大和ハウスで巨額横領
今回は、不適切な会計や役員・従業員の経理不正について2019年に開示された企業のデータを使って、「上場企業・不適切会計リスト」をお届けする。東京商工リサーチの集計データを基に、ダイヤモンド編集部が作成した。
不適切会計を開示した企業は70社に上った。これまで最も多かった16年の57社を上回り、調査開始(08年)以来、最多となった。件数も73件(MTG、すてきナイスグループ、ユー・エム・シー・エレクトロニクスの3社がそれぞれ2件ずつ開示)と過去最多を更新した。
内容別の内訳は、経理や会計処理のミスなど「誤り」が31件。「粉飾」が28件、「着服横領」が14件だった。このうち粉飾と着服横領に該当する企業から、代表的なケースを取り上げてみたい。
19年2月に子会社のLIXILリニューアル(東京都)で虚偽受注があったと発表したのは、LIXILグループである。
LIXILリニューアルは、LIXIL製品を工事のサービス付きで提供する会社。工事の完了日を操作するなどして、売り上げを先行計上した物件が700件以上あった。LIXILグループは、18年4~12月期の四半期報告書の提出期限を1カ月延長することを余儀なくされた。
また19年3月には、大和ハウス工業で巨額の業務上横領が発覚した。
中国の合弁会社で、現地の幹部が資金を不正に出金していたのだ。
大和ハウスでは、昨年6月までに、建築基準に適合しない賃貸アパートや一戸建て住宅も約4000棟見つかっている。連結売上高は19年3月期に4兆円を超え、10年前の2倍以上に膨張したが、「急成長に管理体制が追い付いていない」(証券アナリスト)との指摘も出ている。
中国関連では、19年5月に美容ローラー「リファ」やトレーニング機器「シックスパッド」を販売するMTG、7月に電子機器の受託製造サービスを手掛けるユー・エム・シー・エレクトロニクスが、それぞれ中国子会社で不適切会計の露見があった。
すてきナイス元会長逮捕!東芝、JDIも不正判明
MTGは、サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手をプロモーションに起用して成長、時価総額10億ドル以上の未上場企業「ユニコーン」として注目されていた。18年7月に東証マザーズに上場した。
だが、中国の子会社で売上高の計上が不適切だったことが明らかに。19年11月には、韓国の子会社でも販売先の在庫状況について会計監査人に通報があった。株価は足元で、ピーク時の10分の1程度と低迷している。
ユー・エム・シー・エレクトロニクスも、中国の子会社で売り上げの過大計上や架空在庫の計上が発覚し、14年3月期にさかのぼって決算を訂正。19年10月に社長の内山茂樹氏が、引責辞任に追い込まれた。
他に子会社で不適切会計があったのは、靴下メーカーのナイガイや東芝だ。
ナイガイは、19年9月に子会社のセンティーレワン(大阪府)で、不適切な商品在庫を計上した疑いがあると発表した。東芝では、11月に米国子会社の従業員が建設工事費の水増し発注で不当な利益を得ていたことが分かった。子会社への適切な監視が行き届いていなかった事例は、国内外を問わず目立っている。
衝撃的だったのは、創業者の息子である平田恒一郎元会長が、金融商品取引法違反の疑いで7月に逮捕されたすてきナイスグループの粉飾決算事件だ。住宅関連事業を手掛ける同社では、トップ主導で「決算対策」と称して在庫物件を売却したと見せかけ、利益を水増ししていた。
元副会長の日暮清氏や元取締役の大野弘氏も不正処理の実行者として逮捕された。組織ぐるみの犯行であることは濃厚である。
このほか、8月に高級和食店の梅の花が約10年間、赤字決算を回避するため、減損処理の対象店舗数を実態よりも少なく処理していたことを発表。10月は平和不動産で、従業員3人が会社資産を不正流用していたことが判明している。
11月には経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)で、経理担当の男性幹部が5億7800万円を着服していたことが分かった。
この幹部は、着服とは別に「過去の決算で経営陣から指示があり、不適切な会計処理を行っていた」と主張していたが、その後自殺。JDIのスポンサー探しに影響が出かねない事態となった(今年1月末に独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受けることが決まった)。
(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
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