J-SLIMはJがジャパンを示し、SLIMが「セールス・ロジスティックス・インテグレーテッド・マネジメント」の略。
新システムを立ち上げたのは、トヨタがコロナ禍や半導体不足で94万台もの受注残を抱えたから。94万台のうち生産計画に載っている受注残は18万5000台。この計画からあふれた75万5000台は販売サイドのシステムに滞留していた。このあふれた受注残は、生産と連動した納期設定ができておらず、販売店のスタッフはユーザーに正確な納期を伝えることができなかったという。そして、やっと生産された車両も、生産から納車までの一貫した1台1台のリードタイム管理がなされていなかったので、車両不足のなか、販売店には未登録の車両が滞留していた。
そこで生産・輸送・販売とこれまで独立していたシステムをつなげ、受注から納車まで統合管理できるJ-SLIMを立ち上げたのである。新システムの最大の特徴は、納期の見える化。工場の生産から納車に至る全工程に存在する1台1台の車両を可視化した。ディーラーでは営業担当者がパソコン上で毎日更新される顧客のクルマの生産予定日をチェックすることができる。納車待ちのユーザーにとっては、自分のクルマが今、どこでどんな状況にあるのかがディーラーの営業担当者を通じてわかる。
納期も早くなるのが特徴で、最大2年分の生産予定枠を設けて、受注残を滞留させずに生産予定枠に並べ、工程ごとに基準リードタイムを設けて滞留車の低減活動を実施。納車までのリードタイムが短縮される。ちなみに、納期が事前に判明するので、営業担当者が事前に書類の準備を進めることができ、クルマの生産完了から納車までのリードタイムも短縮される。
また、ディーラーの営業担当者は、細かな仕様ごとの納期もわかるため、発注済みのクルマであっても装備を変更して納期が早い仕様に変更するなどの対策をユーザーに促すことができ、納期短縮につながる。当然、メーカー側でも特定の仕様の納期が長い場合は、原因となっている部品の納期短縮を図る対策を打つことができる。
さらに、生産予定枠に並ぶ受注残情報から、部品/用品の必要数が把握できるので、サプライヤーへの部品の内示の精度が上がり、納期短縮にも貢献する。
J-SLIMは2022年7月にシステム開発を開始。当初、豊田章男社長(当時)からは3カ月で立ち上げるようにと言われたとのことであるが、実際には6カ月かかり、2023年1月に発売したプリウスから運用を始めた。すでに全車種に展開を完了し、2023年年末までに全販売店での運用を始めるという。
現在、受注残はトヨタ・レクサス合計で78万台。ミニバンなどの背高車やランドクルーザーなどのフレーム車を除くトヨタブランド車の平均納期は4.7カ月、レクサスは3.5カ月となっている。
〈文=ドライバーWeb編集部〉