「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で、設立10年以内の非上場企業を伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほど珍しいという意味だ。

かつては、MetaやX(旧、Twitter)もそう称されていた。本連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は、生成AIサービス「Claude(クロード) 3」を提供する「Anthropic(アンソロピック)」を取り上げる。Claude 3は、2024年3月に発表されたばかりで、性能の高さが注目されている。

話題の生成AIサービス「Claude3」を提供する「Anthropic(アンソロピック)」とは

Anthropic(アンソロピック)は、2021年に設立された、生成AIの開発や研究を行うアメリカの企業だ。対話型の生成AIサービス「Claude」を提供した。同社は、CEOであるダリオ・アモデイ氏をはじめ、「ChatGPT」の開発・運営で知られるOpenAIに所属していたメンバーらによって設立された。
彼らがOpenAIとたもとを分かった理由は、AIに対する考え方の違いとも言われている。Anthropicは、AIを開発する上で「信頼性」を非常に重視している。パーパスにも「人々が信頼できるシステムを構築することと、AIの機会とリスクについて研究することに専念する」と掲げており、リスク面に配慮しながら「信頼できるAI」を構築すると折に触れて強調している。

Anthropicは、2021年5月にシリーズAラウンドとして、約1億2,400万ドル(約186億円)、2022年4月にシリーズBラウンドとして約5億8,000万ドル(約870億円)の資金調達を実施した。さらに、2023年5月、シリーズCラウンドとして約4億5,000万ドル(約675億円)の資金調達を発表した。この際、Googleも出資したことが話題となった。
2023年10月には、Googleは最大20億ドル(約3,000億円)を追加で出資すると報じられた。また、Amazonも2023年9月から2024年3月にかけて、Anthropicに対して総額約40億ドル(約6,000億円)の出資を実施し、事業提携も行っている。
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最新モデルの対話型生成AI「Claude 3」

最新モデルの対話型生成AI「Claude 3」は、長文の処理やプログラミング、画像分析などが可能で、APIも提供されている。「Claude 3」には、機能の優れた順に、「Claude 3 Opus」「Claude 3 Sonnet」「Claude 3 Haiku」の3種類が存在し、コストや用途に応じてモデルを選ぶことができる。最新モデルの特徴として、バイアスを減らし中立的な回答をするようになったことや、生成AIが誤った情報を回答する「ハルシネーション」への対策として、答えがわからないことに対して、不正確な情報を伝えるのではなく、「わからない」と回答するようになったことなどが挙げられる。
ChatGPTのライバル!? 生成AIサービス「Claude 3」を提供する「Anthropic(アンソロピック)」〜海外ユニコーンウォッチ #16〜
Introducing the next generation of Claude \ Anthropic (74904)

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ChatGPT一強に「待った」をかけられるか

世界的な生成AIブームの火付け役であり、ブームを牽引してきたChatGPTは、リリース当初から一貫して精度の高さが評価されてきた。しかし、そのような「ChatGPT一強」とも言える状況に対して、Anthropicは真っ向勝負をしようとしている。
同社は、「Claude 3 Opus」発表当時、生成AIの機能を評価するさまざまなスコアで、GPT-4やGeminiの数値を上回ったと発表した。実際に、「Claude 3」のユーザーから「ChatGPTを超える性能」という声もあがっており、対話型生成AIの中心地が入れ替わるかもしれないと指摘されている。それに対し、OpenAIは日本時間の4月15日、改良版「GPT-4 Turbo」を有料版にて提供を開始した。この「GPT-4 Turbo」は「Claude 3 Opus」などより複数のベンチマークで優秀と証明されたとも言われており、さらに近々、「tGPT-5」のリリースも控えているとの噂もあることから、開発競争は目まぐるしい変化を見せている。
また、OpenAIにはマイクロソフトが、AnthropicにはGoogleとAmazonが出資しているため、両社の競争は、さながらGAFAMの代理戦争の様相を呈している。生成AIの新興企業の動向が、GAFAMにまで大きな影響を与えるかもしれない。