親の若い頃の写真を見て、「お! カッコいい!」と思ったこと、ありませんか。

昨年末には「おしゃれの手本は往年の親世代 写真公開ブログが人気」(CNN)として、米国の若者たちの間で、両親の若かった頃の写真を紹介するブログが人気だという記事があったけれど……。


往年の親の写真は、若くてスマート。髪型もファッションも斬新で、マネしたいなんて人も確かにいるだろう。
でも、カッコよさを感じるのは、髪型・ファッションばかりではない気がする。なんというか、写真から“豊かな空気”を感じるのだ。
それはいったいなぜなのか。そんなことを考えているとき、海外転勤した友人から届いた家族の写真入りハガキを見て、「これだ!」と思った。
ソファーに家族でゆったり腰掛け、正面を堂々と向いた笑顔。テレもなければ、ピースもしない。これって「豊かさ」なのか。
カメラを向けられると、所在なくピースしてしまうか、ただニヤニヤするばかりのメンタリティでは到底できっこない。思えば、親の若い頃の写真にはこういったテレのない写真が多かった気がする。

さらに、写真を撮るシチュエーションにもいくつかのポイントがある。
上記の「ソファーに腰掛ける」の他にいくつかの定番を挙げてみると……。

・床の間を背景に
・レコードを手にし、ステレオのある応接間で
・愛車に片手をかけて、腰に手をあてて
・旅先でとびきりのお洒落をして

こうした往年の写真撮影との違いについて、カメラマンに聞いてみると……。
「確かに昔は、ソファーに座ってとか、愛車の横でとか、そういう写真が多かったですよね。でも、自分の家もそうでしたけど、昔は家にカメラがなかったという人は多いはず。今のようにコンパクトカメラなどなかったので、わざわざカメラを人に借りて撮ることもありましたし、写真を撮るということがもっと特別なことだったんだと思います。そのため、お正月だったり、遠くの親戚が来たり、旅行に行ったり、新車を買ったりという、『記念写真』が多かったのでは?」

今のように、デジカメで、さらにはケータイで、オールタイムに写真が撮れる時代になると、あらたまった機会が減り、ナチュラルなシチュエーションが増えるというのももっともなことだ。
さらに、10代・20代などの若い人たちはプリクラや写メなどで「写真慣れ」しているため、可愛く見えるポーズや角度も熟知している。
また、「世代の流行りや、見てきた雑誌などの違いもあるのでは?」という指摘だった。

そんななか、「堂々と真正面から記念撮影する」でもなく、「自分のキメ顔・キメポーズがある」でもなく、ただピースしかない私たち。これって世代差もあるのだろうか。

70年代はじめのカメラのCMで井上順が行っことで、一気に浸透したという説がある写真撮影時のピース。これもまた、いつの日か、「親(あるいは、おじいちゃんおばあちゃん)の若い頃の写真って、面白いポーズしてるよね」と言われるときが来るのかもしれません。

(田幸和歌子)
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