羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「バレてなかったの」GENKING
『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系、5月28日)
人間の直感は、履歴書や30分の面接よりも、よっぽど当てになると私は信じている。
例えば、GENKINGが、一般人ながらインスタグラムで多数のフォロワーを持ち、謎の美男子セレブとして脚光を浴びだした頃から、私はずっと群を抜いた“うさん臭さ”を感じていた。あの若さでブランド物をたくさん持っているということは相当収入がないと無理だろうが、「専業主婦をしていた」「OLをしていた」「クリエイターをしていた」と前歴がころころ変わる、かつ、そんなに高収入とも思えない職種なのが、うさん臭さをより強くする。美容好きなことは一目瞭然だし、顔のパーツが整っていることは確かであるものの、なぜか清潔感もない。風呂に入るなどの衛生観念という意味での清潔感ではなく、裏の世界特有の臭みが漂っているとでも言ったらいいだろうか。
2015年はバラエティ番組にひっぱりだこだったGENKINGだが、最近はあまり見ないと思っていた。
愛知県出身のGENKINGは、上京当時月収が20万円程度であったのに、日本有数の高級住宅地である渋谷区神山町に住むことを決意する(家賃7万のボロボロのアパートに住んでいたそうだ)。ブランド品を買って着飾るようになると、遊ぶ場所も六本木にシフトし、出費がかさむ。特に痛い出費だったのが、タクシー代だそうだ。周囲には、電車に乗って遊びに来る人がいなかったので、GENKINGもタクシーに乗るものの、友達の姿が見えなくなるところで降り、あらかじめ隠しておいた自転車で家に帰っていたという。
その頃、たまたま始めたインスタグラムのセレブ風画像で多くの「いいね!」を得たことで、GENKINGの見栄に拍車がかかる。
「偽装セレブであることが友達にバレていなかったのか?」という質問に、GENKINGは「バレていなかったの。うまかったんだと思う」と答えていた。本人が「バレていない」と言ってるのに、私がこんな言い方をするのは何だが、友達にはバレていたけれど、GENKING本人に指摘しなかっただけじゃないかと思うのだ。
友達であれ同僚であれ、経済状況というのは、特に探る意志はなくても、一緒にいるとなんとなくわかってしまうものだと私は思っている。私が会社員だった頃、定年間近の女子社員による横領騒動に遭遇したことがある。男性上司たちは慌てふためいたが、同じ部の女子社員たちは、怪しい動きとメンパブ通いなど経済状況が明らかに変わったことに気づいていた。ただオトナだから気づかないふりをするし、口に出さないだけ。横領となると話が大きすぎるが、友達との関係でも「最近、買い物したって聞かないな」とか「よく旅行に行っているな」という具合に、ちょっとした変化を感じることはあるはずだ。
「GENKING本人だけが気づいていない」と思えた番組がもう1つある。
SNSには、「フォロワーは多いが、自分にしか興味がないので、トーク力がないことや目上の人を怒らせていることにすら気づかない」けれど「拡散力はあるので、時々テレビの仕事が入る」有名人がいる。狩野英孝の彼女として世に出た加藤紗里が代表例で、彼女を芸能人ではなく“SNS有名人”と書いたことがあるが、GENKINGも同じ分類の人に思えるのだ。近いうちに、GENKINGが紗里のSNSに「ずっと大好き」というハッシュタグと共に現れそうな気がしてならない。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」