「神は死んだ」「永遠回帰」といった言葉がとっても印象的な19世紀ドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェ。それがなんと、腕時計になっていた! 早速この哲学者を腕に巻いてみることにした。


筆者の高校時代の「倫理」教科書にも載っていたニーチェ。昨年、『超訳 ニーチェの言葉』(訳・白取春彦)がベストセラーになったことはまだ記憶に新しい。どんな哲学者なのか簡単には説明できないが、それまでの多くの哲学者と異なり「文学的な表現で哲学するのが得意」といえるかも。

「人間的、あまりに人間的」「悦ばしき知識」「ツァラトゥストラはこう言った」「この人を見よ」など、彼の著作のタイトルからして、とても文学的な薫りがする。ちなみに、他のドイツの近代哲学者の著作名は、「純粋理性批判」(カント)、「精神現象学」(ヘーゲル)、「意志と表象としての世界」(ショーペンハウアー)といった感じ。ニーチェとは正反対に、いかにも難しそうで哲学書っぽいでしょ? 興味ある人は読み比べてみてください。

さて、ニーチェの腕時計とはどんなものか。腕に巻いてみると、ニーチェの重々しい思想とは反対に、軽~い付け心地。シルバーのつや消しボディとブラックのベルト、デザイン的にはとてもシンプルなカジュアル腕時計といったところ。

この『ニーチェ腕時計』は米国の会社、THE UNEMPLOYED PHILOSOPHERS GUILDの企画品。直訳すると、「失業した哲学者たちの組合」、社名からしてジョークである。同社では腕時計以外にも、著名人をモデルにした指人形などさまざまなグッズを扱っている。


『ニーチェ腕時計』でまず目に付くのは、文字盤の中央にどーんとニーチェの肖像が載っていること。特徴の分厚い口ひげがよく分かる横顔だ。と、ここまでは月並みだが、秒針がとてもユニーク。透明の円盤が文字盤の上を1秒ずつ回転しているのだ。しかも、よく見ると英語で何か書かれている。
「THE ETERNAL RETURN OF THE SAME」
これって、もしかして「永遠回帰!?」

同じところをずっと回っている秒針に、ニーチェの主要概念のひとつ「永遠回帰」のイメージをデザインしているわけ。ニーチェを知っている人はちょっと笑えるジョーク腕時計なのだ。

「永遠に繰り返される世界で生きている君たち、哲学してみないか」――腕時計はこう言った。
(羽石竜示)
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