『週刊ダイヤモンド』8月5日号の第一特集は「ロジカルシンキング&問題解決法」です。歌に音階があり、英語に文法があるように、実は、仕事にもきちんと確立された手法があります。
同様に仕事にも正しい“手法”がある!
2017年3月期に純利益が1兆円を超えたソフトバンクグループ。
本誌の6月10日号「会計&ファイナンス超理解」特集では、同社内で会計とファイナンスが必須のスキルとなっていると紹介した。孫正義社長が社員の四つの必須スキルの一つとして挙げているのだ。
ところが、社員向けのソフトバンクユニバーシティでファイナンスを教える関口範興・ソフトバンクグロバール営業本部コミュニケーションサービス部部長は「会計やファイナンスのスキルも大事だが、同じくらいに求められるのがロジカルシンキング」と指摘する。
例えばファイナンスのスキルを生かすべく、次年度以降の売上高やキャッシュフローを予測する場面。「実はそういうときに必要なのは、モレなくダブりなく考えるという思考法」(関口部長)なのだ。
関口部長は社内講座の講師専任ではなく、海外の通信会社との交渉などが本業だ。時に英語を使ってのタフな交渉も求められる。
「スキルという意味では英語も同じ。英語が話せても、論理的思考力が身に付いていなければ、相手を説得できないので」(関口部長)
あなたは漫然と仕事をしていないだろうか。
歌に音階があり、英語に文法があるように、実は、仕事にも、きちんと確立された手法がある。ロジカルシンキングや問題解決法、フレームワークというもので、いってみれば、“仕事の技術”だ。
ロジカルシンキングは自分の考えを整理して論理性を高めるため、問題解決法はビジネスの課題を解決するための方法だ。フレームワークはそれらを実現するための型のようなもの。
肝心なことは、この技術は音楽や英語などと異なり、一部の大学などを除けば、学校では誰も教えてくれる人がいないということ。本当は泳ぎ方(技術)が存在するのに、教えられないまま仕事という海に放り出されるようなものだ。
ところが、高年収・高効率の人たちの多くはしっかり実践している。代表例が年収1000万円超え社員も珍しくないコンサルティング会社だ。そもそも特集で紹介する仕事の技術は、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストンコンサルティンググループといったコンサルティング会社が考えたものが多い。
というのも、コンサルティング会社は顧客企業の抱える問題解決を依頼されてから短期間で効果を求められるため、高い効率と論理性が必要になる。その中で一連の手法は生まれたのだ。
また、冒頭のソフトバンクと同じく純利益1兆円のトヨタ自動車の現場では、「“なぜ”を5回繰り返せば真の原因をつかめる」とたたき込まれる。これもロジカルシンキングに通じる思想だ。
さらに、リクルートグループもロジカルシンキングの研修に幹部候補を参加させている。リクルート住まいカンパニーが主催する研修を受けた馬場綾乃氏は、「これまで直感的に考えることが多かったが、構造化して考える癖がついた」と成果を振り返る。
つまり、高収益の会社や独自の社風のある会社、高年収の人たちは皆、こうした手法を身に付けているのである。
こう書くと、大企業で経営の課題を解決すべき幹部だけが身に付ければよいと思うかもしれないが、そんなことはない。前述したようにロジカルシンキングは考えを整理して論理性を高める技術なのだから、全ての働く人が身に付けておくべきスキルなのだ。
そればかりか、大人だけでなく子供にも有効で、中学生のバンド活動などを題材にした著作『世界一やさしい問題解決の授業』は44万部を超えるベストセラーとなっている。
また、勝間和代氏はロジカルシンキングを応用して効率的に家事を進めることを説いているから、家庭内でも生きてくるはずだ。
つまり、大企業だけでなく中小企業、さらには社会人だけでなく小学生から就職活動をする大学生まで、誰もがバージョンアップ可能な技術なのだ。