1月13日に放送された『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の第2話。

 3年A組の担任教師・柊一颯(菅田将暉)が生徒たちを人質に取って立てこもってから一夜明け、警察は柊の身辺調査を始める。

その中で、かつて交際していた元高校教師・相良文香(土村芳)に暴力を振るっていたという証言が、文香の父・孝彦(矢島健一)から引き出された。

 正直、この証言は信用できない。柊は、文香と居酒屋らしき場所でデートしたときの動画を頻繁に見ている。この中で彼女は「私たち教師って、生徒に何をしてあげられるんだろう? 結局は、ぶつかり合うしかないんだろうね。教師と教師としてじゃなく、人と人っていうか。体と体を使って言葉を交わすっていうか」と、ビールを飲みながら悩みを吐露している。
どうしても、柊にDVを受けている者の姿には見えないのだ。

 毎回、1人の生徒にフォーカスし、今までの過ちをあぶり出すのがこのドラマのフォーマット。第2話は宇佐美香帆(川栄李奈)だった。

 爆弾等を用いた柊の手法は過激だが、その目的はピュアに道徳指導だ。香帆に向けた“説教”の内容は「お前に足りなかったのは想像力だ。お前には痛みを想像できなかった」。
あまりにもな正論である。なんのひねりもない。ありきたりと言ってもいい。異常なのは状況だけである。

 初回の段階では「柊はサイコパス?」という予測も立てられたが、今回ではっきりと違うことがわかった。「3年A組」というタイトルからもわかるように、このドラマは熱血教師の物語である。
文香の言う通りに、体と体を使って言葉を交わすのが柊のやり方。でも、坂本金八のように黒板に人の字を書いて人間を説いたり、腐ったみかんの方程式に異を唱えているだけじゃ、現代の生徒には響かない。過激な手法をとるのは、そのせいだ。死ぬことも逮捕されることも厭わず、今の時代に即した熱血授業を柊は行っている。

 だから、第1話で柊に刺殺された(ことになっている)生徒・中尾蓮(三船海斗)も、実は生きているはずだ。“生きるための授業”を行うのが柊なのだから。
何より、柊は警察に30人分のおにぎりを持ってくるよう要求している。自殺した景山澪奈(上白石萌歌)の分を引くと、A組の人数は29人。柊を足して30人だ。中尾の分もしっかり勘定に入っている。

■なぜ、柊は澪奈の自殺を止めなかった?

 香帆が行ったいじめは、現代的なものだった。

 澪奈を自慢できる“ブランド”として見る気持ちが、香帆の中には確かにあった。

しかし、それだけじゃない。純粋に友達としても大好きだった。なのに「やっぱり、全国レベルって偉大だわ~」と悪気なく余計なことを言ってしまい、澪奈から距離を取られるようになる。

 こうして、香帆による愛憎の復讐劇が始まる。スクールカーストやマウンティングを存分に駆使し、SNSも最大限に活用。香帆は男になりすまし、澪奈に行った嫌がらせをSNSでイチイチ報告。
決め手は、捏造動画のアップだ。こうして、澪奈のドーピング疑惑は拡散した。

 筆者の学生時代にSNSがなくて、本当に良かったと思う。もし学校で嫌なことがあったら、SNS追撃のせいで心の休まる瞬間はないだろう。家に帰ったとしても、気が抜けない。地獄が延々続くような気持ちになるのではないか?

 香帆のいじめは、現代の一側面を切り取っている。でも、ドラマでは、極端にそっちに寄りすぎないでほしいのだ。現代の若者をステレオタイプで捉え、想像力に欠けた欠陥のある人間として描きすぎないでほしいのだ。そこは冷静になり、公平で深みのある描写を望みたい。

 最後に一つだけ、どうしても解せないことがある。澪奈からいじめの悩みや自殺願望を聞いていた柊は、どうして彼女を止めることができなかったのか? 止められないにしても、自殺願望を沈静化させようとした痕跡さえない。香帆に「今まで何もしてくれなかったくせに!」と責められていたが、そう言いたくなる生徒の気持ちもわかるのだ。

 なぜ、彼は唐突に金八ばりの熱血教師になったのか。3年A組のクラス以上に、柊の中に潜む闇が気になる第2話だった。

(文=寺西ジャジューカ)