キセノン放電管による電子閃光(エレクトロニック・フラッシュ)を利用する写真用光源装置「ストロボ」はもともと、米国のストロボ・リサーチ社の商品名であり、それが現在のように一般名称として使われるようになったといわれている。
そんな中、1969年にニコンがみずから外付けストロボの製造販売に乗り出した。当然、商品名を考えなければならなかったのだが、ストロボはすでに他社の商品名だった。そこで、「SPEEDLIGHT(スピードライト)」というオリジナル名をつくり出したというわけだ。「『素早く発光する』という製品特徴からその名前が付きました」(ニコン)という。なお、同社製コンパクトデジタルカメラや一眼レフカメラの内蔵ストロボは、スピードライトではなく「フラッシュ」と呼ぶきまりになっているそうだ。
ちなみに、そのほかのメーカーのストロボ名称は、キヤノンが「SPEEDLITE」(スピードライト、綴りがニコンとちょっとちがう)、ペンタックスは「オートストロボ」、オリンパス、シグマはともに「エレクトロニック・フラッシュ」、ソニーは単に「フラッシュ」と呼ぶ。
名称はどうあれ、今日までストロボは暗いところで撮影する際の補助灯としての役割を担ってきた。しかし最近は、デジカメが高感度で高画質な写真が撮れるようになったので、「ストロボの役割は単なる補助灯から、搭載するさまざまなライティング機能で被写体をキレイに撮ることへと変貌している」とニコンのストロボエンジニア、松井秀樹氏はいう。
例えば、ストロボのワイヤレス多灯機能で、被写体にいろいろな角度から光をあてることでより立体的な写真が撮れる。
ストロボの役割の変貌とともに新しいストロボの名称が将来またひとつ生まれるかもしれない。
(羽石竜示)