夜の晴海埠頭と聞いて、人は何を思い浮かべるだろうか。そこには、決して足を踏み入れてはならない危険な香りがあるのではなかろうか。



 実に晴海埠頭は危険だというイメージが強い。かつて名作ゲーム『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』で描かれた、死体が上がるスポットのように。

 でも、そんな晴海埠頭は今や妙なデートスポットになっている。

 最近まで、確かに夜の晴海埠頭はヤバさが漂っていた。埠頭の脇には交番もあるのだけれど海に面した公園は森に囲まれた闇の世界。時折、豪華客船などがやってくるターミナルも、夜はまったくの闇に包まれているのだから。


 だが、オリンピック選手村に向けた工事によって、その風景は変わっている。今の晴海埠頭へと向かう道は、深夜でも灯りが煌々と輝いているのだ。おまけに、時折パトロールの車が走っているので治安は格段にアップしているといえるだろう。そうした安全性さえあれば、晴海埠頭は途端に素敵スポットとなる。目の前にはレインボーブリッジ。そして、サイバーパンクのような夜景が広がるのだから。


 そうした環境の変化は、次第に知られるようになっている。深夜、晴海埠頭へと向かうと、常に数台の車が何もない岩壁に向けて、車を走らせているのだ。

 そう、いつの間にか晴海埠頭は、密やかなクルマでやってくるデートスポットになっていたのである。

 岩壁のあたりまでいくと、週末には常に数台の車が。中までは見えないが、どう考えても中でカップルがいちゃついているのは容易に想像ができる。

 どうも、駐車をしやすい場所から、よい感じに交番が離れているロケーション。
安全かつ車デートでイチャつく、あるいは口説くスポットとしては最良のものになっているようだ。

 今はまだ知られていないスポットゆえにか、デート中っぽい車の数が増えたとはいえ、数は限られている。東京五輪に向けた工事の進展によって、その光景も変わっていくだろう。

 今のウチに、夜の闇に生まれる非日常な空間を観ておいてもよいかも!?
(文=大居候)