北朝鮮当局が住民による家庭教師や習い事などの私教育行為を厳しく取り締まっている。咸鏡北道の消息筋によれば、金銭を受け取って生徒を教えた場合、例外なく刑罰を受け、労働鍛錬隊(強制労働)に送られる事例が相次いでいるという。
取り締まりは清津市の保安局と「反社会主義・非社会主義グルッパ」が主導。事前の警告はなく、突然踏み込んで証拠を押さえる方式だ。今月18日には、自宅でギターと声楽を教えていた30代の男性が摘発され、6か月の労働鍛錬刑を宣告された。月300元という安価な授業料が人気を呼んでいたが、通報の対象となった。
英語や中国語を教えていた元教師の住民も次々と摘発され、同様に鍛錬隊送りにされた。安定を求めて教師となったものの低賃金に絶望し辞職、家庭教師で生計を立てたが処罰されるという悪循環に陥っている。
当局は摘発者が「8・3行為」(職場に出ずに金銭だけ納める行為)を続けていた点も問題視。これまで黙認してきた慣行を突然“重罪”扱いにし、職場幹部にまで処罰を拡大した。法律は当局の都合で自在に変わるとの批判が住民の間で強まっている。
消息筋によれば、教師たちは「安定した生活」を夢見て学校に勤めたが、現実との落差から辞職。その後家庭教師で生計を維持したが、結局摘発される運命にあるという。住民は「知識を学べば鍛錬刑、生活のため働けば非社会主義」と皮肉を口にする。
強制労働を終えても再び家庭教師に戻らざるを得ない。もし当局が本気で取り締まるのなら、「知識は力ではなく罪である」とスローガンでも掲げたらどうだろうか。