北朝鮮の金正恩総書記(国務委員長)は先月25日、姜健(カンゴン)総合軍官学校を現地指導した。
姜健とは、朝鮮戦争で戦死した北朝鮮軍総参謀長の名だ。
一方、この学校は人材育成とはある意味でまったく逆のことで、非常に悪名高い。金正恩総書記が繰り返してきた、「残酷ショー」の舞台となってきたのだ。
2014年10月、平壌に近い姜健(カンゴン)総合軍官学校を撮影した衛星写真を見ると、広場に何らかの物体10個が一列に並べられている。それに向かって6門のZPU-4対空機銃が並べられていて、その後ろには、射撃の様子を観察するためと見られる場所が設けられている。
この画像を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に提供した米北朝鮮人権委員会(HRNK)のグレッグ・スカラチュー事務総長によれば、「対空機銃を使って公開処刑を行っている状況に間違いない」と語っている。
そして、アジアプレスは同年10月、北朝鮮の内部情報に基づく「平壌で労働党幹部を集団銃殺か 金正恩氏の指導に違反」と題した記事の中で、10人の朝鮮労働党幹部が同軍官学校で処刑されたと報じており、HRNKの分析と時期的に符合するのだ。
ZPU-4は、14.5mm口径の重機関銃4丁をひとつにまとめたものだ。使用される銃弾は威力が大きく、通常は人間に対してよりも、軽装甲の車両やコンクリート塀などの遮蔽物を貫通・破壊するのに用いられる。
事情通は「1発でも当たれば、人体の一部が吹き飛ぶ。発射速度の速い機関銃で打てば、粉々になり原形をとどめないだろう」と話している。
これを用いた公開処刑では、「動員された女性たちが次々に失禁した」という証言も伝えられている。
金正恩氏は今回の訪問時、「姜健総合軍官学校のように歴史と伝統が高貴で誇らしい軍事学園はない」と述べたという。しかし、その「歴史と伝統」を、文字通り血で汚しているのが自分自身であることを、同氏はまったく認識していないようだ。