ようやくまともな座談会らしくなってきた、うめ、ルーツ座談会第part3!
オセアニアやアメリカなどグローバルな話題が飛びします。
めざせ世界進出!
part1part2

小沢 小さなイニシエーションとして、実家に帰ると親が本を買っているの。

ルーツ ありますあります。うちも「コミックバーズ」を月に2冊ずつ買っているんですよ(笑)。
小沢 買っている親の姿を想像すると不思議な気分になるんだよね。
――内容を見てなんて言っていたの?
ルーツ 天才だったんだねえ……って。
全員 親子だ(笑)。
――親もまさか2年くらい前まではルーツが漫画家になっているとは思ってなかっただろうね。
小沢 漫画家になろうとは思っていたんだっけ。
ルーツ そうです、狙っていました。
妹尾 なろうと思っている人はたくさんいるけど、描かない人が多いんですよ。ルーツは描くからすごい。
ルーツ B-TEAMというスペースがあったからですよ。
妹尾 いや、なくても描いていたと思う。

――描きたいって気持ちは全然衰えてないの?
ルーツ まったく衰えてない。
――すごいなあ。うめさんはルーツくらいの年齢のときはもう描いていました?
小沢 え、ルーツは今いくつ。
ルーツ 今22歳です。
妹尾 若い! 私は23歳のころに初めて投稿したんですよ。鉛筆で落書きとかはよくしていたんですけど、初めてペン入れしたのがそのとき。
――何がきっかけだったんですか?
妹尾 大学を卒業しなくちゃいけなくて就職いやだなって思って(笑)。それがきっかけです。
小沢 22歳のときは働いていたなあ。エクセルで難しいシートとか作っていたんです。だから人口推計とかできるよ!
ルーツ なんですかそれ。
小沢 将来その地域の人がどうなっていくかを考えるの。

妹尾 女友だちに恋愛相談されると、まず短期目標と中期目標と最終目標を決めようって言って、それによって違うアドバイスするの。
ルーツ おかしな話になってきましたけども。
小沢 でも、最終的に結婚したいって言うとちゃんと結婚させていたよ。二組くらい。
――そういう商売ができそうですね(笑)。描きたくてしょうがないって気持ちはなかったんですか?
小沢 全然なかった。妹尾は漫画家になりたかったというのはあったんだよね。
妹尾 うん、逆に漫画家にはなっちゃ駄目だって気持ちもあったんです。
――なぜです?
妹尾 漫画を好きと言うとオタクって言われる時代だったんです。
小沢 僕たちの若いころはオタクバッシングが激しかったころだからね。
妹尾 だからあまり大っぴらにはできなかった。
――卒業文集で将来の夢を書くときも秘密にしていました?
妹尾 絶対書かなかった。
動物園の飼育員さんになりたいって書いていたんです(笑)。
――隠しまくっていますね。小沢さんは小さいころの夢はありましたか?
小沢 ウルトラ警備隊になりたいとか。あと、小学校の卒業文章に輸入代理店になりたいって書いたね。
――ウルトラ警備隊と180度方向が変わりましたね(笑)。
小沢 これからはオセアニアだと思う、って書いたんです。
――何を思っていたんですか!
小沢 いやね、僕が小さいころって若干アメリカ、ヨーロッパ偏重のイメージがあって、オーストラリアだとそれプラスアボリジニみたいな文化があって、そっちの第3世界のほうがくるだろう、だけどアジア、アフリカはきつすぎるなあって。
ルーツ だからオセアニアなんですか(笑)。
小沢 そこから輸入して右から左に物を流して上積みを乗せるのが一番お金が儲かるなという読みだったんです。
――小学生はそういうことを読まないですよ。文集に書いて先生はなんて言っていたんですか?
小沢 何も言われなかったですよ。卒業文集だから訂正とかなかったから。

ルーツ 触れないほうがいいって思われたんじゃないですか。
小沢 あー、かもしれないね。でも、漫画家になろうとは全然思ってなかった。絵で賞は取っているんだけどね。
――え、そうなんですか。
妹尾 でも取り方がひどい。
ルーツ どういう方法だったんですか?
小沢 夏休みの宿題で風景画を描くときに、まず写真を撮るの。そして写真と画用紙にマトリクスを引いて、1コマずつ拡大して描くんですよ。そうすると賞が取れるの。
妹尾 今とやっていることが変わらない。
小沢 それ以外でも賞を取ったりはしています。小学校のときって写実の絵を上手いと思うんですけど、図画工作の教科書ってもっと下手っぽい子どもらしい絵が大きく載っていて、こういうのを狙えばいいと思ったんです。

――めちゃくちゃ考えていますね。
小沢 それでダチョウの顔のアップを少し崩して大きめに描いたんですよ。そうしたらまんまと賞が取れる。
ルーツ 計算通りじゃないですか。
小沢 習字もよく取っていた。
ルーツ 取りすぎですよ! 少しは遠慮しましょうよ(笑)。
小沢 ちょうどコンビニに拡大コピー機が入った時代で、お手本を書き初めサイズに拡大して、それを下に引いて書くとすごい上手に書けるんです。
――トレスを。
妹尾 そりゃそうだってことですね。
小沢 何枚か書いて一番上手いのは自分のにして、あとのは学校に持って行って売るんです。
――売る……ああ、他の宿題やっていない子に。
小沢 そうそう、お年玉もらった直後だから金持っていてさ。

ルーツ あくどい話が見えてきましたよ。
小沢 1000円とか2000円とかでボンボン買っていくんですよ。それでクラスで金銀銅って付けるんですけど、全部僕が書いたやつなんです(笑)。
――すごいですね、完全にこち亀』の両津勘吉ですよ。
小沢 秋本治先生は僕の高校の先輩なんです。
――そういう繋がりが!
妹尾 基本的に売ることしか考えていないんです。
小沢 そうかなあ。
――常に儲けがありますよね。輸入代理店から始まって……。
小沢 ほんとだ、なんでだろう。実家が貧乏だからかなあ。
――ルーツは卒業文集になんて書いたの?
ルーツ 俺は何も書いた覚えがないかな。アメリカに行きたいとは思っていたけど。
小沢 何その自由を求めている感じは。
ルーツ アメリカでサラリーマンをやりたかったんですよ。
小沢 不自由じゃん!
――なんでアメリカ?
ルーツ 小さいときに野球やっていたんだけど、プロに行けるわけないと気づいて夢も希望もなくなって、ぼんやりとアメリカに行きたいなあと思って、英語の勉強をしていたよ。
妹尾 それはいつごろ?
ルーツ 高校生ぐらいのときですね。漫画家になりたいとはずっと思っていたんですよ、裏目標とか闇目標的な感じで。
――いいじゃん表で。今はアメリカ行きたいとは思わないの?
ルーツ ふらっと行きたいなあとは思うよ。お母ちゃん、母ちゃん、母親がずっと行きたいって言っているから一緒に行こうかなとは考えているよ。
――なんでお母さんのことを言い直しまくった!
小沢 それは親孝行だし、いいんじゃない。
ルーツ でも、漫画家として安定してから行きたいという思いもあるんですよ。安全という名の愉悦を求めているんですよ。
小沢 安定するころには忙しくなるよ。
妹尾 うん、行けなくなっちゃう。
――うめさんはどれくらいで安定してきたんですか?
小沢 『ちゃぶだい』で(第39回ちばてつや賞一般部門)ちばてつや大賞を取って、そのまま週刊連載になったから休みはまったくなかったんです。
妹尾 そこから週刊連載を2年半から3年くらい続けていたんですけど、そのあとなかなか企画が通らなくて1年くらい干されたんです。
――そんな時期があったんですね。
小沢 連載始めてもすぐ打ち切られていたよ。月刊でやるようになってから、仕事の量と収入と自分の時間のバランスが取れてきました。
――月刊連載になって収入が落ちたりとかはしなかったんですか。
小沢 週刊は入ってくるお金は多いんだけど、出て行くお金もすごい。
妹尾 アシスタント代でほとんど消えちゃうんです。だから忙しい割に儲かったという感じがしないんです。
――漫画家は単行本が出ないと生活出来ないって聞いたことあります。
ルーツ キツイっすね。
妹尾 うん、だから今の方が楽(笑)。
小沢 1ページにかける時間も今の方が多いし、昔に比べると描いていて楽しい。
――そこでやっと余裕が出てきたんですね。
ルーツ アシスタントさんは今どのくらい入ってもらっているんですか?↑
小沢 今は月にのべ8人から10人くらい。週刊連載していたときに1週間で入れていた人数より少ないね。
――週間連載のときはどのくらいいたんですか?
小沢 1週間でのべ15人はいたね。3人×5日とかで突っ込んでいました。
――そんなにいるんですか……。ルーツもアシスタント入れるって言っていたよね。
ルーツ 8月から初めて入ってもらった、2人。
妹尾 募集したの?
ルーツ いえ、知り合いに頼んでいます。ベタ塗りとか背景を全部トレスしてもらっているんですよ。
――完全にプロって感じだねえ。
ルーツ でも、今月忙しかったから入ってもらったけど、来月からは大丈夫かなって思う。

アシスタントを雇うなんて完全にプロ漫画家だぞ、ルーツ! これからは書類に「漫画家」と書くのだろうか。
今度焼肉をおごってもらおうと勝手に思いながら話を聞いていた俺。

うめ、ルーツの師弟愛あふれるハートフルなpart4もよろしく。(加藤レイズナ)
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