第24回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門最優秀作品賞を受賞したベトナム映画『走れロム』の新公開日が7月9日に決定。予告編が解禁された。



【動画】タブーに切り込みベトナムの闇を照らし出した衝撃作 映画『走れロム』予告編

 ベトナムの新鋭チャン・タン・フイ監督の長編デビュー作となる本作は、賑わうサイゴンの裏町を舞台に、孤児の少年が夢を叶えるため巨額の当選金が手に入る“闇くじ”に挑む姿を、疾走感あふれる映像とリアリズムを追求したタッチで描き出す。庶民の生活の一部となっている“闇くじ”というタブーに切り込み、ベトナムの闇を照らしだした衝撃作だ。第24回釜山国際映画祭のほか、第24回ファンタジア国際映画祭最優秀新人作品賞を受賞するなど世界各国の映画祭で高評価を受けた。

 社会主義国家のベトナムにおいて、顕在化させたくない違法くじを描いたことで当局の検閲が入り修正を余儀なくされた本作は、公開されるとロングランヒット中だったクリストファー・ノーラン監督の超大作『TENET テネット』を興行成績で上回る驚異のヒットを記録。ミニシアター文化のないベトナムで、インディペンデント映画が商業的に成功をおさめるという一大センセーションを巻き起こした。

 過酷な環境下で生き抜く主人公ロムを、監督の実弟でもあるチャン・アン・コアが体現。
『青いパパイヤの香り』『ノルウェイの森』で知られる名匠トラン・アン・ユンがプロデューサーとして参加し、編集はアピチャッポン・ウィーラセタクン監督作品を手がけるタイの名編集者リー・チャータメーティクン、音楽は河瀨直美監督作『朝が来る』のトン・タット・アンが担当。フイ監督が絶対の信頼を置く若手撮影監督のホープ、グエン・ヴィン・フックが、臨場感あふれるカメラワークで登場人物たちを活写する。

 活気に満ちたサイゴンの路地裏にある古い集合住宅。住民たちは投資家を装う詐欺師の債権者から多額の借金を背負い、アパートを維持するため大金が当たる“闇くじ”に熱中している。14歳の孤児ロムは、そこで宝くじの当せん番号を予想し《賭け屋》につなぐ《走り屋》として生計を立てていた。地上げ屋から立ち退きを迫られている裏町の住民たちを救うため、生き別れになった両親を捜すため、巨額の当選金が手に入る危険な違法くじで一攫千金の賭けに出る。


 予告編は、少年ロムが同じ境遇に立つ同業者のライバル・フックと激しく競い合いながら、ホーチミンの狭い路地や大通りを縦横無尽に駆ける姿を疾走感あふれる映像で捉えたもの。そのほか、“闇くじ”に翻弄(ほんろう)される人々の悲哀をにじませた様子もリアルに映し出されている。

 なお本作は、劇場前売り券1枚購入につき、本物の宝くじ(第2504回東京都宝くじ・数量限定)1枚が付く。

 映画『走れロム』は7月9日より全国順次公開。