北朝鮮で、外貨獲得事業を担う現場責任者らの間に「あえて出世を避ける」異例の空気が広がっている。かつては利権と裁量を握る“うまみのあるポスト”と見なされた外貨稼ぎ部門の責任者職が、いまや監視と処罰の最前線となり、「やってられない」として自ら退く動きが相次いでいるという。
デイリーNKの北朝鮮内部消息筋によると、2月に行われた朝鮮労働党第9回大会以降、各地の外貨稼ぎ関連組織で責任者や拠点長を務めていた幹部らが、健康不安や能力不足を理由に相次いで辞任を申し出ている。とりわけ、新興貿易会社や大手貿易会社の傘下で進められる砂金採取、養殖場経営、原料基地運営、副業地管理(農業)、原料加工といった小規模外貨事業で、その傾向が顕著だという。
背景にあるのは、金正恩政権下で強まった「成果第一」の締め付けだ。従来は一定額の上納金さえ納めれば、責任者には比較的大きな裁量が認められ、収益の一部を実質的な利益として確保できる余地もあった。しかし現在は、各単位に具体的なノルマが課され、未達成なら厳しい総括、公開批判、さらには処罰の対象となる。逆に成果を上げても、利益が増えれば増えるほど中央の監視が強まり、不正蓄財や横流しの疑いをかけられかねない。
消息筋は「稼げば監視され、稼げなければ無能とされる。どちらに転んでも責任者だけが圧力を受ける構造だ」と語る。
さらに深刻なのは、事業運営の原資そのものを現場責任者が自前で工面しなければならないケースが増えている点だ。設備投資や仕入れ資金を個人資産から持ち出し、それでも成果が出なければ全責任を負わされる。「金を稼ぐために就いた役職のはずが、最後は自分の財産まで失う」との不満が噴出しているという。
北朝鮮では近年、外貨獲得部門をめぐる統制が一段と強まり、幹部摘発や“革命化”処分も相次ぐ。
かつては「外貨稼ぎの帽子(役職)をかぶれば暮らしが変わる」とまで言われたポストが、いまや「粛清の入り口」に変わった。国家主導で利権を吸い上げる体制への再編が進むなか、北朝鮮の幹部社会では「昇進はリスク」という逆転現象が静かに広がっている。








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