『週刊ダイヤモンド』11月11日号の第1特集は「富裕層が明かす マル秘狙い目&穴場 運用術」です。今や投資サービスは広がりを見せ、決して日本株だけが主な運用先というわけではありません。
「投資的な思考」が根付いている
「富裕層には、価値が下がりそうなものは買わない、という発想がベースにある」。ライフプランのFP相談サービス「マネーセージ」の佐藤健太執行役員はそう話す。
同氏は仕事柄、いわゆる“お金持ち”の経営者などと接する機会を多く持つ中、資産を着実に積み上げる富裕層の間に、冒頭のような共通点を見いだしているという。
言い換えれば、中古品として売りに出しても、購入時から価格が維持されやすかったり、むしろ値段が上がったりしそうなものを買おうとする発想が強い。
物価高が続く中でも給与がさほど上がらず、一国の首相が「増税メガネ」と形容されるほど税負担へ不安が広がる日本では、「安いほど善」という価値観に縛られるのも無理はないかもしれない。だが、「安かろう悪かろう」に甘んじてしまっては、富裕層マインドには程遠いといえる。
購入額が高価な不動産などでは、一般人も資産価値を意識するだろうが、富裕層はそうした考え方が、とにかく徹底しているのだ。
一方で佐藤氏は、一般の相談客から「資産を殖やそうにも、そのための“種(原資)”に乏しい」との悩みを聞くことも多いという。
「そうはいっても、多くの人が車や腕時計を買って持っているはず」と同氏。いわく、富裕層にはこのような身近な買い物一つとっても、その資産性について吟味する習慣が根付いているのだ。
だから使い捨ての日用品はともかく、さまざまなものの購入に際して、価値が維持/上がる可能性があるか見定めることが、“種”を築く一歩ではないかと指南する。要は、購入の意思決定に「投資の思考法」を交える、ともいえよう。
本特集では、普段からそんな考えを突き詰める富裕層が、実際にどんな資産運用に取り組むのか、究明を試みた。すると運用先や手法は多岐に及び、各地を駆け巡る富裕層マネーの動乱が浮かび上がってきた。
少額であっても富裕層をまねできる!
「富裕層の運用術」などと聞けば、もしかすると一般のビジネスパーソンとは無縁の世界で、多額のお金がないとできないのでは?と、不安に思うかもしれない。
しかし、安心してほしい。最近では、投資サービスが広がりを見せ、これまで富裕層でないと手掛けられなかった運用先が、ぐっと身近になっている場合も数多い。しかも、そのほとんどは、比較的少額でもまねできるものだ。
例えば、楽天証券では今夏、従来の債券の販売サービスを一新した「債券マルシェ」を立ち上げた。下図の通り、米国の金利が歴史的水準に上昇する中、米国債や社債の投資ニーズが高まっているが、従来は機関投資家や富裕層でないと手が出しづらかった債券に、一般の個人投資家もアクセスしやすくなった。
一般的に債券の利回りは、債券価格と逆相関の関係にある。価格が下がっても、利息と償還金額が確定しているので、その分投資額に対するトータルのリターンを表す利回りは上昇するからだ。
つまり、現状は激しい「債券安」の局面でもある。これから投資する投資家にとっては、「価格が下がってお買い得」という捉え方もできるのだ。