債務超過でも配当実施!
コロナで高まるリスク

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、株式市場が世界的に動揺している。欧米でも感染者が急増していることから、米国市場でも急落が続く。

3月9日、12日、16日には、全ての株式の取引を一時中断する「サーキットブレーカー」の措置が取られる事態となった。

 今回は、米国の代表的な株価指数であるS&P500の構成銘柄に選ばれた主要500社のうち、債務超過になっている大企業を紹介したい。

 東京証券取引所では債務超過に陥ってから1年以内に解消しないと上場廃止の処分を受ける。国内の投資家にとって債務超過のイメージは非常にネガティブだが、米国ではこれまで、さほど問題にされてこなかった。

 事業が安定的にもうかりキャッシュさえ回っていれば、債務超過にもかかわらず自社株買いや配当を実施する企業がいくつもあるのだ。日本とはかなり感覚が違う。ただ、今後コロナショックの影響が長引けば、金融不安の恐れも出てくる。当然こうした企業のリスクは高まるはずだ。それでは、債務超過の金額が大きい企業をチェックしていこう。

 1位はたばこ大手のフィリップ モリス インターナショナルで1兆0271億円。加熱式たばこ「アイコス」の販売が拡大しており、業績は好調だ。2019年は7000億円(以下1ドル=107円で換算)を超す純利益を稼いだ。

ただ、そのほぼ全てを配当金で流出させている。

 2位は航空機メーカー大手のボーイングで8881億円。墜落事故を2度起こした小型機「737MAX」が、運航や出荷の停止に追い込まれ、窮地に立たされている。19年は22年ぶりに赤字に転落した。それにもかかわらず株主に5000億円近くの配当金を出している。

 同社は1月に、737MAXの運航停止に伴う費用が総額で約2兆円に膨らむという見通しを発表した。その後、新型コロナで航空需要が急減しており、資金繰りが不安視され始めている。

マクドナルドは8800億円!
スタバは6600億円の債務超過

 3位以下にも、日本でよく知られる有名企業が複数、名を連ねている。

 3位はハンバーガーチェーン大手のマクドナルドで8785億円。配当金額は約3800億円だった。同社では昨年11月、スティーブ・イースターブルック最高経営責任者(CEO)が、社内の行動規範に反して従業員と関係を持ったことを理由に解任された。同社は発表文の中で、不倫や性的関係をほのめかす単語を使っている。

 4位はケンタッキー・フライド・チキンを傘下に持つファストフード大手のヤム・ブランズで8577億円。配当金額は約550億円。全世界でファストフード・レストランのフランチャイズ事業を展開している。

 5位はコーヒーチェーン大手のスターバックスで6667億円。配当金額は1900億円弱だった。自社株買いにも積極的な姿勢を取っているが、ここ数年、債務残高が膨張傾向にある。

 そのほか、12位はパソコン大手のHPで1277億円。配当金額は1000億円超である。主力のプリンター事業が苦戦する中、昨年10月には全社員の数を最大で約16%削減すると発表した。その翌月に、富士フイルムホールディングスとたもとを分かった米ゼロックスから、3兆円規模の買収を提案されたが反対を表明。3月に入っても、まだ決着がついていない。

 世界各地で高級ホテルやリゾート施設を運営するヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスは、505億円で16位。

配当金額は約180億円。アメリカン航空は126億円で20位。配当金額は200億円弱だった。共に新型コロナの影響を大きく受けるビジネスをしており、経営の先行きが不透明になっている。

(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

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