ここ数年、仏教美術、仏像ジャンルの本がよく売れ、仏教に関心を寄せる人が増えているのだという。

そんな中、他を圧倒し、今ダントツで売れているのが秋に山と溪谷社から刊行された『感じる・調べる・もっと近づく 仏像の本』(仏像ガール著)だ。

アマゾン(Amazon.co.jp)の仏教美術部門で10月28日の初登場から第一位を獲得するという快挙を成し遂げた。

仏像ガールというユニークな名前を持つのは本名、廣瀬郁実さん。
父親の死をきっかけに仏像と出会い、上智大学比較文化学部日本文化学科で仏教美術を学んだという本格派。
仏像ブームに先鞭を付けたNHKの『にっぽん 心の仏像』に出演して以来、マスコミ、仏教関係者はもちろん、多くの人々の注目を集めることとなった。
子供からお年寄りまで誰でも楽しめるわかりやすい解説と、かわいらしいイマドキの風貌も相まってその人気は高まる一方だという。

仏像ガールこと廣瀬郁実さんが仏像に出会ったのは高校生の時。
父親を亡くしたことがきっかけだったという。中でも最も衝撃的な出会いは三十三間堂の観音様たち。
そんな自分が味わった感動を多くの人々に味わってもらいたい、仏像の素晴らしさを知ってもらいたい、と仏像ナビゲーターとして活動するようになったという。

さっそく山と溪谷社の担当者、武藤郁子さんに話を聞いた。

「本書が今までの仏像の本と一線を画すのは、知識は後回し、まずは感じてみてください、というつくりになっているところでしょうか。ですから、まず第一章では先入観なしに仏像さんの目を見たり、口を見たりしていただくような構成になっています。
第二章以降でも見出しなどには難しい言葉は使っていません。例えば『パンチパーマのよう』『胸の前でOKの手をしている』といったように、そのカタチから誰でもその意味がわかっていただけるように考えてつくってあります」

確かに。専門用語があまり使われていないせいか、文章も非常に読みやすい。
仏像の形についても、「イヤリングをつけているのは、悟りを開く前の菩薩。耳に大きな穴がぽっかり開いているのは、イヤリングを取った後、という意味で悟りを開いた如来のしるし」など仏教に興味がある人にもない人にも、「へぇ~」「あっそういうことか」と誰もが思わず納得するわかりやすい解説。

普通は30代~40代がコアな購買層と言われる仏教美術書だが、『感じる・調べる・もっと近づく 仏像の本』の購買層は下は3歳から上は80代までとまんべんなくすべての年代の人々に支持されていると武藤さんは言う。


「これは一つ特徴といえるかもしれませんね。それから、男女比なんですけど、女性が多いのかと思いきやホボ同率な感じですね。メールをくれたりする人には30代、まじめ男子が多いそうです。お寺や専門家の方にも、ご好評いただいております。特にお寺さんからは相当なウェルカムっぷりです。お寺におきたいから、とかお寺で売りたい、なんていうご依頼もいただいております」

「難しいこと、お勉強は後回しでいいので、とにかくまず仏像に会いにいって感じてほしい、そして『あなたの仏像』に出会ってほしい」と仏像ガールさん。


「“見る”ではなく“会う”という気持ちで、気楽に仏像を感じてほしい! そしてたくさんの仏像の中から、自分にとって特別な仏像に出会ってほしい」と仏像ガールさん。

「“好きな人のことはもっと知りたくなるように”、仏像のことも好きだからもっと知りたくなる、というのが自然な形なんじゃないかと思います。読者の皆さんにもそんな自然な体験をしていただけたら、と思います」と武藤さん。

恋愛に“一目ぼれ”があるように、今まで全く興味がなかったものにある日突然興味がわくことがある。仏像が好きになっちゃった人、仏像や仏教のことはよくわからないけれど何となく気になるという人におすすめの1冊。仏像がもっともっと好きになるかもしれません。

(こや)