北朝鮮は先月25日、南浦(ナンポ)造船所で駆逐艦の進水式を行った。この場には金正恩総書記が、娘の「ジュエ」という名前で呼ばれる女性を伴って参加した。

金正恩氏の参加する行事は「1号行事」と言われ、当局は、朝鮮労働党中央委員会(中央党)幹部とその家族の出席を認めていたが、直前になって一部取り消した。これがいろいろと尾を引いている。韓国のサンド研究所が運営するサンドタイムズが報じた。

平壌の情報筋によれば、金正恩氏は式典の前日、中央党の幹部に向けて、「家族2人まで同伴可能」とする特別な指示を出した。具体的には、配偶者と子ども、もしくは孫1人まで出席できるという内容だった。異例の「1号行事」に家族を同行できるということで、幹部の妻たちは期待に胸を膨らませながら準備を始めていた。

しかし、式典当日の未明になって方針が変更された。出席可能な家族の人数は「子どもまたは孫1人」に制限され、妻の同伴は取りやめとなった。

この突然の変更に、一部の妻たちは失望を隠せず、不満を口にしたという。その具体的な内容は伝えられていないが、そうした反応はすぐに「動向報告」として中央党に報告された。

北朝鮮には、「家庭革命化」という概念がある。夫婦は相互に刺激を与えあいながら国家に忠実な革命家にならねばならず、また父母は子どもたちをそのような存在に育てなければならないというものだ。

これに失敗したと見なされると、時にその家庭は破滅させられることすらある。

これを受け、中央党は今月2日、宣伝扇動部を通じて関係幹部らに対して通達を出した。そこには、「幹部の妻は家庭の主婦である以前に、革命の道を共に歩む同志として、家庭内で党と首領への忠誠心を高める思想的支柱でなければならない」と書かれていた。

また、「首領とその家族のそばにいられるという栄光を享受しながら、その恩恵の重みを感じられないのは、太陽のそばにいながらもその温かさを知らぬに等しい」との表現も盛り込まれていたという。

これは、特権意識を持った幹部の妻たちの行動に問題がある、幹部である夫が妻の「しつけ」をちゃんとせよという内容だ。

かくして当局は、妻たちに対する思想審査を始めた。

これは、今月2日から8日にかけて、幹部やその家族を個別に呼び出す形で実施された。組織生活の報告、健康状態、職場への出勤状況など、生活のあらゆる面が審査対象となったという。

北朝鮮当局は最近、幹部たちの不正疑惑に対して厳しい検閲を行っているとも伝えられている。今回の審査を無難にやり過ごすことの出来ない幹部たちは、思ってもみなかった災難に見舞われるかもしれない。

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