これまでに出会った人々の名前と彼らへの感謝で始まり、たくさんの植物が並び、美しく彩られた「スエコザサ」で終わる植物図鑑。万太郎と寿恵子の人生そのものが図鑑になった、その様はまさに、らんまん。
でもまさか最終週の月曜日に「えええ!」と、本気で声が出るほどのサプライズがあるとは思ってもいませんでした。耳にすっかり馴染んだ宮崎あおいさんのナレーションが実は、植物の採集場所を特定しようと、万太郎の日記を読む紀子の声だったとは! そして松坂慶子さんが千鶴として再登場するとは! ここで『篤姫』のふたりを見るなんて。
そうそう、食事がどれもおいしそうでしたよね。
それにしても、白髪頭の老人となっても、万太郎(神木隆之介)は万太郎のまま。植物以外のことは全然ダメ、観察に夢中になって地面にねそべるポーズも子どもの頃と同じ。推薦すると言ってるのに理学博士になるのをしぶる彼に「傲慢だよ」と言い放つ波多野の気持ちもわかるし、「最後まで世話が焼ける」と若干うれしそうに言う徳永名誉教授(田中哲司)の気持ちもわかる。そして「世話が焼ける」のはずっと続き、40万点もの標本を、正確な採集場所も書かずに残していったことに気づいて、千鶴が「ちょっと困るわお父ちゃん!」と言いたくなる気持ち、ほんとにわかる。死後も万太郎は世話を焼かれ、文句を言われ、そしてずっと愛され続ける。
歳を重ねても変わらなかったのは寿恵子(浜辺美波)も同じで、図鑑を完成させてから理学博士に……ともごもご言っている万太郎に「理学博士が満を持して植物図鑑を出すとなったら、売れに売れて売り切れ御免の大増刷ですよ!」と畳み掛けて迫る姿、八犬伝をや歌舞伎を見事に語っていた若い頃と変わらないし、待合茶屋の女将の頃と同じ商売人のまま。弱っていた寿恵子があそこだけシャキーン!とするの、かっこよかったー。万太郎は理学博士となり、寿恵子に見せるために大急ぎで図鑑を完成させ、2人は最後まで金色の道を歩き抜いた。他の人たちも……人数が多すぎてとても書ききれないですが、このドラマは「脇役」がいない。全ての人が懸命にそれぞれの金色の道を歩いていて、それが万太郎たちと束の間交差して、離れた後もずっと歩いているんだろうなと思えて。だから最終週に、万太郎のために波多野、藤丸、野宮(亀田佳明)、佑一郎(中村蒼)たちが集まって力を合わせる姿、胸熱でした。
物語の最初で「おまん、誰じゃ」と草花に話しかけていた万太郎は、物語の最後にはドラマを見ていた私たちに向かって同じ言葉を発する。万太郎に見つけてもらった私たちも、自分にはちゃんと名前があること、名もなき雑草ではないことを知る。なんて美しいメッセージ。大きな力によっていろいろなものが壊されていく中で、守って明日へ残していくことの大切さを教えてくれるドラマでもありました。
『らんまん』変わらぬ“愛”を貫く万太郎と寿恵子の大冒険(第25週) 第25週、時代も万太郎(神木隆之介)に関わる人たちもどんどん変わり、物語が終わろうとしていると実感しました。そんなに早く進まないでと、袖を引っ張って止めたい気分。長...
■番組情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman