先日、正式にプロ転向を表明したロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリスト・村田諒太。五輪後、一度はプロ転向を否定して現役引退を示唆していたものの、一転プロ入りを表明した背景には、フジテレビの多大なバックアップがあった。

「どうやら、電通とフジががっちりタッグを組んで村田をフジの子会社に入社させ、フジと太いパイプがある三迫ジムに預ける。フジは4月にアマ7冠の井上尚弥の3戦目を異例のゴールデン全国中継するが、村田と井上の二枚看板で、いずれはW世界戦を視野に入れてボクシングブーム再燃を狙っている。子会社とはいえ、フジの正社員同様の好待遇で迎えるようだ」(スポーツ紙デスク)

 日本チャンピオンになっても、なかなか競技に専念するほどのファイトマネーが得られない日本のボクシング界にあって、村田の待遇はまさに“破格”といえる。だが、こうした待遇がプロキャリアの足かせになる可能性もあるのだという。

「フジや電通が金を出すということは、当然、マッチメイクにも口を出してくることになる。ボクサー村田が話題として“持つ”のは長くても次の五輪までだし、中継番組に“史上最短記録”などといった見栄えのいいキャッチフレーズを付けるためにも、村田はキャリアを重ねるより前の6戦目あたりで世界挑戦させられる可能性が高い。

しかも、その世界戦までに負けさせるわけにもいかないので、骨のある相手との試合も組まれないだろう。プロとしての実力を試されないまま世界チャンピオンに挑めば、結果は見えている」(同)

 では、実際に村田の実力はどの程度なのだろうか? 日本のボクシング史上でただ一人、ミドル級の世界王者を経験した竹原慎二氏は五輪直後、「(プロに転向すれば)日本・東洋太平洋王座は問題なく獲れる。まだ26歳。アマチュアの指導者になるには早いよ」と、その実力に太鼓判を押しているが……。

「五輪金メダリストの技術がプロに入ってもトップレベルにあることは間違いないが、だからといって、すぐに世界チャンピオンになれるわけではない。アマチュア228戦223勝という圧倒的な成績でバルセロナ五輪を制し、プロでも6階級制覇を成し遂げたオスカー・デ・ラ・ホーヤ(米国)でさえ、最初のベルトまで12戦を費やしている。

特に、本場米国ではミドル級近辺の有力選手はプロ志向が強く、五輪予選に出場せずにプロ入りする傾向にある。村田にとって都合がいいのは、日本ボクシングコミッションが従来のWBA、WBCに加えて、WBOとIBFも世界王者の認定団体として公認し、加盟したこと。これでターゲットとなる“世界王者”は2人から4人になり、選択肢は広がった」(専門誌記者)

 17階級4団体、計68人の世界王者が乱立するプロボクシングの世界では近年、チャンピオンベルトの有無や本数より、実力者同士の好試合にこそ注目が集まるようになってきている。TBSと亀田家のような安易なベルトコレクションに走らせるか、真の実力を蓄えて1試合で数十億円が動く本場ラスベガスでも通用するような選手に育て上げるか、ボクシング界の“至宝”はフジテレビと電通に託された。