最近、頻繁に聞かれる“エコ”なる言葉。80年代は“浪費”の時代だったが、21世紀はエコの時代か。

そして、身近なエコの一つに“ちり紙交換”がある。読み終わった新聞・雑誌を渡して、引き換えにトイレットペーパーを。

それも素晴らしい。しかし、この商品はそんな手順を踏まないエコ。高知県の「株式会社四万十ドラマ」で手がける『四万十川新聞バッグ』は、読み終わった新聞をそのまま再利用してみせた。

画像を見ていただければ、一目瞭然。
高知県で発行されている県紙「高知新聞」を利用して、このバッグは生み出される。ほとんどハサミを使わず、折って糊で留めただけで作られているのだ。実は以前にコネタでも触れているのだが、このバッグをひと目見てとっても気になってしまったので、このバッグの“歴史“を“今”とともにを、再び振り返ってみようと思う。

このバッグ誕生のきっかけは、2002年。同社をプロデュースする梅原真氏が「最後の清流と言われる四万十で、野菜や特産品をビニール製のレジ袋で包むのは似合わない。これからは古新聞で包もう!」と、提案。

それを受け、流域に住む主婦・伊藤正子さんが「こんなの、どう?」と新聞紙で作ったバッグを考案。取っ手をつけたり補強したりして、現在の形にまで行き着いた。

そんな“おばちゃんの知恵”が、図らずもワールドワイドな反響を呼び起こす。2005年に開催された海外向けの商品コンペで、同社の現社長である畦地履正(あぜちりしょう)さんは四万十川産のお茶を提案。ペットボトル3本を新聞バッグに入れて持参したところ、バイヤーはお茶ではなくバッグに食いつくという、皮肉(?)な結果に。
それからはボストンのミュージアムショップから大量の注文が入り、ニューヨークやイギリスの美術館にも輸出するようになったという。

また、地元のショップ「道の駅四万十とおわ」では、レジパックとしても販売し、四万十土産として人気の品に。今でも月に1,000枚近く売れているという。

実際に取り寄せて、手にも取ってみたところ、ハッキリ言ってこれはスゴい。側面から底面から取っ手から、何から何まですべて新聞。毎朝、読むときに無意識に嗅いでいる“新聞紙の臭い”が、バッグからも漂うのだ。新聞で作っているから当たり前なのだが。
この感動は、直で見ないと分からないと思うから私も歯痒い。「バッグを作るため、一部に新聞紙を使いました」ではなく、新聞紙のみでバッグが丸々作られている。“トランス・フォーム”と呼びたいような。
また、試しに1.5リットルのペットボトルを3本入れてみたが、全然余裕! このバッグは新聞を何枚も重ねてあり、しっかり糊付けしてトートバッグ状にしてある。結果、重さ3キロまでは耐えられるようになったとのことで、心配ご無用。

そして同社では、バッグの作り方のレシピも販売されているとのこと。

「レシピを買う方と、バッグのみを買う方では目的が異なるようです。レシピを買う場合は、お年寄りが自分でバッグを作って他の人にあげたりしているみたいです」(担当者)
たとえば、自作のバッグに農作物を入れてプレゼントしたり、そんな使われ方がされている。

実は、このバッグの作り方を指導するワークショップも開催されており、何気なくバッグを手に持ち、興味を持った方が受講しているという。
初級編は約2時間で参加費は2,000円。上級編(「四万十川新聞」バッグインストラクター・ワークショップ)に関しては1泊2日、参加費3万円で行うというから、かなり本格的。というのも、単に作り方だけではなく、バッグが生まれるまでの背景やコンセプトを理解してもらうことが重要だと考えているためだ。

この講座を受講してインストラクターに認定されれば、自作のバッグに農作物を入れて販売したり、ワークショップを開催したりできる。そんな形で『四万十川新聞バッグ』が広まっていくことが期待されている。

また、このバッグの収益の一部は四万十川に還元され、環境保護のために役立てられるという。エコで得た利益を改めて環境のために、という訳か。
ちなみに、バッグの表面には県の情報が紹介された部分をあえて使用。高知県外の人にもバッグを手に取ってもらい、高地のことを知ってもらいたいと考えているのだ。

そんなこの『四万十川新聞バッグ』は公式サイトでも販売されている。そして、東京にもいよいよ波がやってきたのか、フジテレビ『めざましテレビ』がプロデュースする「銀座めざマルシェ」でも購入することができる。価格は1,000円(税込み)。

理念と実用性を兼ねた、このバッグ。持っているだけで、使っているだけで、地球に優しい人になったような。エコの時代だ。
(寺西ジャジューカ)