代の日本のポートレイトを撮りたいと思いました。実際、津波からは9年という時間が経ちました。9年経って見た目にはその傷は見えなくなっているが、人の心にはまだ傷が残っていて、建物を建てかえるように綺麗には出来ないと感じています。実際、その傷がみえなくなっているからこそ、映画の中で様々な時間とというものを見せたり感じさせることが出来るのではないかと感じました」とコメント。
東日本大震災が起きた2011年当時、12歳で小学生だったというモトーラは、「私は20歳になって、この映画の撮影で初めて被災地に行ったとき、自分は12歳の時からすごく変わったけど、被災地は何も変わっていなくて、そのことが衝撃的でした」と吐露。
続けて「私の年代は、震災があったことをしっかり覚えている年齢だけど、学校とか勉強とか友達のこととかで自分のことに精一杯で、今まで震災に対して意識することができていなかったと気づいて、今私たちの世代がそのことに気づくことが大事だと思いました。この映画で、私たちの世代にもそのことが伝わってほしいと思うようになり、それが撮影で日本中を旅することで感じたことでした」と思いを述べた。
ベルリン国際映画祭では、本作の選出理由を「主人公の若い女性の視点から、まだ過去とは言えない日本社会のトラウマとその風景を幅広いキャラクターとストーリーで、繊細かつエモーショナルに描いたロードムービーです。これは、映画がだからできる素晴らしい作品だと思っています。このことを、我々は、ぜひベルリンで称えたい」と述べている。
映画『風の電話』は公開中。