『週刊ダイヤモンド』1月30日号の第一特集は「慶應三田会vs早稲田稲門会」です。就職に仕事に出世…ビジネスの成功を左右する人脈。
慶應大「三田会」人脈パワー
「三田会入りし、慶應のつながりの大きさとありがたさを実感した」――。
こう振り返るのは慶應義塾大学薬学部KP会(KP三田会)の高橋千佳子会長だ。2008年の共立薬科大学との統合で誕生した慶應大薬学部。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い予防グッズの品薄状態が続いた昨夏、薬学部生には入手困難だった除菌ウエットティッシュ計2400個が配られた。
実現したのは慶應大のOB組織「三田会」パワーだ。「ライオン三田会につないでもらい、仕入れ値で買えた。学生に本当に喜んでもらえた」と高橋会長は笑顔で語る。
海の向こうからも慶應大に支援物資が届いた。
一般人には不可能なことを実現する人脈。これこそが慶應大を「最強の学閥」たらしめる原動力だ。そして今、慶應大はさらなる“領土拡大”に向けて動きだした。
昨年11月、慶應大と東京歯科大学は合併の協議を始めると発表した。慶應大にとって歯学部は、医学部、薬学部、看護医療学部の間を埋める、医療系学部最後のピースである。
実際、合併のインパクトはすさまじい。大学の売り上げを表す事業活動収入の単純合算は1974億円と私大1位の日本大学に匹敵。入試難易度や経済界への影響力といった“ソフト面”にとどまらず、大学の収入規模という“ハード面”でもトップに迫り、名実共に私大首位の座を射程内に入れた。
コロナ寄付金で早稲田に完敗慶應大「最強の集金力」に“異変”
しかし、こうした「拡大策」は今に始まったことではない。ここ30年、慶應大は幾つもの学部を新設してきた。
今や慶應大が擁する学問領域の広さは、各大学と比べてみれば一目瞭然だ。特に際立つのが、医療系学部の充実だ。医学部設置を長年の悲願とする早稲田大学はもちろん、医学部の存在感が大きい日本大などと比べても遜色ない。
加えて付属校の拡大も進めた。92年に湘南藤沢中等部・高等部を、13年には二つ目の小学校となる横浜初等部を開校している。系列校の増強は、将来の三田会を担う「本流」の人材育成につながる。
伝統的な文系学部から網羅的な医療系学部、さらには大学病院までそろえる「幅広な専門領域」と、小学校から大学に至る「縦長の一貫教育」。この横軸と縦軸の広がりを兼ね備えていることが慶應大の強みの源泉となっているのだ。
こうした巨大な組織体は、さまざまな好循環を生む。
ただし、そんな慶應大の「最強の集金力」が、早稲田大に敗れるという“異変”も起きている。
昨春、両大学はコロナ禍で困窮した学生などへの緊急支援を呼び掛けた。慶應大に集まった寄付金は4.9億円(20年12月11日時点)。一方、早稲田大は8.1億円(同10日時点)と大幅に上回る結果となった。