世の中にはさまざまな職業が存在するが、この前、フィギュアの「原型師」なるコトバを耳にした。

フィギュア原型師とは、キャラクターなどの複製品となる模型の元の型を作り上げる職業のこと。


「資格」というものは必要ないそうだが、そもそもどうやったらなれるのだろう? プロのフィギュア原型師として活躍している遠那(とおな)かんしさんに、お話をうかがってみることに。

遠那さんは、『エヴァンゲリオン』の綾波レイをはじめ、『コードギアス 反逆のルルーシュ』のシャーリー・フェネット、初音ミクに続く「キャラクター・ボーカル・シリーズ」の第2弾として登場した鏡音リン・レン、『涼宮ハルヒの憂鬱』のハルヒなどの萌え系フィギュア作品で人気の原型師。

「子供の頃から図画工作の授業が好きだったので、デザイン科のある高校へ。その後、デザイン専門学校の『桑沢デザイン研究所』に入学しました。その頃から本格的に模型を趣味として、学校とは別に、模型サークルに入って、プラモデルやレジンキット(ポリウレタンで成型された少量生産組立モデル)を組み立てていました」と遠那さん。

このルートは王道!? なのかと思いきや、デザイン専門学校では、携帯やスピーカーなどの製品デザインを手がける「インダストリアルデザイン(ID)」を学んでいたとのことで、これは意外な専攻だった。


「IDでは、もちろんためになったこともありましたが、自分には向いていない気がしたので、趣味である模型を仕事にしたいと考えるようになりました。その時、初めて石粉粘土で萌えフィギュアを作ってみたら、なかなか上手くできたので、フィギュア原型師を仕事にしたいと意識するようになりました」

もともと、アニメやゲーム、そして“萌え系”も好きだったのも大きな要因とのことだ。

模型の雑誌を読んだり、模型イベントで作品を買ってきては組み立てたりして、研究していき、その趣味が高じて、造型部署のあるデザイン会社に入社。就職活動の際には、自作のフィギュアを持っていってアピールしたという。

いわゆる商業フィギュアを手がける原型師は大きく分けて、メーカーから直接、仕事を受けるフリーランスと、玩具メーカーやその関連デザイン会社に所属するサラリーマン原型師の2つのパターンがあるそうだ。

会社員時代には、ポケモン、ガンダム、ワンピースなどの食玩やカプセルフィギュアの原型製作を手がけていたという遠那さん。
と、同時にプライベートでは、模型イベントの祭典に自分の作品を出展していき、徐々に個人としての認知度もあがっていった。

「仕事で依頼される作品は納期が決まっているので、限られた時間でいかに魅力的に確実に作れるかを意識します。イベントに個人出展する作品は、時間を自由に使えるので納得いくまで作りこんだり、新たな試みをやってみたりしています」と仕事とイベントにおける作業において、それぞれで学べることがあると遠那さん。

そんなサラリーマン原型師を6年経験し、その後、フリーに転身して6年目の今にいたる。フリーになってからは、会社員時代の作品やイベント出展作品がきっかけで、メーカーから仕事依頼の声がかかったりして、お互いの関係を築いていった。

「今、物作りの世界はどんどんデジタル化が進む中、フィギュアは未だにアナログの世界であり、個性と手作りの魅力があふれる素晴らしいものであると思っています。
クオリティの高い完成品も世に多く出回っていて、また、求められるフィギュアの入れ替わりのスピードも激しく、厳しいところもありますが、アナログな仕事が出来ることはとても幸せなことだと感じています」

最後に、遠那さんに自分の作品に対する思いを聞いてみた。

「そのフィギュアを購入した動機が、そのモチーフのキャラクターが好きだからのみならず、造型を気に入ってもらえたり、何より『遠那かんしが作ったフィギュアだから』と言っていただけると、とても嬉しく思います」

現在、『月刊ホビージャパン』誌上の通販アイテムとして、上記の「シャーリー・フェネット 水着Ver.」が限定発売中。また、3月以降には『RCベルグ』にて「快盗天使ツインエンジェル ホワイトエンジェル カラーレジンキット版」も販売予定とのこと。
遠那かんしさんの今後のますますの活躍に期待です。
(dskiwt)

●「ワンダーフェスティバル 2010[冬]」でブース出展
http://www.kaiyodo.co.jp/wf/
【開催期日】2月7日(日曜日)10:00~17:00
【会場】幕張メッセ 国際展示場1~8ホール

※詳細は下記、遠那かんしさんのサイト「りゅんりゅん亭」をご覧ください