今をさかのぼること四半世紀前、軽快なラップと“ハマーダンス”で一世を風靡したMCハマー。1990年に発売したセカンドアルバム『プリーズ・ハマー・ドント・ハーテム』は、リック・ジェームスの「Super Freak」をサンプリングした「U Can’t Touch This」、プリンスの「When Doves Cry」とフェイス・ノー・モアの「We care A Lot」をサンプリングした「Pray」、マーヴィン・ゲイの「Mercy Mercy Me」をサンプリングした「Help the Children」が収録され、耳なじみのある有名曲に軽快なラップを載せたことでアルバムは大ヒット。ダイヤモンドディスク(セールス1000万枚超)認定された。

 アルバムの中でも「U Can’t Touch This」は、世界中で爆発的なヒットに。「ニッカポッカのようなダボダボなパンツ姿で、ガニ股で小刻みにリズムをとりにながら左右に移動する」という“ハマーダンス”を披露したミュージックビデオは、世界各地で社会現象を巻き起こした。

 その後も、セカンドアルバムと同名映画を製作して主演したり、子ども向けのMCハマー・アニメ『Hammerman』が放送されたり、グッズを販売したり。ハマーと改名してサードアルバムをリリースした91年には、3,300万ドル(約37億円)の年収があったとも伝えられている。

 しかし、90年代前半には世間から飽きられてしまい、人気は一気に下降。90年代後半にはキリスト教の正教師(牧師)に転向した。散財に加え、サンプリングされたオリジナル曲のアーティストたちから訴訟を起こされ、多額の印税や和解金を支払うことになり、96年にはとうとう1,300万ドル(約14億5,000万円)の負債を抱え、自己破産を申請。今なお、国税庁への支払い続けている。

 正教師や音楽活動の傍ら、総合格闘技のマネージメント会社を立ち上げたり、自分のダンスをアップロードし競い合う「DanceJam」というサイトを立ち上げたり、シリコンバレーのIT企業に投資したりと実業家として活動し、00年代後半にはエンターテインメント界でも再び姿を見るように。12年には人気絶頂だった「江南スタイル」で知られる韓国人歌手PSYと『アメリカン・ミュージック・アワード』のステージでコラボし、キレキレのダンスで会場を沸かせた。

 そんなハマーが5月16日、インスタグラムにダンスをする動画を投稿。55歳とは思えないほどのしなやかかつキレのある動きに、ネット上から大絶賛する声が上がっている。

 

MC HAMMERさん(@mchammer)がシェアした投稿 – 2017 5月 17 1:28午前 PDT

 動画には、「もうテレビではダンスしないつもりだったんだけど……地元のダチから“オレのために一肌脱いでくれよ”って連絡を受けてね……だから、真夜中の2時にウォーミングアップしてるのさ」というメッセージが添えられている。ダンスムーブは全盛期を思い出させるようなキレのあるもの。黒いジャケットに黒いパンツ、頭にはドゥーラグのようなニットキャップをかぶっており、かっこいい。あと5年で還暦とは思えぬ、若々しいファッションと動きなのだ。

 ハマーはその1時間半後には練習をやめ、「リラックスと若返り」のためにジャグジーに入ったとインスタグラムで報告。ファンからのコメントをリツートするなど、ゴキゲンな様子だった。

 このダンス動画を、米大手ゴシップ芸能サイト「TMZ」が紹介したところ、ネット上では、「55歳なのに、すごい!」とハマーのダンス能力の高さを絶賛する声が巻き起こっている。

 サンプリングした曲で有名になった、変わり身の早いお調子者と叩かれているハマー。しかし、グラミー賞を3回も獲得し、ハマーダンスを世界中に広め、90年代初期を代表する曲を持つ彼は紛れもないスーパースターだった。今回のインスタグラムを見た人たちからは、彼の偉業をたたえ、また彼を見直す声が上がっている。流行の波に乗るのがうまいハマーだが、果たしてこの波には乗れるのだろうか? 今後の動向に注目だ。