『24時間テレビ』(日本テレビ系)で90キロマラソンを完走したブルゾンちえみ。しかし放送中、ネットは走る振動で上下に激しく揺さぶられるバストを危惧する声であふれていた。

バストが縦横無尽に揺れることで下垂(かすい・バストが垂れること)は免れられないからだ。

「あの様子だと、バストを支えるコラーゲンである“クーパー靭帯”がかなりダメージを受けてしまったのではないでしょうか」

 そう分析するのは品川スキンクリニックの秦真治院長。これまで約29年間、バストの悩みを抱える女性の施術に携わってきたプロフェッショナルだ。

「きっとバストの揺れを最小限に抑える、固定タイプのブラジャーをしていなかったのではないかと推測しています。マラソン当日は暑かったので、汗をかいても肌がかぶれない、なるべくライトなつけ心地の下着を、ブルゾンさんは選ばれたのでしょう。しかし、あれではバスト崩れを引き起こしかねません」

■バストの大小は無関係。
誰にとっても真摯なバスト崩れ問題

「ブルゾンちえみほど、私のバストは大きくないから」といって油断は禁物。下垂の原因は、何もバストの重さに限らないのだ。

「クーパー靭帯の強度や太さも下垂の原因になります。バストが大きくて乳房の重さがあっても、クーパー靭帯にしっかりとコシがあれば、下垂はそれほど心配しなくていいでしょう。しかし仮にAカップ・Bカップでも、クーパー靭帯が弱ければバストはティアドロップ(滴)型に垂れます」

 クーパー靭帯の強度や太さは“コラーゲンの量”による弾力性に左右される。しかし、コラーゲンの量は人によって生まれつき異なり、鶏肉やゼリー類などのコラーゲンを含む食品で補うことは、ほぼ不可能なのだとか。
そこで、コラーゲンの量をセルフチェックする簡単な方法を教えてもらった。

「頬を指で軽くつまんでみたとき、肌にハリ感があってあまり伸びない人は、コラーゲンが多いので靭帯も比較的強いはず。一方、つまんだ肌がビョ~ンと伸びる方は、残念ながらコラーゲンが少なく、靭帯も皮膚も伸びやすいはずです」

 これまでの話から、クーパー靭帯を伸縮自在なゴムのように想像するかもしれない。しかしゴムと違って、クーパー靭帯は一度伸びてしまえば、もう元には戻らない。つまり、ブルゾンのバストも垂れてしまったら、リカバーは不可能なのだ。



 そこで肝心なのは、クーパー靭帯を伸ばさずにバストの現状の形をキープすること。


「大切なのは、ジャストサイズのブラジャーを身につけることです。カップが大きいブラジャーにすると、中でゆさゆさと揺れる。また谷間をつくる寄せるタイプだと、バスト外側の靭帯を強引に引っ張ってしまいます。しかし、そういったブラジャーが向いているシーンもあるはずですので、就寝時はスポーツブラを選ぶなど、シーンに合わせて使い分けするのがいいでしょう」

 また単純にバストを固定すればいいわけでもないという。強くバストを圧迫すると内部の血流が滞り、バストの皮膚表面のコラーゲンの減少を引き起こす。その結果、皮膚そのものが伸びやすくなってしまう。


「たとえば授乳後にバストが垂れるのは、乳房を吸われることでバストの皮膚が伸びてしまうからです。皮膚が伸びてしまうのは、皮膚表面のコラーゲンが減ってハリを失うということと同じです。また授乳を経験する前にクーパー靭帯が弛緩気味だと、授乳開始に伴ってさらに皮膚も伸びるので、下垂のみならず、乳首の向きなども下向きに変形しやすくなります。言うまでもなく、授乳は幸せなことだというのが大前提ですが」

 もう一つ、下垂対策に有効なのは筋トレ。しかし、運動嫌いの方もご安心いただきたい。秦院長がおすすめするトレーニングは、ただ無心で“拝む”だけだ。


「胸の前で両方の手のひらを合わせて、胸あたりにグッと力を入れるだけ。これによってクーパー靭帯を支える大胸筋が育ち、下垂対策には打ってつけです。できれば3分キープ×3回を1セット、朝・昼・夜と行うのが理想です」

 また頭皮と顔にも言えることだが、人間の皮膚表面はひと続きである。バストが垂れれば、ほかの部位にも悪影響が及ぶことはあるのだろうか?

「上腹部のたるみにもつながります。バストが下垂するとアンダーバストの位置自体も下がります。そうすると上腹部やデコルテを含むバスト周辺が、重力にしたがって下へとたるんでいきます。
一度下垂が起これば、悪循環に陥る一方です」

 恐ろしき事実に震えているのは、ブルゾンちえみだけではなかろう。「誰に見せるのか」と開き直れども、バストとは一生の付き合い。ここはひとつ、“合掌トレ”から手を打ちますか。
(門上奈央)

秦真治(はた・しんじ)
品川スキンクリニック品川本院の院長。バストアップをはじめ、痩身やアンチエイジングケアなど多岐にわたる施術を行う。品川スキンクリニックおよび品川美容外科は、北は北海道、南は沖縄と日本各地に点在しており施術メニューも多種多様。
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