固定式オービスのデータも、同様に情報公開の制度を利用し手数料を支払い、入手した。都道府県別の設置状況(整備数。2022年度末)と運用状況(撮影枚数。2022年中)の各一覧表をまずはごらんいただきたい。単位は「式」だという。
【データ】都道府県別の固定式オービス
■全国の整備数は半減、北海道はたった1式へ
整備数は、前年度の383式から344式へと39式減った。手元に1996年からのデータがある。ピークは2002年で701式。20年たって半減したわけだね。 ※当時は年度ではなく年(歴年)だった。
都道府県別で目を引くのは北海道だ。前年度の34式からたった1式にって! 『ラジオライフ』(三才ブックス)2022年6月号の特別付録「オービスマップ」(以下、マップ)によれば、北海道の固定式は、高速道路の1式のみ東京航空計器(TKK)のループコイル式。
ループコイル式は、路面下に埋め込んだセンサーで速度を測定する。積雪やタイヤチェーンによる轍(わだち)掘れの影響を受ける。なので積雪地にはループコイル式が少ない。
一方、レーダー式の三菱は、2008年に各警察に対し「弊社交通取締機器 新規販売終了及び保守対応終了についてのご連絡」という文書を出した。さまざまな機種について次々と終了し、いちばん新しい固定式RS-2000Bの保守対応を、つまり部品の供給、工場修理を、2017年度末(2018年3月末)をもって終了するというのだ。その後、点検業者に定期点検をさせながら運用するケースがあると、これは三菱の固定式による速度違反の刑事裁判(測定値を否認)で私は聞いた。
そうしてとうとう北海道は三菱の固定式を全廃したのである。「スプリアス規格」のこともあり、全廃する都府県がこれからもっと出てくるだろう。
ほか、目を引くのは熊本だ。6式から12式へと倍増した。ちょっと異様な感じがする。
■大阪の撮影枚数が激増した理由は?
次に撮影枚数だ。全国的には前年(2021年中)の3万7516枚から4万342枚へ、2826枚増えた。都道府県別のトップ5を見てみよう。プラスマイナスは前年比だ。カッコ内は、左側が2022年度中の、右側が2021年度中の整備数。年と年度は違うが、参考のため。
1位 警視庁 9063枚 -887枚 (51←51)
2位 大阪 7529枚 +4051枚 (47←47)
3位 兵庫 6925枚 +2550枚 (34←35)
4位 愛知 3508枚 -273枚 (26←26)
5位 茨城 1460枚 +132枚 ( 6← 6)
撮影枚数の増加は、大阪の突出ぶりが際立っている。じつは大阪の固定式の取り締まり件数(※)はちょっと異様なことになってるんだね。 ※2019年まで取り締まり件数。2020年から撮影枚数になった。両者は同じだと警察庁はいう。
2017年 2万0111件
2018年 1万9023件
2019年 1万3957件
2020年 2930枚
2021年 3478枚
2022年 7529枚
2020年に突然の激減。阪神高速にだけさくさんある特殊な形の固定式(三菱のレーダー式)が一斉に停止したと考えられる。あれらはだいぶ古いので。しかしその後、撮影枚数は増加に転じ、2022年はどかんと増えた。なぜ?
大阪は全国に先駆け、オービスⅤLs(F型柱2車線対応)にオービスⅤLp(自立型)、オービスⅤ-HK(半固定式)を購入している。
いやあ、どうだろ、私がずっとウォッチしてきた感じでは、スキャンレーザー式はどうも取り締まりに向かないようだ。撮影枚数がどかんと増えたのは、固定式の「設定速度」(これ以上の超過を取り締まると予め設定する速度)を、たとえば従来は超過40キロ以上だったのを35キロ以上にとか、下げたんじゃないかな。
■5県が撮影枚数ゼロ地帯、オービスは混迷期
整備数が激減した北海道の撮影枚数は、当然ながら2885枚から152枚へ激減した。沖縄は338枚から0枚へ。和歌山は173枚から0枚へ。京都は64枚から0枚へ。秋田は1式あるが撮影は両年とも0枚。島根と鹿児島は、前年度から固定式の整備がなく撮影は両年とも0枚だ。
固定式オービス、今後どうなっていくのか。
文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。