星と縁のあるメーカーといえば…そう「SUBARU(スバル)」です。そのアイコンは、フロントグリルに輝く六連星(むつらぼし)。このエンブレムは、過去に何度かのモデルチェンジを経て現在のデザインに至っています。

●小さく群れている青白い6つほどの星の集まり。いちばん明るい星がアルキオネ
■そもそも“すばる”とは
おうし座の散開星団を指す名称。欧米では「プレアデス星団」の名で呼ばれています。外国語のようですが、平安時代に清少納言が書いた枕草子にも出てくる、れっきとした日本語です。もともとは6つの星を束ねたところから「集まってひとつになる」という意味の「みすまる(御統)」が「すまる(統まる)」…「すばる」に変化したと言われています。
これには、富士重工業の前身となる中島飛行機(旧中島系)の主要企業5社(富士工業、富士自動車工業、大宮富士工業、宇都宮車輛、東京富士産業)に自社を含めた6社をひとつにまとめる(統べる)という意味も込められていました。
ちなみに“すばる”の名称が最初に使われたのは、1954(昭和29)年2月に完成した試作車の「すばる1500(P-1)」。命名したのはスバルの前身となる富士重工業・初代社長の北謙治でした。

●すばる1500(P-1)。開発責任者は、のちにスバル360を手がけた百瀬晋六。まだ六連星エンブレムは付かない

●小さく群れている青白い6つほどの星の集まり。いちばん明るい星がアルキオネ
■専門家のアドバイスを基に、忠実に
最初に六連星をモチーフとしたエンブレムが取り付けられたのはスバル360。これが現在に続くエンブレムデザインの原型です。
今から60年以上前の1957年、世に初めて送り出すスバルの名を冠した量産車のエンブレムを作るにあたり、富士重工業のデザイナーが(東京)三鷹製作所に隣接する東京大学東京天文台(現国立天文台)を訪問。プレアデス星団の由来を聞き、実際の星の位置や明るさ(等級)に基づいてデザインされました。こだわりの強いブランドらしいエピソードです。
ここで、その変遷を定点観測していきましょう。

●1958年(スバル360)。リング内に地球から見えるプレアデス星団を表現。星は、ハンドクラフト感が漂う温かみのある意匠。

●1965年(スバル1000)。リングがより楕円になって中に着色。星の意匠もシャープになり、横方向に輝きが強調された。マイア(上)とエレクトラ(下)の位置関係が微妙に(ちゃんと)ズレている

●1970年(ff-1 1300G)。スバルのエンブレムはかなり小さく、星の輝きもリング内に収まりこぢんまりとした印象に。販売面で伸び悩んでいたff-1の新シリーズをアピールしたい意図が感じられる

●1971年(レオーネ)。ff-1の後継車となる期待の新基軸で、スバルエンブレムは再び大型化。ただし、星の輝きはリング内に収まっている。これをU字状の意匠と組み合わせた

●1972年(R-2)。スバル360の後継車として72年まで発売(写真は最後期型)。星は小さく輝きもリング内に収まり、地の面積が多く感じられる。星の位置関係はかなり忠実

●1972年(レックス)。
基本を同じくしながらモデルによって微妙に意匠を変えていた六連星。1970年台中盤以降は大きな変化もなく、楕円のリングに3つの星(タイゲタ、エレクトラ、アトラス)の輝きがはみ出したデザインのものが10年ほど採用されました。

●小さく群れている青白い6つほどの星の集まり。いちばん明るい星がアルキオネ

●1985年(アルシオーネ)。プレアデス星団のなかでいちばん明るい星の名を冠したフラッグシップ。日本車初のCD値0.30切り(0.29)を達成。エンブレムも平滑だった
■変更1(小)

●1986年(レックス)。それぞれの星を支えていた線が消滅! 星の輝きも、幾分エッジを丸めたシンプルな意匠になった。結果、希少な過渡期のデザインとなる
■変更2(大)

●1988年(ジャスティ)。スバル360の発売から30年目。

●1989年(レガシィ)。レオーネの後継となる初代レガシィも前年に刷新したエンブレムを採用。左上の大きな星がアルキオネなのだろうが、そのほかは…もはや判別できない

●2001年(レガシィ)。前回の変更から13年を経て3代目レガシィの後期(BE/BH)型から採用された、星が横並びで手をつないでいるようなデザイン。以後、これを基本に現在へ至る

●ちなみにプレアデス星団のひとつである「マイア」は最終型レオーネ(の特別仕様車・写真)のサブネーム、そしてスバル360の海外版となるスバル450の輸出名として付けられていた

●リヤゲートオープナーとして機能した実用的な六連星。R1やステラにも採用された(写真はR2)
ちなみにアラフィフの筆者がいちばん好きなスバルエンブレムは、1975年前後の、星どうしが線でつながっているタイプ。当時ウチで乗っていた初代レオーネ(A33型)に付いてたやつです。「SEEC-T」とか、懐かしいですね。
オリオンの西、おうし座の肩あたりに位置するプレアデス星団。オリオン、おうし座…星に明るい方であれば初めからツッコミを入れていたかもしれませんが、“すばる”がいちばんよく見えるのは真冬(1~2月)。スタッドレスタイヤと一緒に今から観測の準備しておくのもオツではないでしょうか。

〈文=ドライバーWeb編集部〉